JUDE @ 渋谷公会堂(2003年1月8日)
シルベットは夢を見る
夢の入口のようなSEでベンジーが登場する。そしてギターとヴァイオリンだけで演
奏が始まる。ヴァイオリンが美しく響いたとき、今回なぜ、いつものライヴハウスで
なく、ホールでのツアーなのかというのがすぐ分かる。2曲目で「街はずれ、ビルの
屋上から・・・」と歌い出して、客席が一気に盛り上がる。"僕の心を取り戻すため
に"。ブランキー・ジェット・シティが解散したあと、ブランキーの曲を演奏し続け
ることに賛否があったけど、もう今ではお客さんもベンジーも、ふっきれたようだ。
この曲の後半、ギターとヴァイオリンが絡み合い、緊張感が高まっていく。
4曲目からドラムの池畑、ベースの渡辺が登場して"カリブの海賊の宴会"。轟音が
襲い掛かってきて、空気が一変する。池畑のドラムの迫力が凄い。ギターとタイマン
勝負を挑んでいるかのよう。ブランキー時代の"ガソリンの揺れかた"で会場を沸か
す。椅子のある会場だと盛り上がりに欠けるかもと心配していたのだけど、全然そん
なことはなく、聴かせる曲はじっくり聴けて良かったのかもしれない。
この日のライヴのキーワードは「夢」だと思う。「シルベット/夢を見るのさ/涙流
すな/シルベット」。スローでリズム隊なしで始まって、それからドラムとベースが
加わって轟音を叩きだすというのは、初めは安らかに夢の中に入っていったら激しい
嵐みたいだった、という比喩みたいだ。夢はいつだって心地よくてフワフワしている
だけではなく、味気なくどん詰まりで嫌になるくらいリアルな夢もあるし
("Zowie")、重苦しく悲しい悪夢だってある("白雪姫")、高速飛ばして極限のス
ピードを夢見ているし("DEVIL")、そして最後に「夢なんてもてるかな」とつぶや
くことになる("Johnny Sherry")。もちろんベンジーお得意のお菓子ソングもある
("サニーのチョコレート")。そんな夢のいろんな形を見せてくれたのだ。
本編終了一曲前にベースの渡辺が勘違いしてステージから去ってしまうハプニング
で笑わせつつ、アンコールは、今までになくコミカルな"バスケットロードからの脱
出"。シュールで破壊的な"ジョーンジェットの犬"。そして最後が"愛"。今までさん
ざん愛はいらないと言っていた男が「愛が光さ」と歌う。それはベンジーがたどり着
いたところなのかもしれない。ヴァイオリンがホール全体を包み込むように響いたと
き、長い夢から覚めて光が射してきたのだった。
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