Radiohead @ 千葉マリンスタジアム (2003年8月3日) -- I wish you were here with me --
そのイントロが鳴った瞬間、スタジアムは歓声とも悲鳴ともつかない声に覆われた。そのどよめきが収まらないうちにトム・ヨークは「When you were here before〜」と歌いだすと歓声が盛り返してくる。自分は千葉マリンスタジアムの3階席から一連の光景を眺めるだけだった。自分の脳内でこの曲が演奏されることを妄想していて、この曲を演奏されたらおれは泣くぞ、と思っていたら、現実は違っていた。そのイントロが鳴らされたとき、自分の中からあらゆる感情が噴出して、頭の中が真っ白になり、呼吸困難におちいった。「イェー!」とかいう声を出す余裕すらなかったのである。サビのときに腕を挙げるのがやっとだった。
空に三日月が浮かび、1分に1機くらいの頻繁さで飛行機がたくさんのツーリストを乗せて羽田に向かう。月と飛行機を眺めながら海風にあたり、レディオヘッドを聴くという体験もなかなかのものだと思う。
ライヴは"there there"で始まり、この日、今までのアクトの浮かれた気分から一転して井戸の底に降りていくような気分になった。こんなに広い会場なのに、自分に向き合うように一音、一音を緊張して聴くことを強いられているかのようだ。"exit music"が賛美歌のような美しさを響かせ、"national anthem"が狂ったようなファンクでスタジアムを混沌に陥れ、"no surprises"では一緒にこの場にいれない人のことを思い涙が出た。"paranoid android"のギターノイズで胸倉をつかまれ、"idioteque"でトムの激しい踊りは何万というスタジアムのお客さん一人一人に音楽を届けようとする切望の表れのように思えた。それが可能であるかどうかでなく、バンドが本気かどうかなのだ。それが観る者を感動させるのである。"everything in it's right place"でジョニーとエドがノイズをまき散らして本編が終了。
アンコールの3曲目の"karma police"が終わったときに「これで今日は良かった。満足したし、早く花火が上がらないかな」と思って、何度も頭を下げるトム・ヨークを微笑ましく感じた。そのため、次の瞬間がfuckin' specialなものになるとは予想をしていなかった。
最後の最後、「But I'm a creep/I'm a weirdo/What a hell 'm I doing here?/I don't belong here/I don't belong here」とトムの歌が静かにスタジアム全体に染み渡り、全てが終わった瞬間にスタジアムを埋め尽くしたお客さんは何度目かの歓声を上げ、そして花火が打ち上げられた。
report by nob.
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