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なごみ系ギターポップ祭り
ドイツのインディー・ギターポップ・バンドの来日公演。ドイツと言うとテクノや ハードロックというイメージがあったので、ギターポップというところが意外な感じ がして目に止まった。しかもこの日のライブはニール&イライザの松田岳二がギター ボーカルを務めるキュビズモ・グラフィコとノーザン・ブライトがサポートを務める。 計3バンド出演という豪華さと、「ギターポップ祭り」な組み合わせに反応して、私 はクアトロに行くことに決めた。3バンド合わせて3時間以上という長丁場であったこ の日のライブは、前半こそ客の静かさにバンドが戸惑う場面も見せたが、ラストのス ペース・ケリーが登場する頃には、ホットプレートのようにじわじわと上がっていた 会場の熱が適度な温度に達し、とてもいい雰囲気のライブが行われた。 まず最初に登場したのはキュビズモ・グラフィコ。一曲3分足らずの曲を次々と繰り 出していくのが小気味良い。途中、カジヒデキがゲストとして登場して、ボーカルを 務めるナンバーも。英語詞中心で、ストレートで性急なギターポップが心地よかっ た。 次に出てきたノーザン・ブライトを観たのは、一昨年のオアシスの来日公演で彼ら がオープニング・アクトとして出てきたとき以来だ。会場が横浜アリーナからクアト ロへと大きく変わるのも、彼らがメインのライブでは味わえない特別な感覚がある。 前回、横浜アリーナで観たときは、オアシスっぽいスケールの大きな曲が多いという 印象だったが、今回は新曲が小品っぽい感じながらもメロディーの良さがキラリと光 る佳曲という感じで、とても目立っていた。ステージのサイズと、後に控えたメイン のバンドのタイプが前回と違うせいか、肩の力が抜けた感じでさくさくと進んでいく ステージだった。 そして、いよいよ登場したスペース・ケリー。なんと全員アロハにレイを首から 下げてのご機嫌な登場。ん〜、ドイツ語の歌詞にドリーミーなギターポップ・サウン ドという普段聴き慣れない組み合わせがなかなか面白い。ゴツゴツした響きを持つド イツ語にギターポップって合うのだろうか、と疑問に思う人もいるかもしれないが、 合います!これは。と言うか、彼らの歌を聴いていると、なぜかドイツ語もフランス 語みたいに丸みを帯びた滑らかな言葉のように聞こえてくるから不思議だ。 しかし何より驚いたのが、ボーカルの人がめちゃくちゃ日本語が上手いこと。今回 の来日公演のために練習してきたと言っていたのだが、とてもそうとは思えないほど 上手い。ほとんど全ての曲のタイトルを日本語に訳して教えてくれるし、それ以外の 何気ない言葉もほとんど全て日本語でMCをしたのだ。本当に驚き。それにMCの内容も 巧みで、会場の空気をいい感じに暖めていた。ところが、ステージ上ではギターの調 子がよろしくないというアクシデントが発生。せっかくいい雰囲気で進んでいたの に、と思っていたら、繋ぎとしてキーボードのメンバーが一曲弾き始めた。アドリブ の曲でも始めるのかと思っていたのだが、なんと彼は"上を向いて歩こう"を歌い出し たのだ。しかも日本語詞で!なんてニクイ演出。いや、本当に盛り上げ上手だね、あ なたたちは。 アンコールでは曲を始める前に、スタッフ、レコード会社、そしてスマッシュに感 謝の意を告げるなど、どこまでもいい人な彼ら。曲が始まると、客と一緒に記念撮影 を始め、更には、照明を落として客に携帯電話をペンライト代わりに振らせたりと、 本当に上手く盛り上げてくれる。そして最後は、ノーザン・ブライトやキュビズモ・グ ラフィコをみんなステージに上げ、"do you wanna dance?"のカバーを披露。長い パーティーは最後まで幸せな雰囲気のまま終わりを告げた。 実はこの日ライブをやった時間は、ちょうどワールドカップでドイツが試合をやっ ていたときだったのだ。ライブ中もスタッフから途中経過を聞いたりして、本当はか なり見たかったのだと思うけれど、試合終了の時間までアンコール二曲付きでしっか りとライブをやってくれたスペース・ケリー、ありがとう。本当にナイスな人たちで した。 report by dak and photos by saya38. |