勝手にしやがれというバンドは、僕がお手伝いをさせてもらうより以前のMAGでその存在を知りました。お手伝いさせてもらえるようになってからも、MAGの仲間がMAG内コンテンツのDisc Reviewで「とびっきり素敵な出会い」なんて言ってるから、そこまで言うなら見てみよう...という感じで、下北沢はベースメントバーへ向かう。 この日は単独ライブではなく、Rockin.Blues.Partyというイベント(このときが最終回)で、ほかにはBLOODEST SAXOPHONEと、DJというスタイル。ライブ前はDJがボブディランやジャズナンバーなど、渋めセレクトを回しつつ、そしてBLOODEST SAXOPHONEのライブがはじまる。 12月9日がジョンレノンの命日ということもあって、一番最初の曲が「let it be」。しかしなぜか逆立ちして歌う。なにか意味があるのか、冗談なのか紙一重な出だして、ジャズスタイルの演奏がはじまりました。「陽気な格好いい兄貴ロック」なジャズスタイル。僕は特にギタープレイにずっと見とれてました。指で細かくカッティングを刻んだと思ったらジャズスケールなソロをまた指で弾く。この指で弾くことによって生まれる音がたまらない。 サックス部隊も熱と迫力とユーモアにあふれた素晴らしいセッションでした。演奏中に一人がフライパンを持ち出して、コンロに火をかけて、野菜、焼きそばの麺、肉を入れ、水を入れ、炒めて焼きそばを作り、オーディエンスにそれを食べさせたりしてたんですけど、その間も演奏も演奏のテンションは止まらず衰えず。ナイスでした。焼きそばも旨かったです。 |
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そして「勝手にしやがれ」の登場。寡黙な雰囲気で演奏が始まる。メンバーがトム・ウェイツをリスペクトしているせいもあるのか、トム・ウェイツの持つ、さびれたバー近くの路地裏で夜一人ブルースやジャズの曲を口ずさんで、くすぶれたように生きている酔いどれ天使のイメージが、彼らにも存在していた。彼らはそれよりもっと知性があって、紳士であり、パワフルな魅力を兼ね備えてました。 |
ドラムス武藤昭平のしゃがれたボーカルが、「生きてりゃいろいろあるけどよぉ、愉しくやってこうぜぇ!」といった感じに、生き生きと歌っている。 どちらかというとボーカルが入るのはときどきで、曲のほとんどが楽器隊のセッション。ロックバンドだと、ギターとベースが近寄って...といった感じに動いてジャムったりするんだけど、彼らはほとんどそういう動きはしないで、ただ演奏。 |
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しかし、目をつぶって音に集中すれば、しっかりとお互いの音を意識しあって演奏してるのがよくわかる。そのジャム具合も、ロックだと和音であわせたりするのが主だけど、ロックのように綺麗にあわせない。美しい不協和音。それがまた迫力がある。 演奏中に年季が入ってるキーボードの調子が悪くなり、一度中断。結局キーボードの調子が戻らず、電子キーボードで代用することに。 |
なんでもレコーディングの時に爆音で演奏してみたら、そのときの音がたまらなく良かったらしく、酷使しすぎたかららしい。最初はキーボード無しで再開か...?と一瞬思わせられたけど、「(ピアノの)淳一郎がいなかったら、『勝手にしやがれ』じゃないからよぉ!」と武藤昭平が言い放つ。格好いい。キーボード調整中に、アドリブで新曲を披露してみたり。 残念ながら、再開後のその電子キーボードの音が、他のメンバーの「生」の音に負けてしまっていた。調子悪くなる前はそれほど気に留めてはいなかったけど、やはりこの「音」じゃなければ台無しだ、というものがあるんだなぁとこのトラブルで感じました。 |
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