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私は今猛烈に後悔している。自分の根性のなさを情けなく思っている。それは「AMP 白鳥の湖」を韓国まで見に行かなかったこと。毎日毎日、Ashのかわりに後悔の念で枕を濡らしているのである。確かにSARSは恐い! お金もない! 仕事は山積み! しかし情熱だけは噴火直前海底火山のごとく漲っていたのに…そう、私はこの一言に負けたのだ。「それって追っかけ?」私は自分のドキドキを見透かされたようでちょっとバツが悪くなってしまったのである。なんて臆病者ナノ?! 2か月近くのロングランを続けた「AMP 白鳥の湖」はその後韓国公演を控えていた。その韓国公演も既に千秋楽を迎えてしまったのだが…。 白鳥の湖とは、そう、あの、誰でも知っている、タ〜〜ラリラリラ〜♪で有名なチャイコフスキーの「白鳥の湖」で古典バレエの代表作。Smashing Magでバレエ?! と言われてしまいそうだが、そう遠い世界の話ではないのです。パリ・オペラ座の若きバレリーノJeremie Belingard がビョークのPossibly Maybeにのせてオペラガルニエを縦横無尽に踊り駆け巡る作品「Rendez-vous」なんてのもあったりするし。特に「白鳥の湖」は何度となく上演されているだけあって沢山のバージョンがある。 だがAMPの白鳥の湖はそのどれにも似ていない。古典とコンテポラリーの中間地点にあるような作品だけれど、その世界観はオリジナリティ溢れたもの。AMP芸術監督および振付家のMatthew Bourneの「白鳥の湖」は、王子とオデット(AMPの場合、白鳥)の両方とも男性舞踊手による。コール・ド(群舞)の白鳥達も皆、男性。女性ダンサーも出てくるが、ここでフィーチャーされるのは断然!男性ダンサーなのだ。 女王からは母親としての愛情を十分に注がれずに育った王子、屈折した愛情を女王に抱えたまま成長。まるで現代社会の弱点のような物語で、観客の共感を誘う。 傷つきながら生きる王子は、酒に溺れ、自殺をはかろうとしたところ白鳥と出会い、生きる喜びや希望を感じていく…という、ストーリーもさることながら、舞台の端々に現代の空気を感じることが出来る。王子を追いかける皇室パパラッチが登場したり、サインをせがむ皇室マニアの衣装なんてMOGWAIの普段着。(彼等はいつでも普段着のようですが)酒浸りになった王子が追い出されるSwank Barではアフロのベルボトムが踊りまくり、ドラァグクイーンのような派手なバーの女性や、エルビス風ニーチャンの上体が高いツイストも見ていて楽しい。悲しい物語の中にコミカルなエッセンスも効いていて、バレエを観た事がない人でも抵抗なくこの世界観に入り込める。テンポもよく、飽きさせない。 かといって、バレエの美しさや厳かな雰囲気が損なわれているわけではない。傷つき、途方に暮れた王子がうずくまる中、あの曲が流れてくる。 タ〜〜ラリラリラ〜〜…♪ するとオーチャードホールは、一瞬にして人気のない夜のSt.James公園に変わるのである。舞台上だけでなく、客席にまで夜の公園の冷たい空気が流れこむ様な気がしてきて、ああ、私は今St.James公園にいるのね…と脳内変換スイッチオン。白く浮かび上がる街灯、重なり合う木の枝の影…蒼い光の中、背を向けて公園の池に佇む白鳥が厳かにあらわれる姿は幻想的で美しい。何度か観ているうちに、しまいにゃ、この音楽が流れてくると脊髄反射で目元がウルウル。 王子と白鳥のグランアダージョは音楽を目で観ているような美しさ。白鳥の王の様なザ・スワンは、いかに自分達が美しく、強く、自由なのかを王子に見せつける。そして「白鳥の世界はこんなに楽しいよ〜こっちへ来たいかい?おいで、おいで〜」と、誘うのである。 見ている私も誘われてフラフラ。それを理性で抑えて客席で我慢。ムズムズ。白鳥達の衣装も、セミヌードに狐忠信系フサフサパンツ(羽なんだけどね)に裸足。タイツ恐怖症でもノープロブレム! 顔には黒い線が額からすっと下に引かれ、オイッス! Misfitsの前髪! 目の周りが黒々と塗られたゴスメイク! にじみ出るデカダン! しかしそんな荒っぽいメイクが何故か野生の白鳥の顔に見えるから不思議。振り付けも両手を嘴のような形にしたり、高く腕を伸ばして白鳥の首の様。「鳥」そのものな動きが新鮮。