buttonJackson Browne @ Nakano Sun Plaza (3rd May '03)

聴いたこともなかった"Rosie"になぜか…

Jackson Browne

 ここ10年ほどのオルタナ・ロックの洗礼を受けた若者には、あるいはジャクソン・ブラウンのライブは最初は少々戸惑うかも知れない。ホールの会場はモッシュ&ダイブの見慣れた光景には程遠いどころか、お客さんが総立ちになることも土壇場までない。激しいアクションや人目を引くパフォーマンスの類も一切ない。しかも今回のツアーは間に15分の休憩まで挟む、まったく急くことのない展開。短距離走のようなライブに慣れたメロコア・ミクスチャーあたりしか知らない年代だと、こりゃちょっと刺激が足りないと感じても無理はない。

 それでもそこにあるのはお決まりのものではない、観客とのコミュニケーションを第一に考えた正に「ライブ」だった。顕著な例は観客の呼びかけにいちいち答えるジャクソンの姿だ。時にはこの日急遽演奏した"Somethig fine"のように、リクエストに応えてセットリストをその場で変更してしまうこともままある(PAは大変だろうけど)。まるでフィルム・コンサートと変わらないような予定通りのステージを淡々とこなすだけの形骸化バンドも多い中、ジャクソン・ブラウンのショウは確かにその瞬間を切り取り続ける「ライブ」を行なっていた。

Jackson Browne
Jackson Browne

Jackson Browne
 個人的な圧巻は、これまた観客の声に応えて演った"Rosie"。鳴っている楽器はジャクソンが弾き語りをするちっちゃな鍵盤だけ。そしてもちろん自身のメイン・ボーカルと、サビ部分だけ重ねてくるバンドメンバーによるコーラス・ワーク。これが――響いた。会場からは咳払いひとつ聞こえない。そして特に曲の終盤、コーラスが曲題を繰り返すくだり、

"なにかが伝わってきた"

 そう表現するしか、とりあえず、ない。とにかく"すーっと入ってきた"という感じだ。シンプルこの上ないステージングなのに、どういうわけか薄く涙が浮かんでくるのが自分ではっきりわかる。いっとくけど、この曲、知らなかった。もちろん歌詞の意味なんて聴き取れていない。でもそういうことではないのだ。知識を超えたものがそこにはあった。

 特に最近ぼんやり考えるんだけど、音楽っていうのは突き詰めていくと結局ある種の周波数なわけで、そのバイブレーションが他人の感情や思考の振動数にマッチしてしまう時にどうしようもなく心は(文字通り)揺さぶられるのではないだろうか。なんの予備知識もなく、歌詞の内容もわからず、時にはその言語自体さえも馴染みがない。それなのにとてつもない感動を覚えるということは確かにある。不思議なことだけど、この事実はこう解釈でもしないと説明がつかない。

 アンコールはもちろん"Stay"。ここでも観客とのやりとりは続き、掛け合いと合唱がホールを埋める。ちょっとしたコミュニケーション・ギャップにジャクソンが苦笑いを浮かべる場面もありつつも、そういった事も含めて共有しているこの時間を楽しんでいるように見えた。

 最初の話に戻るけれど、轟音のバンドばかり聴いている若者にむしろ、一度ライブで聴いてみてくれといいたい。人間は、刺激にはいずれ慣れる。逆説的だけど、爆音のヘヴィ・ミュージックに少しマンネリしてきた頃、こういったベテランのステージがかえって何よりの刺激になるはずだと思う。そこには根本的で普遍のものが流れているから。

Jackson Browne

report by joe and photo by hanasan

*なお、写真は5月4日公演で撮影されたものを使用しています。


The official site of Jackson Browne
--http://www.jacksonbrowne.com/
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Blue Horn

An album of Blue Horn, Jeff Young, the kbd player of the Jackson Browne's band involved.
"Noise For Neighbors"


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