Fatboy Slim etc... @ Makuhari Messe(1st Jun '02)
テクノ・ワールドカップ!?







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エレクトラグライドから約半年、ファットボーイ・スリムがまた日本に来る。スケジュールを見た人は誰もが突っ込みを入れた。「オマエは、サッカーを観たいだけとちゃうんか!」。仕事のついでにサッカーを観るのでなく、サッカー観戦のついでに仕事をする、こんな究極の趣味と実益を兼ね備えたことが出来るのは彼が「イングランド・オフィシャルDJ」(←マジらしい)だからである。羨ましい。
今回、東京ではDJ19、石野卓球、ブンブンサテイツが登場して、さながらテクノのワールドカップ、日本vsイングランドになった。
21:00−22:30 : 【切り込み隊長-DJ19】
というわけで、まず登場したのは、DJ19。今回のイベントはエレクトラグライドの会場の2/3の広さでダンスフロアの中心にDJブースがあり、お客さんはブースを囲むように踊るのだ。最初は人がまばらだったブースの周りも、時間がたつに連れて人数が多くなってきた。基本的に四つ打ちのハウス/テクノでお客さんたちを徐々にヒートアップさせる。ピンク・フロイドの"Another Brick In The Wall"のトランス・ヴァージョンをかけたり、ニューオーダーの"Blue Monday"を回したあたりが自分の中では「ゴォォォオオルゥ!!」という感じだった。立派に切り込み隊長の役割を果たし、ブンブンサテライツボールを回した。
22:30−23:00
【日本のツートップ -ブンブン・サテライツ】
DJ19からパスをもらったブンブン・サテライツは、さらにロック度は増していた。ブンブンだけフロアの端に作られたステージでの演奏だった。去年、3回ほど観たライヴはどれも素晴らしくて「テクノとロックの融合」なんて思っていたのだけど、この日は融合どころかめちゃくちゃロックじゃん!!もちろん、ステージの上にノートパソコンやサンプラーが置かれていて、そこから音も出ていたのだけど、ステージの真ん中で仁王立ちになってベースを弾く中野とギターを弾きまくる川島の二人は日本のツートップと言いたくなるほど頼もしい感じだった。自分は始まる前にステージ最前列近く居たのだけど、あっという間に人の波に呑まれ、モッシュの渦の中に巻き込まれた。ダイヴをする人も出てくる。
この日のライヴは、ブンブン・サテライツがより生身の人間が出す音を信頼して、電子機材を肉体で組み伏せている感じだった。今のブンブンはWRENCHやKinocosmoとつながっているような気がした。ラストの"Your Reality's a Fantasy But Your Fantasy Is Killing Me"でのチャックDのサンプリングボイスがループされて、肝心の「Your Reality's a Fantasy But Your Fantasy Is Killing Me」という箇所は川島が歌う。より、自分自身の出す音の方にシフトしている、このバンドの将来は明るいのでは。
「短かった。もっともっと聴きたかった」(かほる)
「生演奏の勢いに圧倒された。格好良かった」(ゆきえ)
23:00−01:00 : 【テクノ司令塔--石野卓球】
ブンブンサテライツが終わると、人波がドーッと動いてDJブースの回りに向かう。長年日本のテクノ司令塔を務めてきた石野卓球だ。ハードな四つ打ち主体の選曲は、さらにフロアを盛り上げた。時折りお茶目なダンスをしたり、テクノ以外の曲でブレイクを作ったりするけど、ゴリゴリ押していく。『ベルリン・トラックス』の"Polynesian"なんかもかけていた。あまりのアゲぶりなのか、後の時間に体力を温存しているのか、フロアの隅では早くも脱落して座り込む人が続出。だけども、ブースの周りを取り囲む人の多さは相変わらず。2時間をキッチリ楽しませて十分なDJであった。
岩盤の出店を訪ねると高崎さんに何が売れています?と聞くと「ブンブンのTシャツ売れてますね。CDでは卓球の新しいやつ(ワールドカップのオフィシャル・アンセムのリミックス)が売れています」。
01:00−02:30
【重量級MF!?--MIDFIELD GENERAL】
さあ、日本勢は非常に素晴らしいプレイをしたが、後半戦、対するイングランドはどうだろうか。
MIDFIELD GENERALというDJが卓球に代わってブースに立つ。相撲取りみたいなガタイである。さしずめ、重量級MFという感じか。それとも、ゴールキーパーの方がお似合いか。
回すのは基本的にハウスで、マイケル・ジャクソンの"Billie Jean"やダフト・パンクの"Digital love"などもかかる。
もう一方のスペースも座り込んでいる人は多数。エレクトラグライドのときもそうだったけど、トイレに並ぶ女の子たちの長い列があった。タイ、トルコ、インドなど各国の料理が並ぶ屋台もあって、ほんのちょっとだけフジロックみたいな雰囲気。量や値段は去年のエレクトラグライドの反省を生かして手頃なものとなっていたし、早い時間から売り切れるということはなかったようだ。
カメラマンの池上さんと入り口からフロアを見下ろすと一万人くらいの人が踊ったり、寝てたり、話をしてたりしている。人口密度はエレクトラグライドと同じくらいである。
MIDFIELD GENERALも後半はハードハウスというか、トランスぽくなり、いよいよクライマックスに向けてのお膳立てが整う。
02:30−04:30
【エースストライカー--Fatboy Slim】
日本代表の青いユニフォームを着たFatboy Slimこと、ノーマン・クックが現れると、フロアの盛り上がりは最高潮になる。サッカーボールを模した大きなビニールボールがいくつかフロアに投げ込まれる。そして一曲目、プリンス&ザ・レヴォリューションの"I Would Die 4 U"がかかったとき、不意に目頭が熱くなり、涙が出そうになった。何というか、懐かしさみたいなものがこみ上げてきたのだろう。それからBPM120後半くらいのハウスで、ニルヴァーナの"Lithium"やX-press2の"Lazy"やアンダーワールドの"Born Slippy"に自分の"Right Here Right Now"をかぶせたり(知り合いによると、バリー・マニロウの「コパカバーナ」も回したらしい)大ネタも恐れず、お客さんを楽しませること第一の選曲であった。ノーマン・クックもニコニコしながら、お茶目な仕草でお客さんをあおる。はっきり言って去年のエレクトラグライドの時より良かった。「サッカーのついでにまわしたんだよねー」というお気楽なパーティーモードの方がよりよかったりするのではないだろうか。ともあれ、フロアをハッピーな感じにして終了した。
04:30−06:00
【スイーパー--JON CARTER】
そして、最後を飾ったのが、JON CARTERである。On the Floor at the Boutique交替のときにいきなりMichael Viner's Incredible Bongo Bandの"Apache"を回す。これはファットボーイ・スリムのミックス・アルバム『On The Floor At The Boutique』に入っている曲だ。
その後、なぜかこの曲流行ってんの?という感じで、ここでもマイケル・ジャクソンの"Billie Jean"がかかったり、レ・リズム・デジタルの"Disco To Disco"、アンダーワールドの"Cowgirl"などの有名ネタから、だんだんストイックな四つ打ちへ。
実はファットボーイが終わった後、お客さんの半分くらいはどんどん帰ってしまったのだけど、残っている人たちはコアなファンで、最後まで元気に踊っていて雰囲気が良い。空いたスペースでノビノビ踊る人もいる。6時頃に外に出ると、すっかり明るくなって、日差しは夏のものとなっていた。
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report by nob and photos by ikesan
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