「9.11から後は、もうアメリカが大嫌いになった。ジャクソンは一体どう思ってるんやろ」
今回の席は、何と最前ど真ん中! だが、その気合いと裏腹にジャクソンや、バンドのメンバーが登場しても、周囲は誰も立ち上がらない。あれ、お出迎えしないの? 久々の椅子付きライヴに大いに戸惑っていると、ジャクソンの"マイド!"と共に"The Night Inside Me"がスタート。21世紀版「孤独なランナー」なノリのいいナンバーゆえ、私は早くも腰浮き状態だ。グレーのストライプのシャツ姿で中央に立ち、髪型も、そして本当に変わらぬあの声が響き渡る瞬間、ああ、本物だぁと胸がキュンとなってしまう。その左手にギターのマーク・ゴールデンバーグ、右手にベースのケヴィン・マコーミック。もうおなじみの2人を含むバンドと共に5年ぶりのご対面である。 彼がキーボードに向かい、イントロにひときわ大歓声が起こったのは"Fountain Of Sorrow"。そして、それがどっしりと重いテンポに変わると"Casino Nation"。――ジーザスの元で兵器が製造され、どこに行っても善人が永久戦争の準備をしている国――。これが今の彼の答そのものとさえ言える痛烈なアメリカ批判の歌だ。 「今日は日本で最初のショウなんだ。大阪から始められてうれしいよ」そんな挨拶の後、彼はこう付け加えた。"We're all against the War in Iraq."――僕らは皆イラクでの戦争に反対だ。そうだよ、それでこそジャクソンだ!と拍手がわき起こる。
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![]() 20分の休憩を挿んだ後、後半は"About My Imagination" からスタート。客席からの「まいど!」に応えたり、いつもの和やかモードになったところで、キーボードに向かう彼に、「ロージー、プリーズ」の声が。"Rosie? ハイ(笑)O.K!" と本当にリクエストに応えて彼が歌い始めた時の大歓声といったら! 以前はタイミングも考えずリクエストを叫びまくるファンに困らされた事もあったが、今日はバッチリ! ジャクソンを残して引っ込んでいたバンドの皆も渋いハーモニーを聞かせに戻ってくる。そのまま"Late For The Sky"に続いた時には「うわ、たまらん」とさらに大歓声だ。 そして、終盤あのピアノのイントロに、我慢ももう限界!と私が立ち上がったのは"The Pretender"。ところが、周囲は誰も立っていない。うそぉ、と驚きつつも、1階席全部敵に回したっていいぐらい大好きな曲なんだから!とそのまま思いきり歌い続ける。そう、この歌と同じように現実の仕事と夢の狭間で悪戦苦闘している自分が、こうやって歌おうと思わなくなったら、自分自身が毎日プリテンダーである事すら忘れてしまったら、それは心の死を意味するのだ。 |
![]() いくら新曲を出しても過去の名曲の方が盛り上がるというのは、もしかすると彼には気持ちのいいものではないかもしれない。しかし、そんな古くからのファンを決して裏切りもしなければ、今、この世界情勢に向けて、アーティストとしての意思表示も絶対に忘れない。ジャクソン・ブラウンはもうずっとそんな優しさと強靭さの両輪で走り続けてきたのだ。それはきっとこの先も変わりはしない。そして、彼が私にとって大切な「心」の歌い手である事も。
part 1
part 2
encore 1
encore 2 report by ikuyo 追記:ジャクソン・ブラウンを始め、R.E.M.やマッシヴ・アタック等が参加のMusicians United to Win Without War という抗議団体のHPではオンラインで誰でもブッシュ大統領宛ての抗議メールが送れるようになっています。 http://www.moveon.org/musiciansunited/ |
Jackson Browne : http://www.jacksonbrowne.com/ |
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