「こんな女の子可愛くていいな」と思ったあの子が、一年経って世界の歌姫になり日本にやってきた。アヴリル・ラヴィーン。覚えにくそうなその名前も、すっかり日本でもお馴染みに。なんたって、アルバム『Let Go』が150万枚以上日本で売れてるのだ。一家に一枚にアヴリル・ラヴィーン!になるまでそう遠くもない。去年8月にプロモーション来日した時は、一度きり赤坂ブリッツでのお披露目のライヴだけだった。今回は、本格的なツアー。そして、洋楽の新人としては異例の初来日で武道館制覇!この日は、追加公演のZepp 東京だ。 18:30よりオープニングのGOB、続いてシンプル・プランの少し短めのライヴ。会場は、シンプル・プランでようやくキャパの3分の1程度になる。仕方ない。本日のメインはなんたってアヴリルなんだから。両バンドともノリノリ多いに盛り上げ、会場Tシャツで充分程度に温まる。アヴリルのライヴが始まるのが20時。場内は人がギッシリと入り、蒸し暑くじっと立っているだけでも汗が流れてくるほどの熱さになっていた。フー・ファイターズの"Hero"が流れる。 アヴリル待望のライヴ・スタート!"TRY TO SHUT ME UP" の文字が一つずつ写しだされる。"Sk8er Boi"のイントロでステージに飛び出してきたアヴリルに、大歓声が沸き上がる。ステージ上の彼女は、本当に華奢で小さい。体を動かすたびにキラキラなびく長いストレート・ヘアがとても印象的だ。 普段着そのままのグレイのTシャツに黒のパンツ姿。トレード・マークであった、タンクトップ(もしくはTシャツ)にネクタイ姿ではない。テレビのインタビューを見たら、「ネクタイはもう飽きたの。」・・・とりあえず、アヴリルのような格好をしたかったら、髪をストーレトにして、古着のTシャツを着てジーンズやカーゴ・パンツのようなものを履いていれば、それっぽくなる、のか。結論、前の年していた服装は次の年はすでに着ない。 タンクトップ姿にネクタイ姿のアヴリル風の女の子も、パンク・スタイルの男の子も、制服姿の女の子グループも、みんなぎっしりフロア前方に押し寄せて、飛びまくる。フロアから少し下がったところに位置した私の周辺には、30代40代の人たちもいる。正に老若男女を虜にする、近年稀に見る驚異のフィーメール・ヴォーカルだ。 "Nobody's Fool"や"My World"は、アヴリルの明るさや無邪気さがそのまま現れているポップな曲。胸を前に突き出し、背筋をピンと伸ばしたまま颯爽とステージ上を左へ右へと動き回る。その堂々とした立ち振る舞いは、愛くるしいのに実にカッコイイ。思わずその歩く姿に、カワイイなーと頬も緩む。いや、始終緩みっぱなし。初っ端の"Sk8er Boi"同様、弾ける曲ではみんなロックしまくる。ギター片手にクールに歌い上げる"Mobile"や、コートニー・ラヴよろしく力強く歌う"Unwanted"は、ポップなものとまた違った面持ちでパワフルだ。あんな小さな体のどこにそんなパワーが潜んでいるんだろうか。それに、観客を圧倒し、多いに乗らせる曲が放つエネルギーとアヴリルのヴォーカル力。これは、CDで聴く以上に圧巻のパフォーマンスなのだ。アヴリルも、フロアと同じように飛び跳ね、ステージ上を縦横無尽に動き回る。元気な観客に向かってアヴリル一言「みんなサイコー!」。 彼女のヴォーカリストとしての成長ぶりに驚いたのが、"Losing Grip"や"I'm With You"、"Naked"のようなスローな曲。恐らく、"I'm With You"では、すべての人が素晴らしいと感心以上に、感動を覚えただろう。透き通った声が、Zepp後方まで気持ち良く伸びていく。その歌唱力が、アヴリルがそんじょそこらの「ただの歌好きのカワイイ女の子」ではないことを証明している。その歌唱法は、彼女が好きなアラニス・モリセットのそれとも似ているし、ドロレス・オリーオーダンをも彷彿させる。一曲ごとに、歌う声も感情の入れ方もすべて違う。アルバム中13曲あったら、13通りのアヴリル・ラヴィ−ンがそこにいる。この日のライヴでも、弾けたときとはまったく別の憂いを帯びたしっとりしたヴォーカルが会場を包みこみ、じっくりと聴かせていた。圧倒する歌唱力。同じように歌えたら、さぞかし気持ちいいだろうな。 中盤にカヴァー曲のおまけ。彼女も大好きなグリーン・デイの"Basket Case"だ。聴きなれたグリーン・デイのこの曲が、妙に新鮮に聴こえる。まるで自分の曲のように、楽しんで歌っている。そこに特にカヴァー曲という違和感もない。 感動の鳥肌で包み込んだ"I'm With You"に続けて、"Complicated"。もちろん、この日一番で最高の盛り上がりを見せたこの曲では、お決まり「Tell Me」の大シャウト。次の日の武道館で何千もの人が「Tell Me」とシャウトしているところを想像するだけでも、ゾクゾクする。この曲は、何年経ってもアヴリルのライヴでは定番の一曲になるだろう。アンコールでギターのエヴァンと2人だけのアコースティックで歌う"Tomorrow"、「ラッダダー」のコーラスが印象的な"Things I'll Never Say"で、1時間のアヴリル・ラヴィーン・ショウは幕を閉じた。 アヴリルの人気を、ハイプなんじゃないの?と眉をひそめる嫌いもあるだろう。だけど、曲やライヴを見れば、それがハイプじゃないのは一目瞭然だ。歌詞で共感させて、曲で元気にさせて、時にセンチメンタルに泣かせる。歌で圧倒し、絶大な影響力を多くの人に与えているのだ。それも、誰も揺るがすことのできない「あたし」をしっかり持って。だから、たくさんの人がアヴリルが好き、彼女の歌う曲が好き。ねぇ、アヴリル。ずっとそのままでいてね、と、ステージでピョンピョン子供のように跳ね回る彼女を見て、心の中でそう願った。 -- set list -- SK8ER BOI NOBODY'S FOOL MOBILE ANYTHING BUT ORDINARY LOSING GRIP NAKED TOO MUCH TO ASK I DON'T GIVE BASKET CASE (GREEN DAY) MY WORLD I'M WITH YOU COMPLICATED UNWANTED -- encore -- TOMORROW THINGS I'LL NEVER SAY report by ali. |
Avril Lavigne : http://www.avril-lavigne.com/ |
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