button Death in Vegas with DJ Andrew Weatherall
Brixton Academy (4th May '03)

死ぬまで踊り狂え!

 今、僕はとても興奮している。ライブを観てから既に一晩たっているというのに、未だに体が疼いて止まない。でも、これでもだいぶ冷めたのだ。昨日の夜は自分でもおかしいと思うくらいに興奮していた。ロンドンの寒空の下、いつまでたっても来ないナイトバスを待っているあいだに体は冷え切ってしまっていたのに、脳から発せられるアドレナリンを出せという信号はいつまでたっても途絶えることがなかった。ライブの後、コップを持ったら支えきれずに中身を全部こぼしてしまったくらいに体から力が無くなっていたのに、頭は先週ノーマン・クックがブティック7周年記念で素晴らしいDJプレイを見せたターンミルズに寄って帰りたいと訴えかけてきていた。今冷静に考えると、24アワー・パーティー・ピープルよろしくな頭のおかしい兄ちゃんみたいだが、別にドラッグをやってたわけじゃない。友達のテキーラを間違えて一気飲みしてしまったせいでもない。僕は純粋に音楽と、それを楽しむ人たちに興奮していたのだ。

 こんなことがあった。僕がアンドリュー・ウェザオールのDJプレイで踊り狂っていたら、隣にいた厳ついお兄ちゃんがいきなり頭をガシッとつかんできたのだ。そして何やら耳元で囁きだすではないか。正直、我がアスホールの安全についての不安が一瞬頭をよぎったのだが、よく聞いてみると、どうやらこの兄ちゃんは「エクスタシー持ってんならくれよ」と言ってるらしい。はあ、そんな風に見えてたのだろうか。まあ、しかし、傍から見てドラッグをキメてると思われるくらいに僕が踊り狂えたのは、この日の会場であるブリクストンアカデミーがすり鉢状のフロアであるにもかかわらず、前列中央でも人が押し寄せずにみんな自分が踊れる適度なスペースを保っていたおかげだ。デス・イン・ヴェガスのライブのときは飛んだり跳ねたりぶつかり合ったりと、少しワイルドになりはしたが、それでも少しでも近くでミュージシャンを見るために自分が自由に踊れるスペースをわざわざつぶすような馬鹿らしいことをする人はいなかった。この日一緒に行った友達は後ろの方で見ていたらしいが、そっちではみんな酒を飲んで話しながらステージを観ていたらしい。みんな自由な楽しみ方をしているので、僕も気持ちよく自分の楽しみ方ができた。この楽しみ方はぜひ見習いたい。

 こっちのライブはもしかしたらみんなそうなのかもしれないが、この日の構成は僕にとって凄く新鮮だった。それぞれのアクトの間に全く待ち時間がないのだ。バンドが終わるとDJが間髪いれずにプレイを始め、今度はDJのプレイに導かれバンドが登場する。これはとてもいいアイデア。僕が今まで見たことのあるライブでは前座とメインアクトの間に30分近くの待ち時間が必ずあった。それはセットの組み換えのせいだから仕方ないのだが、これだと前座のバンドがどんなに良くてもフロアはどうしてもまた冷めてしまう。もったいない、といつも思っていた。しかし、この日はバンドとDJが交互に二組ずつ出るという構成上の特性もあったので、まるでクラブのように、前の人が温めたフロアを次のアクトがそのまま引継いで最高の状態でプレイを始めることができていたのだ。まあ、おかげで僕は6時間温まりっぱなしで結局コップも持てなくなるくらい疲れてしまったのだが。

 それにしてもデス・イン・ヴェガス、何でこのバンドを僕は今までチェックしていなかったのだろう。バンド+DJ二人という構成で、クールに酒やタバコを飲みながらドラッギーな覚醒感に満ちたインストナンバーを次々と叩き出してくる。バックのサイケデリックな映像との素晴らしいシンクロなどはクラブ的な演出ではあるけれど、演奏はクラブでは決して感じることのできない生身のバンド特有のダイナミズムに溢れている。ギター、ベース、ドラム、DJではなくて、「バンド」という大きな一塊としての音楽。それを浴びる快感を味あわせてくれたのは、去年観たプライマル・スクリーム以来かもしれない。

 彼らは日本にも行くのだろうか。行くのだったら是非この日のような構成で行って欲しい。もしそうだったら、いや、もしそうでなくても、是非あなたにも体験しに行って欲しい。そして、僕と同じような興奮をあなたにも味わって欲しい。

report by dak


The official site (?) of
Death In Vegas :
http://www.death-in-vegas.co.uk/
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