button Jackson Browne
大阪フェスティヴァルホール (28th April '03)

--- そして彼は真実を歌い続ける ---

「9.11から後は、もうアメリカが大嫌いになった。ジャクソンは一体どう思ってるんやろ」

Jackson Browne  ジャクソン・ブラウンの大ファンな友人がこう言った。本当にその通りだ。来日公演には欠かさず通い、70年代の名曲も大好きな私。しかし、最新作『ネイキッド・ライド・ホーム』の中でもアメリカを痛烈に批判し、もっと真実を!と歌っているジャクソンなのだ。こんな世界情勢だからこそ彼がどう立ち向かうのか。その答をぜひとも生身の彼から聞きたかった。

 今回の席は、何と最前ど真ん中! だが、その気合いと裏腹にジャクソンや、バンドのメンバーが登場しても、周囲は誰も立ち上がらない。あれ、お出迎えしないの? 久々の椅子付きライヴに大いに戸惑っていると、ジャクソンの"マイド!"と共に"The Night Inside Me"がスタート。21世紀版「孤独なランナー」なノリのいいナンバーゆえ、私は早くも腰浮き状態だ。グレーのストライプのシャツ姿で中央に立ち、髪型も、そして本当に変わらぬあの声が響き渡る瞬間、ああ、本物だぁと胸がキュンとなってしまう。その左手にギターのマーク・ゴールデンバーグ、右手にベースのケヴィン・マコーミック。もうおなじみの2人を含むバンドと共に5年ぶりのご対面である。

 彼がキーボードに向かい、イントロにひときわ大歓声が起こったのは"Fountain Of Sorrow"。そして、それがどっしりと重いテンポに変わると"Casino Nation"。――ジーザスの元で兵器が製造され、どこに行っても善人が永久戦争の準備をしている国――。これが今の彼の答そのものとさえ言える痛烈なアメリカ批判の歌だ。

「今日は日本で最初のショウなんだ。大阪から始められてうれしいよ」そんな挨拶の後、彼はこう付け加えた。"We're all against the War in Iraq."――僕らは皆イラクでの戦争に反対だ。そうだよ、それでこそジャクソンだ!と拍手がわき起こる。

Jackson Browne  そして続くのは"Till I Go Down"。レゲエのゆったりテンポに乗せながらも「倒れるまで、この目を閉じたりしない」と歌う強烈な意思表示。さらに"Black And White"を挿んで、バックの皆が椅子に座り、アコギ・モードに変わると"Lives In The Balance"。ちょっとボサノバ風なアレンジで一瞬わからなかったが、反戦、反政治色の強いアルバムのタイトル曲。真正面からジャクソンと向かいあい、そんな内容の曲を続けて聴いていると、30年以上変わる事なく彼を貫く視点の気高さに思わず熱くなる。

 20分の休憩を挿んだ後、後半は"About My Imagination" からスタート。客席からの「まいど!」に応えたり、いつもの和やかモードになったところで、キーボードに向かう彼に、「ロージー、プリーズ」の声が。"Rosie? ハイ(笑)O.K!" と本当にリクエストに応えて彼が歌い始めた時の大歓声といったら! 以前はタイミングも考えずリクエストを叫びまくるファンに困らされた事もあったが、今日はバッチリ! ジャクソンを残して引っ込んでいたバンドの皆も渋いハーモニーを聞かせに戻ってくる。そのまま"Late For The Sky"に続いた時には「うわ、たまらん」とさらに大歓声だ。

 そして、終盤あのピアノのイントロに、我慢ももう限界!と私が立ち上がったのは"The Pretender"。ところが、周囲は誰も立っていない。うそぉ、と驚きつつも、1階席全部敵に回したっていいぐらい大好きな曲なんだから!とそのまま思いきり歌い続ける。そう、この歌と同じように現実の仕事と夢の狭間で悪戦苦闘している自分が、こうやって歌おうと思わなくなったら、自分自身が毎日プリテンダーである事すら忘れてしまったら、それは心の死を意味するのだ。

Jackson Browne  さすがに次の"Running On Empty"では二階席まで文句なしの総立ちになり一安心。そしてアンコール"The Load Out"からはお約束タイムへ突入。それでもよく聞けば「次のショウの京都…違う、広島だ」と歌いなおす律儀な彼。"Stay"の掛け合い大合唱からラスト、"Doctor My Eyes"まで終わってみれば2時間半近く。さすがに最後は少し声がつらそうなところもあったが、今の彼をそのまま披露してくれた限りなく誠実なステージだった。

 いくら新曲を出しても過去の名曲の方が盛り上がるというのは、もしかすると彼には気持ちのいいものではないかもしれない。しかし、そんな古くからのファンを決して裏切りもしなければ、今、この世界情勢に向けて、アーティストとしての意思表示も絶対に忘れない。ジャクソン・ブラウンはもうずっとそんな優しさと強靭さの両輪で走り続けてきたのだ。それはきっとこの先も変わりはしない。そして、彼が私にとって大切な「心」の歌い手である事も。

Jackson Browne --- set list ---

part 1
1.The Night Inside Me
2.Fountain Of Sorrow
3.The Barricades Of Heaven
4.Casino Nation
5.Till I Go Down
6.Black And White
7.Lives In The Balance
8.These Days
9.The Naked Ride Home
10.My Stunning Mystery Companion

part 2
11.About My Imagination
12.In The Shape Of A Heart
13.For Taking The Trouble
14.Rosie
15.Late For The Sky
16.A Child In These Hills
17.Never Stop
18.Culver Moon
19.Sleep's Dark and Silent Gate
20.The Pretender
21.Running On Empty

encore 1
22.The Load Out
23.Stay

encore 2
24.Doctor My Eyes

report by ikuyo


追記:ジャクソン・ブラウンを始め、R.E.M.やマッシヴ・アタック等が参加のMusicians United to Win Without War という抗議団体のHPではオンラインで誰でもブッシュ大統領宛ての抗議メールが送れるようになっています。
http://www.moveon.org/musiciansunited/

The official site of
Jackson Browne
:
http://www.jacksonbrowne.com/

check albums?

サーチ:
Amazon.co.jpアソシエイト

Blue Horn

An album of Blue Horn, Jeff Young, the kbd player of the Jackson Browne's band involved.
"Noise For Neighbors"


無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Ikuyo Kotani and the same of the photos belongs to Tsuyoshi "ikesan" Ikegami. They may not be reproduced in any form whatsoever.
To The Top.