羽ばたく腕の動きなども男性らしく、肩甲骨や肩、そして筋肉の表情がとても印象的。「背中でオーディションしたの?」と思ってしまう程ダンサーの背中が美しい。 そしてAMP版ではストレンジャー(黒鳥)という妖しいイケメンが舞踏会に登場する。これは白鳥と同じダンサーが踊るのだが、白鳥での優美な姿とストレンジャーでのジゴロのような姿が見事に演じ分けられている。そして、どことなくゲイカルチャーの臭いがするのもこの作品の特徴。白鳥に似た男、しかしその男自身の危険な魅力にも引き込まれる王子…次々と舞踏会の女達を誘惑し、女王すら虜にしながらも自分だけを拒否するストレンジャーに精神を破滅させる王子…ああ、なんて悲劇なのっ?! 革パンに黒いコートを翻して女を誘惑しながら踊りまくるセクシー爆弾・ストレンジャー登場!この3幕が、古典同様に舞台のもうひとつの見せ場でもある。この白鳥/ストレンジャーを踊りたがっている男性舞踊手は世界中にいる。それだけ男性舞踊手としての魅力をあますところなく引き出している役なのだ。 今回の来日公演、主役はトリプルキャストであり、Adam Cooper、首藤康之、Jesus Pastor(詳しくはこちら)という豪華な顔ぶれ。特にAdam Cooperの白鳥は既にDVD化され世界中で絶賛を浴びていて、もはや白鳥=Adamである。この役自体Adamのためにつくられてようなもので、映画「リトルダンサー」のラストに登場するのもAdamである。 (あのラストシーンでAdam扮するビリー登場の瞬間、私なぞはまるで自分がビリーのパパであるがごとく目頭を熱くさせていたものだ) DVDを死ぬ程見た私。Adamの逞しいセクシーな白鳥が刷り込まれていたのだが、来日公演のJesus Pastorの白鳥も素晴らしく魅力的であった。Adamは白鳥もストレンジャーも雄々しく、王子が憧れる様々な要素を取り入れた完璧な理想の存在。いってみれば「俺についてこい!」タイプ。 Jesusの白鳥は王子と一緒に揺れている部分が見える。客席の気持ちを代弁しているようにも見える。若々しくとても新鮮。上体を撓らせ、頭とかかとがつきそうなジュテも柔らかくて美しく、どこか甘い雰囲気でとっても艶っぽい。多分、初来日だと思う彼の白鳥/ストレンジャーを、私は3回観る事が出来たのだが、観る度に色っぽく、そして彼ならではの内因表現をモノにしたようだ。 もちろんAdamのストレンジャーも危険な香りムンムンで舞踏会の王女達のみならず、世界中のバレエファンの女性&ゲイのお兄様達をも虜にしたのだがJesusのストレンジャーもスペイン出身のラテンの血が全開!フェロモンターボ!と、また違った魅力に溢れていて、幸運にもどちらのスワンも観れた私は両手に花の心持ちであった。 今回、ただひとつ残念だったのは首藤康之の白鳥は観る事が出来なかったこと。実は、AMPの方針で(というかバレエではよくあることなのだが)キャストは当日発表という綱渡り状態。そう、チケット購入時には勘を働かせて買うしかないのである。もはやスワン中毒、更に3人ともみたーい! となったら4回なんて少ないくらい。10回見ている強者のスワン中毒なんて山程いたハズ。私だって見れるものならあと20回くらいは見たかったわ。それが出来ない甲斐性ナシ、せめて頭の中にHDこさえて、この目で見たものを保存しておきたかった! それにしても再追加公演のチケットを手に入れるために、私に寒空の下4時間も並ばせる根性を出させたのは「Jesusスワンもう一度観たい」という一念である。あのしなやかで美しい、可憐なお花のよーな、海の中をぐんぐん泳ぐ魚のよーな、つかみどころのないケセランパサランのよーな白鳥をもう一度!だったのだ。雨が降っても風がふいてもお外に出たくないナマケモノの私がそれだけの根性を出したのに、韓国遠征を断念するとは悔いても悔やみきれない。 「そうよ、アタシはスワンオツよ!」 と胸をはって何故言えなかったのか… 馬鹿!馬鹿! 公演は世界中をまわって2005年まで続く。韓国の後はNY、いつ日本に戻って来てくれるかわからないけれど、私はもう一度絶対見るつもり。実はバレエ見るのは2年ぶり。それを一気にここまで揺り戻してくれたAMPはブラボー! 是非ヘテロ男性の方にも見て頂きたいわ。おすすめよ! report by mimi. |
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