buttonPatti Smith @ Shibuya Parco Museum (19th July '03)

無限の力と突っ走れ! Part 3


Patti Smith
 パティ・スミスを追った「全公演最前柵死守ツアー」も今年こそ完全制覇と思っていた矢先、さらに限定250名のシークレット・ギグなるニュースが飛び込んできた。それも今回の来日のもう1つの要、『ストレンジ・メッセンジャーズ&クロス・セクション』という彼女の作品展の特別企画としてだ。ええい、かくなる上はと東京までもう1往復を決める。
 チケットとは別に当日朝から入場整理券が出ると聞いた時は焦ったが、在京の友人達のお陰で一件落着。まずは渋谷パルコ・ミュージアムへでの作品展へと向かう。元々絵描き志望だったパティの淡いトーンの自画像や、メイプルソープと2人並んだ絵。ジム・モリソンの写真をコラージュしたものや、十字架のキリストのモチーフ。そして、あの9.11テロ現場の「横断禁止」と書かれた黄色いテープを紙に貼り付けただけの作品は、事件直後、1本の線すら描けなかった衝撃をそのまま刻み、崩壊したサウス・タワーの残骸の姿も、バベルの塔崩壊のイメージへ昇華された鮮烈なシリーズと化す。メイプルソープの撮る鮮烈な画像とは対極の曖昧さながら、彼女には意味深いモノたちのポラロイド…。あの詩とロックン・ロールの背後で同じように紡ぎ出されて来たアートもまた紛れもない「パティ・スミス」の証なのだと圧倒された。 Patti Smith
Patti Smith  そして閉館後の午後9時40分。ミュージアム中央に設けられた即席ステージを前に、床に座る最前組と折りたたみ椅子の数列。さらに後方の立見までぎっしり…という状態で、2つの椅子の主を待つ。パティ登場に拍手歓声が起こり、もう1本そこに置かれていたアコースティック・ギターはてっきりレニーのものと思っていたが、現われたのは意外にもオリバーの方だ。

 パティはまずは今日ここに来てくれた皆と、この展覧会を企画してくれたパルコのスタッフにと、丁寧なお礼を述べた後、「ロバート・メイプルソープのための詩を読むわね。これが彼のカメラの写真」と写真のページを開いて客席に見せる。タイトルを読み上げただけで拍手が起こったのは"PISS FACTORY"。連日の熱演でさすがに声は少し嗄れていたが、「ここを出てやる、何者かになってやる、絶対に戻らない!」と次第に加速し、熱を帯びていく朗読には思わず身体がムズムズ。拍手も一層大きくなる。そう、パティのすべてはこの詩から出発したのだ。
 そして初めてアコギで聴く"PATHS THAT CROSS"が終わると、「ごめんなさい。ブリッツでちょっと声を潰しちゃったけど、ベスト尽くすわね」とお詫びを。後方には出番はなくとも、バンドの残りのメンバー達もしっかり揃っている。"LAND"の朗読では「ジョニー、ジョニー」と熱がこもるあまり、眼鏡が雲ってやり直しになったが、「sorry って日本語で何て言うの?」と尋ねたパティ、「ごめん」という客席からの声に「あ〜、今のはそれね」と笑い、しっかり"ごめん"を詩の中に織り込む。バンドの数少ないクルーを紹介した際も「彼は20人分の仕事をするけど、支払は1人分ね」とユーモアたっぷり。"SEVEN WAYS OF GOING"では通常のライヴではバックの轟音に埋もれがちだった彼女のクラリネットもバッチリ聴けた。

 「明日は朝6時出発で早いからあと1曲だけど、日本滞在でたくさんのエナジーとメモリーをもらった。本当にありがとう!ニューヨークに戻ったら新作のレコーディングよ」
 こんなコメントに大歓声が上がる。もちろん過去二十数年を総括した最近の活動も凄いが、一番心待ちにしているのは、やはり今を越えて未来に向かう貴女の姿だ。そしてラストは"PEOPLE HAVE THE POWER"。手拍子と大合唱はいつまでも鳴り止まなかった。

 翌朝、一刻も早く大阪へ戻って原稿を仕上げ、フジ出発の準備もせねばというのに、どうしてももう一度行きたくなり、ミュージアムに立ち寄る。午前11時、開場したばかりの館内には他に人もいない。一通り作品を見てまわった後、昨夜パティが居た位置に同じように立ってみた。メイプルソープと2人並んだあの絵を背にして、同じようにフロアを見渡す。そして目を閉じてすう〜っと深呼吸。その瞬間、何ともほんのりとした、暖かな気持ちになるのがわかった。さっきまでの様々な焦りも嘘のように消えている。きっと彼女が残したパワーの片鱗も一緒に吸い込んだからに違いない。さあ、また力一杯走って行こう。そう、再びパティに逢えるその時まで。
Patti Smith
-- setlist --

1.Y (Poem for Robert Mapplethorpe) * / 2.PISS FACTORY * / 3.BENEATH THE SOUTHERN CROSS / 4.PATHS THAT CROSS / 5.DOG DREAM (Poem for Bob Dylan) * / 6.WING / 7.REDONDO BEACH / 8.LAND * / 9.DANCING BAREFOOT / 10.BECAUSE THE NIGHT / 11.SEVEN WAYS OF GOING / 12.PEOPLE HAVE THE POWER

付記:
* 朗読された詩はすべて詩集[EARLY WORK 1970-1979]に収録
** パルコ・ミュージアムのHPでこのライヴや作品展の会場風景が見れます。
http://www.parco-art.com/parco_museum/patti_smith/live.html

なお、写真は02年フジ・ロック・フェスティヴァルでのものを使用しています。ご了承ください。


repot by ikuyo and photo by nachi

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http://www.pattismithland.com/

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