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リキッドが揺れた!
深く、広く、熱いサウンドが怒涛のごとく押し寄せてきた。熱い。外も真夏のような暑さだったけど、その日のリキッドは、昼間以上の熱さ、そして何度も涙が込み上げてくるくらいの感動に包まれていた。Nickelbackを知ってる?名前は知らなくても、「How You Remind Me」を聴けば、歌いだしの"Never made it as a wise man"のフレーズを聴けばピンとくる人も多いはず。ただ,、いい曲だとか、ラジオでガンガン流れてる曲、それだけで見逃している人も多いはず。チケット発売後5分で完売(すごい!)の状態で、チケットを手に出来なかった人も多かったかもしれない。もったいない。本当に心の底から、もったいない! という私だって、彼らを知ったのはそれほど前のことじゃない。最初は、チャドの容姿とNickelbackというバンド名だけで、メタルの人たちだと思っていたくらいだから。そしてもちろん私も、ラジオでかかりすぎ(失礼)で、あまりに有名になった「How You Remind Me」に打ちのめされた一人。アルバムを聴いて、こういうバンドここ最近いたかな?と考えても、他に思い出せない。そう、Nickelbackは、最近にしては珍しい純粋骨太ゴリゴリ・ロック・バンド。そこに若干カントリー・テイストを感じるのは私だけでしょうか? 全世界で恐らく名曲と言われ、多くの人が彼らと共に大合唱するのを心待ちにしているあの曲をどうしても生で聴きたい。その思いだけで、リキッドに向う足も小走りになるってもんだ。 セカンド・アルバム『Silver Side Up』の「Woke Up This Morning」でライヴはスタート。早いテンポではないけれど、ズシズシとヘヴィなロック・サウンドが畳み掛けてくるこのナンバーから始まったのは、ちょっと意外だった。そして、「One Last Run」。イントロを聴いて、ハッとする。思わず叫びたくなる。うぉー、めちゃくちゃカッコイイ! スピード感申し分なく、血を騒がせ体を突き動かすギター・リフ、そして眉間にシワを寄せ歌い上げるチャドの顔。場内の気温も一気に上昇。この2曲だけ聴いた時点で、すでにこのライヴの場に居ることが感動と思えてしょうがない。 チャドがnew songと紹介して歌ったのが、「Do This」。これは、今の大ヒット・シングルを彷彿させる、壮大なメロディの曲。ライヴに行った特権というのは、こういう新しい曲をいち早く聴けたり、後半で歌った「Figured You」のように未発表の曲を聴けるところ。どちらの曲も、今後もNickelbackのサウンドが変わらずにいると安心感を与えてくれる。 「Never Again」、「Too Bad」や「Breathe」のようなノリのいい曲もゴリゴリ・ロック・サウンドでカッコイイけれど、「Hangnail」のようなじっくりとまったり歌い上げる骨太ロックは、ものすごく男臭さを感じさせ、硬派でクールなナンバー。これもまたよし。それにしても、チャドはすごく歌が上手い! これは、Nickelback特有の微妙な高低のメロディ・ラインを歌いこなせる、そこに私は感動する。そして、コツコツと音を奏でるメンバー。このバンドのロックなサウンドに欠かせない要のギターのライアン、チャドの弟でもあり寡黙にプレイする、カウボーイ・ハットが印象的なベースのマイク、そして叩き出すドラムにものすごい力強さを感じる、ドラムのライアン。ライヴの本数の多さとそのパフォーマンスの実力は折り紙つきのこのバンドは、どこを取っても、どこを切っても本当に歌、演奏共に素晴らしい。チャドとライアンのハモリがどの曲でもあるけれど、思わず一緒にハモリたくなるほどのキレイなハモリ。何よりも、Nickelbackの曲はどれも強烈に耳に残る。すぐに思い出せる。これぞ、バンドの思う壺。 アンコール。ライアンとチャドがアコースティック・ギター片手にステージに戻ってくる。まさかと思ったけど、映画「スパイダー・マン」の言葉がチャドの口から出た時に、本当にこのライヴに来て良かったと心底思った。ライアンとギターのコードを調節して始まった「Hero」。ご存知、これはNickelbackの曲ではなく、チャドのソロの曲。まさか歌わないだろう、と期待もせずにいた私にとっては、感激の言葉以外見つからない。しかも、アコースティック。シーンと静まり返ったリキッドに、ジンワリ染みこんでくる。 そして、本当にラストの曲になると、ドラムのライアンとベースのマイクがステージに戻ってくる。チャドが2人を指差して冗談で「お前とお前、クビ」、なんてところに笑いあり。もちろん、最後は「How You Remind Me」。観客の外人が、カナダの国旗を大きく広げたのが印象的。どのパートを観客に求めても、みんなどれも歌える。大合唱になる。この曲を、生で聴ける以上に一緒に歌えたことで、すべての人がこのライヴに満足、いや、大満足できたんじゃない? このバンドを知らずして今のロック・シーンは語れない、なんて偉そうなことは言わないけれど、全米では莫大な数の人々が彼らのメロディに打たれ、叩き出されるロック・サウンドに魅せられている事実は、驚くべきアルバム・セールスから明らか。どのラジオ局もこぞって彼らのシングルをかけ、どんなに人気のあるアーティストの曲でも太刀打ちできないほど、ごっそりチャートの1位を獲得していった影響力は凄まじいもの。日本ではどれほどの注目度なのかが明確にわからないけれど、今、Nickelbackのライヴをリキッドという比較的小さな会場で見られたのは、この日のライヴのタイトル通り、正にプレミアもの。締めくくりが非常に単純な言葉になってしまって申し訳ないけれど、これしか言葉がない。カッコイイ! Nickelback、彼ら自身と曲、そしてパフォーマンス。そのすべてがカッコイイ。次はみなさん、決して見逃さないように。 report by ali and photos by mari. |