


-- SET LIST --
1.DANCING BAREFOOT
2.AIN'T IT STRANGE
3.DEAD CITY
4.BENEATH THE SOUTHERN CROSS
5.BOY CRIED WOLF
6.GHOST DANCE
7.BIRDLAND
8.PISSING IN A RIVER
9.LO AND BEHOLDEN
10.WILD LEAVES
11.BECAUSE THE NIGHT
12.PEOPLE HAVE THE POWER
13.ROCK N ROLL NIGGER |
今年こそ皆で思いきり叫ぼう。そう、何たって"People Have The Power!" である――。
今年、幸運にもフジのパンフレットでパティ・スミスの項を担当することになった私は、願いを込めてこう書いた。昨年、初めてのフジロック参戦で、グリーン・ステージ最前で見た彼女の勇姿にはとてつもなく感激した。だが、唯一の心残り。それが、この曲をやらなかったことなのだ。彼女の歌の中で最もフジにふさわしい1曲。あれからちょうど1年。2夜連続での登場なら今年こそ聴けるはずだ。
ハロー、エヴリバディ! ハ〜イ、ナイス・トゥ・ビー・バ〜ック!
去年同様、飛びきりの笑顔で登場したパティは、黒いジャケットの下に白いTシャツ姿。
この春出たベスト盤「LAND」と同様、"DANCING BAREFOOT" でスタートだ。今夜はアコースティック・セットと聞いていたが、ステージにはドラムもちゃんと入っているし、バンド・セットとさほど変わりはない。それでも、自らがアコギをかき鳴らす"BENEATH THE SOUTHERN CROSS"など、選曲はやはりちょっとゆったりした感じ。
夜のヘヴンは初体験の私だが、キャンドルや交錯するライトが何とも幻想的で、他のステージにはない独特の空気がある。焼きたてのレーズン・ブレッド(これが美味)など試食させてくれる店もあって、パティも「ここは本当にヘヴンね」とお気に入りの様子だ。
本を取り出し、眼鏡をかけてウイリアム・ブレイクの詩"LITTLE LAMB"を朗読。"BOY CRIEDWOLF" へと続く。眼鏡をさっとポケットに入れ、本をバサッと床に投げて歌に入っていくのがまたカッコいい。さらに詩の力が炸裂する "BIRDLAND"は、詩の意味なんてわからない分、かえって彼女のエモーションやエネルギーの高まりだけがダイレクトにぶつけられてくる。言葉を越えるとは、正にこういう瞬間なのだと圧倒されていると、やはり気が散るのだろう。ステージ前をうろうろするカメラマンを、「あんた達の写真はもうけっこう、今夜はファンの皆が撮ればいいのよ!」と一蹴。ステージ前まで出てきて、時差ぼけだから皆からエネルギーをもらうわね、と気を吸い取るしぐさをする。
え? これで本調子じゃないの?と感心していたら、突然の目の前が開けた。前にいたカップルが最前柵を離れたのだ。ずっとその隙間から見ていた私にとって、これはもう神様のくれた奇跡でしかない。念願の最前柵にかぶりついたところで大好きな"BECAUSE THE NIGHT" が始まる。何もさえぎるもののないところで思いきり歌った後、さらに、ダダダダダダダッ、ズンチャチャ、ズンチャ、とドラムが例のビートを叩き出す。やった、遂にフジで聞く"PEOPLE HAVE THE POWER"だ!
皆の合唱する声と鳴り響く手拍子に鳥肌が立つ。ああ、やっぱりフジで聴くこの歌は百倍力強い。やっと、やっとここであなたと歌えるとウルウルする私に"Don't Forget!" 忘れないでとパティがさらに繰り返す。やがて手にしたエレキを激しくかき鳴らし、そこらのヘヴィ・メタ・バンドもブッ飛びそうなギンギンのフレーズ応酬から"ROCK N ROLL NIGGER"へ。遂に後方からダイヴ野郎も出現だ。私も頭蹴られるっ、と身を屈めた拍子に、最前柵のフェンスで鼻をこすってしまった。もう少しで鼻血もんだ。やがて弦をひきちぎって去っていった彼女。90分ほどのセットは、気がつけば「どこがアコースティック・セットや!」とツッコミたくなるほどの激しさで幕となった。
1年ぶりの苗場での再会は、詩も、アコースティックも、ロックン・ロールも全開の素晴らしさ。ああ、これが明日も続くなんて、だからフジは止められないのだ。山奥ヘヴンからの帰り道の遠さも忘れ、私はふわふわと余韻の中を漂ったままだった。そう、夢はまだ終わらない。
report by ikuyo and photo by nachi.
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