氣志團万博 木更津グローバルコミュニケーション
@ かずさクローバーパーク (30th Aug '03)
-- ロックで街おこし --
イギリスやアメリカの音楽には地元との結び付きが強いことが多い。リバプールとかマンチェスターとかグラスゴー、デトロイトやフィラデルフィアとニューオリンズいった都市からは、その街の匂いを感じさせる音がある。日本で土地に特有の音はあるのだろうか?もちろん、行政の補助金なしには生き残れない民謡とかでなく、その時代のその土地の空気を感じることが出来る音楽である。すぐに思いつくところで沖縄とか福岡のめんたいロックくらいだ。
氣志團のリーダー、綾小路"セロニアス"翔の出身地である木更津は京葉工業地帯にある街である。駅前のデパートは潰れ、商店街は商品よりもシャッターが目立つ寂しさである。今回催された「氣志團万博2003木更津グローバルコミュニケーション」は木更津の活性化ということが謳われていて、用地は新日鉄が無償提供、運営の一部は地元のボランティアが協力、会場内の飲食はすべて地元の店で特産物も売っていたりと、木更津を強く打ち出したものだった。要するにフジや朝霧で培われたノウハウをパクったわけなんだけれども、全然OKだと思う。メジャーなバンドですら運営手法を参考にするくらい、フジの影響力があるということなのだから。それと、バンド自身がメジャーデビューしてブレイク中の、今が一番勢いのある時期に単独野外ライヴをやるっていうのは、ストーンローゼスの"One Love"がイギリスでヒットしているときに、ローゼスがスパイクアイランドで2万人(だったか)を集めた野外ライヴをやったのを彷彿させる。
木更津駅に着いたのが13:30ころ。駅前には人はいっぱいいる。ボランティアの人からチケットを買ってシャトルバスに意外と待たずに乗れる。バスの車内の男女比は1:9くらい。20分ほどバスに揺られて会場に着く。入場もさほどイライラせずにスンナリと入れる。会場はフジのグリーンステージを一回り小さくさせた感じ。スクリーンはステージの奥、ステージ脇の左右、後方の合計4つもある。会場の飲食はさっき書いた通り地元出店なんだけど、多くは弁当か焼きそばなので、もうひと工夫欲しいところ。グッズ売場の前は長蛇の列で始まる前に全て売り切れてしまった。他には地元の観光案内や全国各地に帰れるバスツアーのブースもある。面白いのは、ごみのポイ捨てを注意するプラカードを持ったチアガール風の女の子たちが会場を巡回していることで、ミニスカートの女の子に注意される方が効果があるかも知れない。
そして一番楽しいのがお客さんウォッチングである。結論から言うとお客さんの90%は普通の人たちで、家族連れもいるし、年齢も幅広い。とりあえず夏祭り感はある。だけど、やっぱり目立つのが残り10%のコスプレの人たちだ。今、普通に街を歩いていたら滅多に会うことのない長ラン、ボンタン、丈の長〜いスカートのセーラー服、真っ白の生地を使った長ランはほとんどロマンポルシェ。と紙一重だし、母親はセーラー服で幼稚園くらいの子供に長ランという組合せも。氣志團のバックダンサーが着ている星条旗柄のタンクトップ姿もいる。そういうコスプレ観察は面白いけど、言われているほどヤンキーは少ない(集団でいるから目立つけど)。こうしてビール飲んだり、寝っ転がったりして時間を潰す。
16:20ころ、ドラクエのテーマが鳴り響き始まる。例によって"BE MY BABY"が流れてメンバー登場・・・かと思ったらスペシャルゲストのGLAY。いきなり"誘惑"を演奏してお客さんは一斉にステージ目掛けて突進する。やっぱり人気バンドのオーラというものが感じられるというか、凄い。ただ彼らの曲には好きなものもあるけど、バンドとファンの醸し出す空気にちょっと違和感だけども。次、その次と知らない曲が演奏されたので、先の興奮が徐々に静まってきて、座り込む者が多数。エゾのチャゲアスがキラーチューンの連発で大盛上がりだったのと比べると、ちょっとサービスに欠くというか、アーティストのこだわりがあるというか。最後に新曲が演奏されこれが思いがけないプレゼントになった。
続いてメンバーの父親たちで、聖火の点火式、そしてメンバーによる「西部警察」のパロディビデオが流れる。あのテーマ曲に「BE MY BABY」のかけ声をサンプリングしてリミックスされたのが面白い。そしてメンバーがヘリコプターに乗り込む映像が出てきて、まさか!?と思ったら上空にヘリが登場する。めちゃくちゃ急角度で旋回して危ない!メンバーは本当に乗っているのか!と思うのもつかの間、超低空飛行でステージにぶつかる!という瞬間ステージにはメンバーが揃っていた。こんな派手なオープニングはU2以来だったか久しく観てなかった。
そして1曲目が"One Night Carnival"。いきなり興奮が最高潮に達する。以降、地元の「やっさいもっさい」という祭や各メンバーのソロコーナー(布袋とか座頭市とか長渕とかペッパー警部とかオカリナとか。ソロコーナーの前にはショートコントみたいなビデオが流れる)など盛りだくさん。水や火を使った演出はとてもゴージャスだ。火の使用量はフジロックのビョーク並である。氣志團はエンターテイメントに殉じ、笑いのために日ごろから修練を積んでいる姿とても魅力的だし、歌謡曲、ロック、漫画など過去のさまざまなネタを引用しつつ、幅広い年齢な人たちの記憶につながろうとしているのだ。敢えて、お客さんひとりひとりとつながろうとして、こちらの目線と同じところまで降りてきて懸命にサービスしてくれるバンドにも惹かれるところがある。
「木更津から盛り上げていこうぜ!」と翔のMCから始まる"スウィンギン・ニッポン"はちょっとジーンときた。本編最後は"國道127號線の白き稻妻"〜"鉄のハート"で「ワン・トゥ・セブン」コールで大合唱になる。そしていつものように「バラードで眠れない」でメンバーは去っていく。アンコールに応えて白い学ランで登場して"黒い太陽"と"一番星"。また去って行くと、スクリーンには打ち上げ風の映像が流れる。自分たちはゾロゾロと帰る人波に揉まれて外へ出ると、もう一回ステージにメンバーが現れる。どうやらダンサーも沢山いるようだ。音は聞こえてくる。シャトルバス乗り場を目指して歩いている途中で、本格的な打ち上げ花火が上がり、歩いていた自分たちからはバッチリ見えた、というかベストポジションだった。バスに揺られながら駅まで戻ると、駅前も人が一杯である。こんなに木更津が活気づいたのは久しぶりのことなんだろう。でもお祭りなら、そのままオールのイベントに突入とかフリーな感じがないとね。でも、地元を打ち出したいい試みだと思う。
report by nob
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