CAVE INにしか出せない宇宙的空間。ひたすら鳴り続けるギター・ノイズ。去年サマーソニックで見たよりも、アストロ・ホールで見た時よりも、テクニックも重なり合うすべての音の厚さもすべてがスケール・アップしていた。 1995年にボストンで結成されたCAVE IN。もともとハードコア・メタルのバンドで、地元ではなかなか人気と知名度のあるバンドだったらしい。それが、バンドの編成も変わり、自分たちのやりたい音を探し求め現在のスペーシーなサウンドが出来上がった。なんで、ハードコア・メタルがロックになるんだ?今の彼らの音を聴けばわかるかと思うけれど、ハードコアの破壊力とそのテクニックは、現在のCAVE INサウンドの中にきっちり残されているのである。ハードコアから彼ら独自の音を作り出す。それが彼らのどの曲からも聴ける、美しすぎるほど繊細なメロディなのだ。今年に入って日本でも、待望のメジャー・デビュー・アルバム『ANTENA』がリリースされている。 |
![]() "Rubber & Glue"から始まり"Brain Candle"へと激昂するナンバーで、出だしから場内を沸かせる。大音量で吐き出されるサウンドと、噛み付かんばかりに大口を開けて歌い上げるスティーヴのヴォーカルは、ものすごく迫力がある。それにしても、体が弾き飛ばされそうなくらいの大音量。骨や内臓までビリビリと振動が伝わってくる。それが"Penny Racer"や"Anchor"とエッジのきいた激しくスピード感ある曲でも激しく、より熱く煽ってくる。CAVE INの中でも、目立って突っ走る系のロック・ナンバーだ。 |
ライヴは新宿リキッド・ルーム。予想をはるかに越える多くの人がフロアを埋めつくしていた。20時すぎ、スティーヴ(ヴォーカル)、ジョン(ドラム)、アダム(ギター)、カレブ(ベース)の4人がステージに姿を現す。そこから1時間余り、CAVE INワールドにどっぷりと浸かる。本当にどっぷりと、なのだ。そこには、観客のシンガロンもなければ、モッシュやダイヴもない。だからといって、盛り上がっていないわけじゃない。音に身を委ねるのだ。気持ちをごっそり持っていく人々を圧倒する音が、次々と展開されていく。ロックのライヴで、こんなに立ち尽くして聴き入ってしまうのは、ここ最近では、いや今までの中でCAVE INだけかもしれない。決してつまらなくてそうなったんじゃない。CAVE INの曲はどの曲でもじっくり聴きたくなる。 |
ステージ上の4人は、激しい曲の時は至って冷静なのだ。彼らは、"Woodwork"や"Joy Opposites"のようなスロウな曲でのプレイのほうが、激烈を極める。彼らの変貌ぶりが最も顕著に表れていたのが、"Seaforest"だ。静かなメロディが終盤に向かうにつれすべての音が入り乱れる。4人は、自分たちが発するギター、ドラム、ベースの音にのめり込んでいく。陶酔しきっている。聴いている観客も彼らも、その音の中を彷徨っている。ひたすら続く、インストのパート。何かに取り付かれたように立ち尽くす。パタッと音が止まっても会場の誰一人身動きもしなければ、歓声も聞こえない。スティーヴの「終わり」という言葉でようやく現実の世界に引き戻される。催眠から解かれたようにパッと目を覚まし、我に返っておもむろに人々から拍手と歓声が上がる。CAVE INのサウンドは、演っている彼らも聴いているこちらも、どこか異次元にワープさせてしまう。正にスペーシーな未知のサウンドだ。
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![]() 催眠と未知のサウンド。そう、これがCAVE INの曲の特徴だと思う。調子よく同じリズムで乗ると、どこかでリズムが狂う。複雑なリズムなのだ。そのリズムが癖になる。そこにどっぷりと浸かってしまうのだ。繊細で影のあるマイナーなメロディと、複雑に組み立てられたリズム、そして不協和音。破壊的な音の中に聞こえる美しいメロディ。CAVE INは、ロックを次の段階へと向かわせている。
派手さはない。どちらかというとスタイルも容姿も地味。モッさい。エネルギー炸裂で超ド級に明るくキャッチーな今風のバンドとは相容れない。物静かで賢い優等生タイプだ。流行とはかけ離れたところにいる。一歩先を行っているのかもしれない。いったい、彼らの中にはどれだけたくさんの音の引き出しがあるんだ!?ライヴが終わった後も、耳にいつまでも音が鳴り響く。凄い、の一言につきるライヴだった。CAVE INは、日本でももっと注目されて然るべきバンドなのだ! |
-- set list -- RUBBER & BLUE BRAIN CANDLE INSPIRE PENNY RACER BREATH O WATER COME INTO.... ANCHOR DARK DRIVING SEAFOREST JUPITER JOY OPPOSITES YOUTH OVERIDED WOODWORK CALYPSO STAINED SILVER report by ali |
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The official site of Cave In is; - http://www.cavein.net/ the latest album |
無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Ali Maeda and the same of the photos belongs to Keiko "keco" Hirakawa. They may not be reproduced in any form whatsoever. To The Top. |