buttonPatti Smith at FRF '02 (26th July '02)

--その力、忘れるべからず!- part 1 --


Patti Smith
Patti Smith

Patti Smith

Patti Smith

-- SET LIST --

1.DANCING BAREFOOT
2.AIN'T IT STRANGE
3.DEAD CITY
4.BENEATH THE SOUTHERN CROSS
5.BOY CRIED WOLF
6.GHOST DANCE
7.BIRDLAND
8.PISSING IN A RIVER
9.LO AND BEHOLDEN
10.WILD LEAVES
11.BECAUSE THE NIGHT
12.PEOPLE HAVE THE POWER
13.ROCK N ROLL NIGGER
 今年こそ皆で思いきり叫ぼう。そう、何たって"People Have The Power!" である――。

今年、幸運にもフジのパンフレットでパティ・スミスの項を担当することになった私は、願いを込めてこう書いた。昨年、初めてのフジロック参戦で、グリーン・ステージ最前で見た彼女の勇姿にはとてつもなく感激した。だが、唯一の心残り。それが、この曲をやらなかったことなのだ。彼女の歌の中で最もフジにふさわしい1曲。あれからちょうど1年。2夜連続での登場なら今年こそ聴けるはずだ。

ハロー、エヴリバディ! ハ〜イ、ナイス・トゥ・ビー・バ〜ック!

 去年同様、飛びきりの笑顔で登場したパティは、黒いジャケットの下に白いTシャツ姿。 この春出たベスト盤「LAND」と同様、"DANCING BAREFOOT" でスタートだ。今夜はアコースティック・セットと聞いていたが、ステージにはドラムもちゃんと入っているし、バンド・セットとさほど変わりはない。それでも、自らがアコギをかき鳴らす"BENEATH THE SOUTHERN CROSS"など、選曲はやはりちょっとゆったりした感じ。

 夜のヘヴンは初体験の私だが、キャンドルや交錯するライトが何とも幻想的で、他のステージにはない独特の空気がある。焼きたてのレーズン・ブレッド(これが美味)など試食させてくれる店もあって、パティも「ここは本当にヘヴンね」とお気に入りの様子だ。

 本を取り出し、眼鏡をかけてウイリアム・ブレイクの詩"LITTLE LAMB"を朗読。"BOY CRIEDWOLF" へと続く。眼鏡をさっとポケットに入れ、本をバサッと床に投げて歌に入っていくのがまたカッコいい。さらに詩の力が炸裂する "BIRDLAND"は、詩の意味なんてわからない分、かえって彼女のエモーションやエネルギーの高まりだけがダイレクトにぶつけられてくる。言葉を越えるとは、正にこういう瞬間なのだと圧倒されていると、やはり気が散るのだろう。ステージ前をうろうろするカメラマンを、「あんた達の写真はもうけっこう、今夜はファンの皆が撮ればいいのよ!」と一蹴。ステージ前まで出てきて、時差ぼけだから皆からエネルギーをもらうわね、と気を吸い取るしぐさをする。

 え? これで本調子じゃないの?と感心していたら、突然の目の前が開けた。前にいたカップルが最前柵を離れたのだ。ずっとその隙間から見ていた私にとって、これはもう神様のくれた奇跡でしかない。念願の最前柵にかぶりついたところで大好きな"BECAUSE THE NIGHT" が始まる。何もさえぎるもののないところで思いきり歌った後、さらに、ダダダダダダダッ、ズンチャチャ、ズンチャ、とドラムが例のビートを叩き出す。やった、遂にフジで聞く"PEOPLE HAVE THE POWER"だ!

 皆の合唱する声と鳴り響く手拍子に鳥肌が立つ。ああ、やっぱりフジで聴くこの歌は百倍力強い。やっと、やっとここであなたと歌えるとウルウルする私に"Don't Forget!" 忘れないでとパティがさらに繰り返す。やがて手にしたエレキを激しくかき鳴らし、そこらのヘヴィ・メタ・バンドもブッ飛びそうなギンギンのフレーズ応酬から"ROCK N ROLL NIGGER"へ。遂に後方からダイヴ野郎も出現だ。私も頭蹴られるっ、と身を屈めた拍子に、最前柵のフェンスで鼻をこすってしまった。もう少しで鼻血もんだ。やがて弦をひきちぎって去っていった彼女。90分ほどのセットは、気がつけば「どこがアコースティック・セットや!」とツッコミたくなるほどの激しさで幕となった。

 1年ぶりの苗場での再会は、詩も、アコースティックも、ロックン・ロールも全開の素晴らしさ。ああ、これが明日も続くなんて、だからフジは止められないのだ。山奥ヘヴンからの帰り道の遠さも忘れ、私はふわふわと余韻の中を漂ったままだった。そう、夢はまだ終わらない。



report by ikuyo and photo by nachi.
ikuyo's works

button2002

button聴け、真の轟音を! RAGING SPEEDHORN : (6th Dec @ Shinsaibashi Quattro)
buttonガラージ・マハール、その美しさの証し Taxiride : (22nd Oct @ Shinsaibashi Quattro)
button炸裂! 揺るぎなきパンクへの信念 BAD RELIGION / The Bouncing Souls : (4th Oct @ Osaka Mother Hall)
button音楽という名の星たちが揺れた夜 〜ディスコ・ザ・モービー02 潜入記〜 Moby : (12th Sept @ Namba Hatch)
buttonその力、忘れるべからず!- part 2 - Patti Smith : (27th Jul @ Fuji Rock Festival)
buttonその力、忘れるべからず!- part 1 - Patti Smith : (26th Jul @ Fuji Rock Festival)
button歌の四次元ポケット、無限大の魔法は続く Elvis Costello : (4th Jul. @ Osaka Festival Hall)
button-その名は "ロックン・ロール" エクスプロージョン!- JON SPENCER BLUES EXPLOSION : (31st May @ On Air Osaka and 1st Jun @ Zepp Osaka)
buttonYES! THIS IS HOW I REMIND YOU Nickelback : (25th May. @ Shinjuku Liquidroom)
button美なる響きは果てしなく Haven : (30th Apr. @ Shinsaibashi Quattro)
button叫べ!踊れ!「音楽」の名のもとに The Music : (24th Apr. @ Shinsaibashi Quattro)
button笑顔にクラクラ、ハートときめく春ロック! THE CALLING : (30th Mar. @ Osaka Bayside Jenny)
button未知なる期待、大爆発! The cooper temple clause : (25th Mar. @ Shinsaibashi Quattro)
button明日何が起ころうとも Incubus : (25th Mar. @ Zepp Osaka)
button新しいのや古いの、いろいろやるよ DAVID BYRNE : (6th Feb. @ Shibuya Quattro)
button鳴らせ、王道ロック! OCEAN COLOUR SCENE : (25th Jan. @ Osaka On Air)
button心意気に惚れ直したぜ! Stereophonics : (15th Jan. @ Osaka Mother Hall)
button隙間だらけの手作りライヴがいい! Sloan : (14th Jan. @ Shinsaibashi Quattro)
button緊密度いっぱいの宇宙体験 SPIRITUALIZED : (11th Jan. @ Shinsaibashi Quattro)




無断転載を禁じます。The copyright of the article belongs to Ikuyo Kotani and the same of the photos belongs to Nachi Yamazaki. They may not be reproduced in any form whatsoever.
==>Back To The Top Page : JPN / ENG.