BRAHMAN @ STUDIO COAST (12th Sept '03)
もう一度ブラフマンを信じようと思う
本編最後の"arrival time"のひどい演奏を聴いているとき、おれは目頭が熱くなった。独特の陰影を失い、平坦になってしまった"arrival time"なのだけど、そのひどい演奏の中で、どうにか音楽をやる衝動を取り戻そうと苦しんでいるように見えたからである。
今回のブラフマンは何か変だった。それはツアーの会場も、地元の人が「あんなところでやるなんて!」というような会場が選ばれたりしていた。東京の会場もSTUDIO COASTという主にダンス系の箱で、ブラフマンみたいなバンドがやるのは、おそらく初めてだろう。
そのSTUDIO COASTは新木場から歩いて10分もしないで着く場所にある。倉庫が並んでいる一角に突然別の建物が置かれている感じで目を引く。中に入るとバーカウンター周辺は人が一杯で身動きが取れない。何とかフロアに入ると、開演前のせいか、まだこちらには余裕がある。ステージを含めた広さは渋谷のAXを一回り小さくした感じ。かなり大きなミラーボールがあったり、天井のスピーカーの数が多いのは、クラブならではである。
エゴラッピンがキャンセルでブラフマンが登場したのが19:30ころ。いつものブルガリア民謡「お母さん、お願い」が流れる。前半は新曲を多めに、後半は文字通りヒットメドレーだった。これからどうしていこうかという迷いがそのまま現れたかのような、ポップな感じと激しさが入り交じった前半と、開き直ったかのように過去の曲を連発して当時の勢いを取り戻そうとする後半の見事な対比は、ブラフマンというバンドの「今」をそのまま反映させていた。それはアルバム出せばオリコンの上位に入るという売れているバンドのオーラもなく、ましてやスターとかカリスマでなく、ただの迷える人としての素の姿をさらけ出していた。
終盤近くにトシロウはフロアに飛び込んだ。自分が観ていたここ3年くらいのライヴではそんなシーンはなかったのだけど、初期のライヴを観た人によれば、以前はよく飛び込んでいたらしい。フロアに飛び込むのも、今までやったことのないライヴハウスでツアーを組んだのも、どうにかして以前の感覚をつかみたいというもがきに見えた。
初めてブラフマンを観たとき「日本にこんなバンドがいたのか!」と衝撃を受けて、それから何度もブラフマンのライヴを体験しているけれども、そびえ立つ巨大な神殿のように聴く者を圧倒するときもあれば、何もかもがバラバラで心底ガッカリしたこともある。だけども、こんな迷えるブラフマンは初めてで、その中でかいま見えた素の姿に感動したのである。普通の売れているバンドなら巧みに隠せたものなのだけど、彼らはそうした取り繕いはしなかった。もう一度、ブラフマンを信じようと思う。
report by nob
|
|
|