千葉レーダ、ゲビル、漁港 @ 秋葉原CLUB GOODMAN (15th Sept '03)
愛と笑いの夜
秋葉原CLUB GOODMANというライヴハウスは面白いバンドがよく出てくる。面白いっていうのは「おかしい」「ヘンだ」ということなんだけど、去年あたりから足を運ぶ機会が増え、気がつくとお客さんも増えているような気がする。
この日は「秋葉原より愛を込めて 〜純情純愛編〜」というタイトルでイベントがおこなわれた。まず、一番手は千葉レーダ。このバンドというかユニットに関しては、magに2回ほど書いているけど、おさらい。音はすべて打ち込みで80年代のエレポップ風である。ヴォーカルの茂木淳一は銀色の三つ揃いスーツに開襟シャツにサングラスでホストというかチンピラといういで立ちで要するに胡散臭い。そしてムーディーさを撒き散らしつつ、歌い踊るのだけど、表情や仕種がどうしても笑いの方に向かっていく。歌の内容は「そんなきついズボンじゃごはんを食べられない」とか「みかんが食べたい」とか「セミは虫だぜミンミン」とかムーディーな雰囲気とは正反対のことなのだ。ライヴの定番曲"無敵のファンデーション"なんかチープなんだけど、どこかゴージャスな音に乗せて、ナンセンスな歌を歌っている。今にも春がやって来そうなウキウキ感と、バブル時代を懐かしんでノスタルジックな感傷に浸っている感じの2つの感覚が混ざり合って、奥行きを作っている。
もちろん単純に茂木の変な表情や踊りを楽しむのもアリ。途中、恒例のジャンケン大会を挟みつつ、最後は恒例の"サンリーヴ"で茂木はフロアに降りていって梅ガムを配りつつ、ドリンクカウンターでお酒を注文し、飲み干して去っていった。この千葉レーダ、オープニングのトライバルな音とか、アレンジを毎回細かく変えていたりと、トークや踊りだけでなく音でもハッとさせるのだ。一筋縄ではいかない。
次がゲビル・・・ってこのバンドを誉めたら、おれの信用を失うかも、というリスクを覚悟しつつ誉めるぞ!まず、彼らは人間じゃなくて妖怪なのだ。彼らは妖怪界(ようかいかい?)で罰を受け人間になる刑にされ、人間界で人間になるように修業をさせられている・・・。そう、キワモノである。ルックスはビジュアル系崩れ、自分でも言っていたけど、ヴォーカルはソフィアの松岡に似ている。他のメンバーは変なメイクをしている。ステージ上に和太鼓がある。メロディはもろに演歌である。振り付けやMCは氣志團に似ている・・・。
さあ、どうだ。これで聴く気がなくなっただろ。だけど、そこをクリアしてしまえば、リズム隊は腹に響く音で迫ってくるし、ヴォーカルが和太鼓を叩けばGOCCOみたいなズンドコなリズムが気持ちいいし、終盤で唐突にヴォーカルがブルースハープを吹き出せば、マジメに渋いブルースロックを奏でる。すごく音楽的なポテンシャルが高いのにその才能を「お笑い」「イロモノ」として見せてしまう。そんな才能の無駄遣いぶりがとても贅沢に思える。でもそれでいいのだ。だって普通に格好いいバンドばっかりじゃつまらないじゃないですか。「お前、普通に才能あるのに、何でこうなっちゃうの?」と問い詰めたくなるようなデタラメさ加減がロックだし、イロモノがいるからこそ、風通しが良くなるのだ。ラストは"グッドラック"という曲で要するに単なる青春パンクだ。これで妖怪というコンセプトも素晴らしい演奏力も台無しになってしまうのだけど、そんなダメダメさ加減がとても愛おしい。このゲビルというバンド、知名度が広がれば、必ずアンチが出てくるだろう。万が一、フジロックなんか出ようものなら、マジメなロックファンから「出るな、出るな」の大合唱だろう。ダサイ、サムい、イタい、DQNだと罵倒されるだろう。だけどもそんなもんは気にせずイロモノ道を堂々と歩んでほしい。そうした罵倒はイロモノにとって最大の誉め言葉なのだから。妖怪というコンセプトを徹底できないのがチト不安だが。
最後は漁港。いつも通り、始まる前には演歌が流れ、ステージにはのぼりと提灯で魚屋の雰囲気を醸し出している。いつものように荒波寛之が「漁港、始めます」と一言、サンプラーを操作して、深海光一がステージに座り込んでスポーツ新聞を読み始める。そして船長の森田釣竿がフロアから包丁振り回して登場はいつものことだけども、もう一人のメンバー、キロピン丸がいない。どうしたのだろう?と疑問を抱えつつ、ステージは例によって"かつお"から始まり、"なまず""くじら"と進行していく。途中、森田船長が「何か質問はないか?」と発言して、女の子のお客さんから「キロさんはどうなったんですか?」と問われると「あいつはクビになった」とのこと。イジメられ役として名曲(曲なのか?)"カジキ"で重要な役割を担っていた、キロピン丸はクビということで衝撃が走る。キロ不在のステージを森田と深海でカヴァーすべく、演目を大幅に変えてきた。森田船長がラップを披露したり、横笛に深海のヘビーメタルなギターが絡んだりと盛りだくさん。いつもの"まぐろ"ではまぐろの頬肉をステージ上でさばいてお客さんにプレゼントするパフォーマンスは健在だった。珍しくアンコールにも応え"アトランティス"で森田船長はムーディーなヴォーカルを披露して、横で深海がセクシーに踊るという怪作であった。ライヴが終わって居酒屋に直行し、マグロを注文したのは言うまでもない。
report by nob
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