Moby at Akasaka Blitz(9th Sept '02)
あの事件の後で...
「モービー必死だな」と思った。モービーは叫び、走り回り、キーボードを弾き、ギターをかき鳴らし、パーカッションを叩きまくる。坊主頭にアフロのヅラをかぶり、DJとちょっとしたDJバトルをする。2000年のフジロックもそうだったけど、何度も「サンキュー、サンキュー、サンキュー、サンキュー、アリガト、アリガト」と感謝する。果ては、たくさんのカヴァー曲をやる。ちょっとやったものなら、パブリック・エナミー"ブリング・ザ・ノイズ"、レッド・ツェッペリン"コミュニケーション・ブレイクダウン"、ジョン・レノン"ギブ・ア・ピース・チャンス"、ほか何曲か。フル演奏したのはレディオヘッド"クリープ"、ジミ・ヘンドリックス"パープル・ヘイズ"と大盤振る舞い。サービス精神の固まりとなっていた。モービーはお客さんを楽しませるのに必死だった。観ているこちらが涙を浮かべるくらいに。
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最新アルバムである『18』は美しくスローな曲が多くて、今回のライヴはそのようなものになるものだと思っていた。ところが、登場のSEにアルバムの中でもとりわけ美しい曲の一つである"18"を使い、何曲かアルバムの曲をやったものの、ハウスあり、ロックあり、ブルースあり、ヒップホップありのモービーのオモチャ箱をぶちまけたような、お祭り状態だった。
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一曲目から"Machete"と四つ打ちが炸裂して踊らせ、次はいきなり"Go"とディスコ二連発。"Go"は91年の夏を思い起こさせ、アシッドハウスの時代から10年以上たっても全然古びた感じがしない。一転してスローでピアノが美しい"Porcelain"と続けて有名曲を前半でやっていいのかと心配するほど。だけど、そんなことには関係なく、あらゆるジャンルの音楽をやり尽くすんだと、もの凄い勢いでライヴが進んでいく。打ち込みの曲がもちろん多いのだけど、生のドラムを入れて迫力を出しているし(ドラマーは東京で生まれたらしい)、南アフリカ出身のベーシストは女の人で華やかな感じだし、ロンドン出身のDJ兼キーボードはコミカルでいい味を出し、そしてパワフルかつセクシーな女性ヴォーカルがサポートしたり、曲によってはリードを取ったりする。白人も黒人も、男も女も混じったバンドがモービーを支えているのだ。
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9月11日というのはモービーの誕生日であり、ワールドトレードセンターはモービーが住んでいるところのすぐ近くだったらしい。
2001年の9月11日をきっかけにあらわになった、全世界をひとつの価値観でまとめようとするアメリカに、9月11日という日付もニューヨークという場所も自分から切り離すことの出来ない、言わば当事者のひとりでもあるモービーは答えを出したのではないか。
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この日のライヴを「(いろんなジャンルが混在していて)流れが悪かった」という友人がいたけど、モービーは、バラバラでごちゃごちゃな世界を無理矢理に統一するのではなく、ごちゃごちゃのままそれを認めて、ひとつひとつを楽しもう、と伝えたかったのではないかと思う。それがメンバー紹介のときにほんの少しだけ"Give a peace chance"をやったモービーの忍び込ませたメッセージである。
アンコールの最後は"Feeling So Real"だった。当時はアシッドハウスと言われたもので、曲調はアッパーで今のトランスのはしりのようなものである。激しい四つ打ちのリズムと煽るようなシンセサイザーとそれを引っ張っていく女性ヴォーカルが赤坂ブリッツのフロア全体を踊らせる。最後の最後まで盛り上げるモービーの懸命な姿は、今のこの時に楽しむのはどうすればいいかを教えてくれるのだ。
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--set list--
(注:このセットリストの他に中盤で"creep"、アンコールで"Purple haze"をやった)
Intro(18) /
1.Machete /
2.Go /
3.Porcelain /
4.Another Woman /
5.Bond /
6.Find My Baby /
7.In My Heart /
8.Next is the e(TBC) /
9.Bring back my happiness /
10.Natural Blues /
11.Signs Of Love /
12.We Are All Made Of Stars /
13.Jam For The Ladies /
14.Bodyrock /
15.Honey /
-encore- /
Extreme Ways /
Feeling So Real
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report by nob and photos by nishioka
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