BECK @ Nihon Budokan (1st April '03)
singer, rapper, rocker & entertainer!
始まる前にずっと流れていたのはコーネリアスの『POINT』だった。以前、NMEかど
こかに「コーネリアスは日本のベックだ」とか言われていたのを思い出す。
20分押しくらいで、アコースティック・ギター1本抱えてベックが登場する。まず
は"Guess I'm Doing Fine"から。新作の『sea change』の世界を受け継いで、このラ
イヴもアコースティックでシンプルな世界で始まっていく。広い武道館の中をギター
1本と声だけで満たしていく。2曲目は最近まで一緒にツアーをしていたフレイミング
・リップスの"Do You Realize??"。3曲目の"Nobody's Fault But My Own"でアコー
ディオンのような楽器を弾きながら歌う。ベックの柔らかくて優しい声が染みてく
る。次の"The Golden Age"を1コーラスだけアコースティック・ギターで歌って途中
から幕の後ろに控えていたバンドが加わる。意表を突いた展開に驚く。

本編ラストは"Where It's At"。考えてみれば、これ以上ないくらいグルーヴィー
でオーガニックな演奏をバックに「2ターンテーブル&マイクロフォン」と歌うのは
ベックの(ひと捻りした)ユーモアとヒップホップ魂が感じられる。
そしてアンコールは"Devils Haircut"。最後はハードコアパンクのように高速
ヴァージョンで締めた。この日のライヴはあらゆる音楽を横断して、さまざまなもの
を飲み込むベックの凄まじさを改めて感じた。シンプルにアコースティックギターだ
けで武道館を満たすことができるのがベックなら、スターのパロディの気取って踊る
のもベックでなんである。決して正体を掴ませず、あらゆる壁を壊していくこと。真
に音楽の自由というものを体現したステージだと思う。ベックがいるということで勇
気付けられる。
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そしてバンド編成になって"The New Pollution"をアカペラから始めてロックぽい
アレンジに雪崩込みギターが炸裂して、今まで聴いたことがない"The New
Pollution"へ。かと思えば"Mixed Bizness"はルーズというか、タル〜いアレンジに
改造される。このタルさはもちろん意図してやっているわけでライヴになると何でも
かんでも激しいアレンジにするのでなく、タルいんだけど気持ちいい、だけど心に
引っ掛かるという微妙なツボを突くという離れ業をやってのける。
そしてこの曲のときのベックはロックスターのパロディのように踊って格好よく見
えてしまう。本当に、面白いものでベックがわざとふざけてスターやアイドルのモノ
マネをすると、歓声が上がるという。そんな皮肉を余裕たっぷりに引き受けている感
じだ。
ライヴはアコースティックな曲と過去の曲が程よく混ざっていた。イントロをブ
ルースマンのようにボトルネック奏法で弾いてから突入する"Loser"、完璧なエン
ターテイメントショウとなった"Sexx Laws"。
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終わった後のSEでマーヴィン・ゲイの"What's going on"が流れたのは、決して現
在を忘れていないということであり、とても素晴らしい。

--setlist --
Guess I'm Doing Fine / Do You Realize? / Nobody's Fault But My Own /The Golden Age / The New Pollution / Pressure Zone / Hotwax / Mixed Bizness / Broken Train / Paper Tiger
/ It's All In Your Mind / Lost Cause / Side Of The Road / Lonesome Tears / Sunday Sun / Loser / Milk & Honey / Novacane / Nicotine And Gravy / Thuder Peel / Sexx Laws / Where It's At / ---- / Devils Haircut
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report by nob and photos by saya38
なお、写真は3月31日のアコースティック・ライヴのものを使用しています。
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