buttonSUM41 @ NKホール (2003年5月17日)

--- ポップ・パンクの風雲児がビッグになって再来日! ---

 SUM 41 FESTIVAL。昨年グリーン・デイがやったものを、今年はサムがヘッドライナーとなり、いくつかのバンド(この日はLong Shot Party, DAMONE, POTSHOT)を引きつれ北海道や大阪、名古屋、東京などをツアーする祭り。このヘッドライナーがサムってところが、まず驚きだった。なんたって2002年日本初来日時、東京でのライヴはクアトロだったし、2度目はZEPP東京だったわけだ。そんな彼らが再び日本に来る、その東京の会場がNKホールである。ここで、サムのような日本でブレイク必至と予測されていた海外バンドの、来日を重ねる毎の会場規模拡大(東京でいえば、クアトロ級→ブリッツ級(2,3日連続)→幕張メッセやホール級→アリーナ級)によって見られる成長記録、この一種の定義のようなものがサムには当てはまらないのだ。もちろん、すべてのバンドがこの段階を踏むわけでもないけれど、今まで私が見続けてきたバンドは大体この段階を踏んでいる(例えばオフスプリングやグリーン・デイ)。だから、何だっ。いいじゃないか、NKホールでやったって。その通りなのだ。NKホールのアリーナA〜Cブロックまでびっしり詰まった人を見て、サムの日本での人気沸騰ぶりに圧倒され、もう小さな会場じゃムリだよな、と実感したのだった。

 サム登場は19:00から。といっても、もちろん定刻に出てくるはずはない。登場までのこの間は、心臓が耐えられなくなる。「サム・フォーティーワン!サム・フォーティーワン!」と繰り返される調子はずれの待ちわびコールが心臓の鼓動を早くする。サムを始め、メロコア(ポップ・パンク)系ライヴでのライオット化したブロック内では、自分の身にどんな危険が降りかかるか予測不可能である。安全地帯を探してそこで揉まれず叩かれずじっくり棒立ちで見ようかとも思うけれど、ワクワクしている祭り心がそれを許さない。それなのに、心臓バクバクで手も冷たく妙に緊張している小心者。

 遂に暗転と大歓声と共にサム登場!と同時に背後からダッシュで迫ってくる人に押され、潰されもみくちゃにされた。メタル・サウンドで登場の挨拶。一気に人々は暴徒と化したのだ。壁になってね、と護衛を頼んだ友達は始まりと同時に私の背後から姿を消し、前方へと突進していってしまった。卑怯者ー!と言いながらも、残された私たち小さなレディース組は、周りを取り囲んだメンズたちに押される中、必死に自分の身を守りながらもジャンプとモッシュでグングン前方へと突き進んでいったのだった。

 ライヴは、サード・アルバム『Does This Look Infected?』とセカンド・アルバム『All Killer No Filler』をほぼ網羅。ニュー・アルバムは、前作の超楽観的イメージが控えめになり、すべての曲がシリアス・ムードになっている。個人的にはこのアルバムは、サム特有の哀愁漂うメロディがより一層前面に出ていて、スピード感失わずガンガン攻めてくるのが非常に胸に刺さり、前作以上に好きである。スティーヴのラップで始まる『Thanks For Nothing』なんて、泣けるサビが印象的で個人的にお気に入りの曲。全曲にメタルの匂いを漂わせるもの変わらずだ。そのギターの音の厚さ、低音の響きがライヴではビリビリ体に伝わってくる。

 スタートから休むことなく曲は続く。観客のパワーは衰えることを知らない。"The Hell Song"、"Over My Head"、"Make No Difference"、"No Brains"。どれもこれもが、暴れるために作られたような曲であり、こういう曲に乗せてもみくちゃにされるのは、意外に気持ちいいものなのだ。"In Too Deep"での、肩を組んで輪がグルグル回る微笑ましい光景とは打って変わって、"Fat Lip"はイントロで待ってましたの歓声が上がり、サビへの盛り上がりと同時に観客もヒートアップ。モッシュは勢いを増し、そこから必死に避難すれば、今度は前方でモッシュができる。どこへ行っても、暴れるしかないのだ。

 終盤に向かうにつれて、人々のパワーも落ちていく。これをチャンスともっと前へと進んでいくと、ようやくコーンとデリックの姿が見えるようになった。スティーヴのメタル・ショー・タイムでは、一気にメタルのライヴさながら、みんな拳を掲げてヘッドバッキング。ここで、前回のクアトロでのライヴを思い出した。あの時は、コーン、デリック、デイヴの速弾き合戦があったり、ラップの掛け合いがあったり、遊び満載のライヴだった。よくしゃべり、よく遊び、弾けて盛り上がったのに、今回はMCすらない。曲の連打のみだ。デリックの体調不良の噂は耳にしていたし、過剰な演出を望むわけではないけれど、ここまであっさりしていると何か物足りない。ちょっとの間で、ずいぶんと大人になっちゃったね、サム。

 前方に突き進んだのを後悔させたのが、ラスト近くの"Still Waiting"。ここでの騒ぎは尋常じゃない。鞭打ちになるかと思うほど激しく押され、モッシュの中でかき回され、もうここまできたら、どうなってもいいとすら思うほど。頭は空っぽ、体は振り回されるがあまま。スネにできた大きなアザがその時の激しさを物語っている。その熱気のままアンコールへ突入し、最後もメタルで締めくくり、サムはステージから去っていった。そして、次は今年こそ、サマソニ登場だ。

 確か昨年のクアトロでのライヴ・レポートで、クアトロっていう小規模なハコで見られたのは、後々価値のあるものになるかもしれない、と書いた。絶対超人気バンドになる、これは去年サムを見た人はみんな思ったに違いない。本当に、驚くべき成長と大人気ぶりだ。どんなに成長しても、"Still Waiting"での流行りの”THE”付きバンドを皮肉ったビデオや、超制作費で作られたという、すべてフィギュアしか登場しない"The Hell Song"のビデオなど、お腹を抱えて笑い、この人たちはギャグの天才だねと思わせるビデオを作り出す相変わらずのユーモア・センスは健在だ。今のポップ・パンクのムーヴメントを作り上げ、追随するバンドのリーダー的存在となっている彼らが、今後どんな風に変化していくのか。非常に今後が楽しみなSUM 41なのだ。果たして、サムを超えるほどのニュー・バンドは登場するのか?

report by ali.


The official site of
SUM41
:
http://www.islandrecords.com/sum41/
check albums?

サーチ:
Amazon.co.jpアソシエイト

無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Ali Maeda which may not be reproduced in any form whatsoever.
To The Top.