buttonUnderworld @ somerset house (2003年8月10日)

-- 穏やかな覚醒 --

 踊れる音楽ほど踊れない、クラブに行くといつもこのような矛盾を感じる。これは本当どうにかならないのか、といつも思っているのだが、よく考えてみると自分もその踊れる音楽を踊れなくしている原因の一人なので、あまり大きな口を叩けたもんじゃないと反省し、仕方なくイマイチなDJのイマイチなプレイの部屋へと退散してしまうのである。

 クラブに行ったことがある人なら、踊れる音楽ほど踊れないというのはよく分かると思う。そう、クラブに来ている人たちは当然みんな踊りたいのだから、踊れる音楽がかかっているフロアへと人が集まる。私もそうである。でも、当然のことながらフロアには広さの限界というものがあるので、人が集まれば集まるほど、一人ひとりのスペースはどんどん狭くなっていってしまう。で、結果、全く踊れなくなってしまうのである。更にこれが有名なDJのときなんかはたまったもんじゃなく、ケミカル・ブラザーズやファットボーイ・スリムがDJのイベントに行ったときなんかは、フロアはほとんどモッシュピット状態。しかも、みんなDJブースの方を見ながら体を動かしているので、これじゃもうほとんどクラブと呼べねえよ、ライブハウスだこりゃ、といった感じなのである。

 さて、アンダーワールドである。これまでの経験からいって、この日も全く踊れないことを覚悟していた。ただ、ライブ盤の『everything, everything』が大好きなので、一度は生でライブセットを観ておきたいということで行ったのだ。ところがどうしたことか、余裕で踊れるじゃないか。前後左右2ステップはいける感じ。別に客が入らなかったわけではない。だって、この日は前日のライブがソールドアウトしたために出された追加公演だったのだから。やはり、目分量でガンガン客を入れてしまうクラブとちゃんとチケット出して客を数えてるライブ形式は違う。当たり前といえば当たり前のことだが。それにしても、ケミカル・ブラザーズ、ファットボーイ・スリムの経験からすればこれは天国だ。最高のプレイで好きなように踊れる。当然のことのようだが、実際問題、なんとも贅沢な話じゃないか。

 贅沢といえば、この日は会場も贅沢だった。なんと、あのサマーセットハウスである。とは言っても、「なんと」とか書いてみたくせに、実はそのいわれを何にも知らないのだが。まあ、とにかくイギリスらしい時代を感じさせる美しい建物なのである。この日のライブはその中庭のようなところで行われた。伝統的な建築物を眺めながら無機質なテクノにあわせて踊るという、何とも言えないミスマッチが絶妙で、コテコテなレーザーライトが胡散臭いクラブで踊るより何倍も気持ちよかった。野外だったので音が逃げてしまうのが多少気になったといえば気になったが、逆に熱気がこもる屋内だったら、二時間半もブッ続けで踊るなんて無理だっただろう。そう言えば、私は健全な子なので、クラブでもチルアウトに行かずに二時間半も連続で踊っていたことなんて無かった。この日はまさにナチュラルハイというやつだ。

 セットリストに文句なんてつけようもなかったのは言うまでも無いだろう。前半から、"rez"〜"cowgirl"〜ストーンズの"you can't always get what you want"のさわり〜"cowgirl"〜"rez"という、おいおいそんなに飛ばして大丈夫か、と思わず言いたくなるようなキメ曲ラッシュだったにもかかわらず、「まだあった!」「そうかこれもあった!」と、いちいち手を打ってしまいたくなるように、尽きることなく出てくる名曲の数々。"born sleepy"ももちろんよかったが、この日はアンコールにやった"jumbo"の穏やかな覚醒感がベストだった。私は、クラブという暗い密閉空間で踊ることを強制するように響いてくる四つ打ちに我を忘れて従うのが好きだが、この日のように開放的な空間で踊ることを誘ってくる四つ打ちにあわせて体を動かすのも、また悪くない。そんなときは、私の中では"born sleepy"より、"jumbo"がよく馴染んだ。

report by yoshi_k.


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