Patti Smith @ Akasaka Blitz (16th July '03)
ひとりのおばさんとして
おととしのフジロックのときに、プリンスホテルの前を歩いていたら、外国人のおばさんが座っているなと思って、ちらっと見るとパティ・スミスだった。なんだか不必要なオーラを発しないというか、人を威圧することが無い自然な感じがしていた。後で会場の目撃談を聞いていくと、気さくなおばさんというエピソードが次から次へと出てきた。
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この日のステージに立ったパティ・スミスは、そんな自然体で慈悲深そうな笑顔が素敵なおばさんという感じだった。ときにはキリっとした顔や、お茶目な仕草を見せたりして歌っていく。それは、なんだかキャロル・キングやエディー・リーダーのような"シンガー"みたいで、歌うことが楽しいという人たちの系譜を見ているようだった。バックのレニー・ケイを始めとするメンバーもこざっぱりとした感じの服装で、しっかりと彼女を支えて、楽しげな演奏だった。
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"1959"でバロウズやギンスバーグなど、詩人たちへのオマージュを捧げる。まず何よりもパティ・スミスは言葉の人だったんだということを改めて思った。まったりとした空気がちょっとずつ変わっていったのは"because the night"あたりからでこの辺りから徐々にエネルギーが蓄えられていった。スモーキー・ロビンソン&ミラクルズのカヴァーである"mickey's monkey"(このときのバックの映像は、スティーヴィー・ワンダーやシュープリームスなどモータウンのオールスター勢揃いだった)も意外だったけど、楽しそうに歌っている様子はフロアにも十分伝わってきて、年齢層高い(ネクタイ率高し。おれもだが)お客さんたちも体を動かしている。そして"people have the power"で力強く連帯を訴え、"wing"を広島・長崎の人たちに捧げ、本編を"gloria"で締めた。やっぱり力強いロックンロールが彼女の本領だ。 |
アンコールのラストの"rock'n'roll nigger"はバックにジミ・ヘンドリックスの映像が流れる中、それまでの人のいいおばさんぶりから一転して、パレスチナ(だったかイラク?)の国旗を頭からかぶったり、「ファッキン!ジョージ・ブッシュ!」と叫んだりしていた。そしてクラリネットを吹き鳴らし、素手でギターの弦を引きちぎる。このキレっぷりは、おばさんだって怒るんだということだ。人にいろんな感情があるように、おばさんにも優しい面やキレる面などいろいろある。それは、普通に我々が抱く感情となんら変わらない。ただ、パティ・スミスはその振れ幅が普通の人より大きいということなんだろう。それは充分に素晴らしいことで、それが全てである。今の自然体に生きている彼女に「伝説」も「NYパンク女王」も余計な言葉なんだろう。
report by nob and photo by keco
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