buttonAmerican HiFi @ 心斎橋クアトロ (2003年5月28日)

--- 笑顔で満ちあふれた、幸せな時間 ---

 おまえは俺を負け犬だと叫び 人を利用しているという
 でも俺は止まらないさ これが負けるコツなんだ_
 2ndアルバム「THE ART OF LOSING」の一曲目の歌詞。これほどまでに圧倒的な言葉は聞いたことがない。周囲からの批判を受け止め、それでも自分であろうとする強さ…これが今のAMERICAN HI-FIの原動力になっているのではないだろうか。しかも、メロディアスなリズムに乗せながら、パワー溢れる声で表現してしまうなんて憎いことをやってのける。凄い奴らなのかも知れない_

 そんな事を考えながら、昨年のフジロック以来の彼らに会いに出掛ける。目指すは心斎橋クラブクアトロ。

 相変わらず横長のライブハウスは、開演30分前だと言うのに熱を帯びている。煙草を吸いながら静かにその時を待つ人、友達と酒を交わしながら待つ人。各々の楽しみ方でSEをバックに刻々とその時を待っていた。

 予定よりも15分を過ぎた頃、観客から大きな歓声が。薄暗かったステージに4つの人影。「コンバンワ、オオサカー!!」という声と同時にライブスタート。皆が前に詰めかけ、モッシュ状態と化し、天井が低いのにも関わらず何人もがダイブ!"FLAVOR OF THE WEAK"のイントロが鳴った瞬間、さらに人が押しかけ笑顔で大合唱! 会場は興奮の熱気に包まれていく。

 今日は久々のMagの仕事、少しすまして見ているつもりだった私も、その渦の中にさらわれていく_足はリズムを取り、頭と腰は揺れる。悪代官が町娘の帯をクルクル巻き取る時に発する「あぁ〜れぇ〜」状態の私。気が付いた時にはもうステージから目を離せずにいた。満面の笑みを浮かべながら、日本語を織り交ぜた饒舌のMCで、どんどんAHFの世界に引きずりこんでいく。観客の心のつかみ方を知っているのではないだろうかと疑うくらいだ。梅雨を目前にしたけだるい中で、彼らのロックは爽やかで…軽快で…心の中の曇り空も吹き飛ばしてくれそうなくらい明るい。今流行の爆音・疾走感たっぷりのロックとは違うが、それ以上にロックの本質をついた、まさに魂が体中に流れてくる壮絶なAHFのパワーには、序盤から圧倒されっぱなしだ。

 ライブ中盤で突然ステイシーが「My favorite bands〜」と話始め、続けてThe Jam、グリーンディ、ニルヴァーナ、フーファイターズなどが名を連ねた。その後なんとThe Jamの"IN THE CITY"が! アレンジをあまり加えず原曲に忠実…まさしく「HI-FI」だった。AHFならではのエッセンスは詰まっていたものの、The Jamへの愛しい気持ちが込められていて、聴いているだけで嬉しくなったのは、私だけではないだろう。そしてアンコールには、最後の最後にまたやってくれた!なんとCHEAP TRICKの"Surrender"が! こんな曲を最後まで取っておくなんて…憎い、憎すぎる!

 1時間15分という短い時間の間に、何回驚かされ心を持っていく気なのだろうか。観客も満面の笑みで腕を振り上げ跳ねる。その光景を見たメンバーがさらに笑顔で……会場内には「笑顔」という名のパワーが溢れ、嫌な事を忘れ、胸の中にある何かを吹き飛ばすことが出来た。

 久しぶりのライブだったので忘れていたが「ライブ」とは、生の空間であり、現実である。それも、とびきり甘くて儚い現実。AHFのご機嫌なロックを感じていられたことを幸せに思う。「ライブ」ならではの笑顔とパワーをありがとう。

report by shoko.


The official site of
American HiFi
:
http://www.islandrecords.com/americanhifi/
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