Holger Czukay and ROVO @ Aoyama CAY(29th Apr '02)
この老人力を見よ!
*写真は28日のものを使用しています。
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地下鉄、表参道の駅からすぐ近くに青山CAYはある。場所柄、おしゃれっぽい感じの店が多く、この日は休日でもあり、辺りは結構賑わっている。地下の会場に降りていくと、かなり人が入っている。お客さんの年齢は幅広いし、女の人も思ったよりいる。カウンターでビールを求めてステージ最前にいくと、前座のDJである白石隆之が回しているダブの重低音が気持ち良くて、酔いと共に体を巡っていく。十分酔い
回って醒めつつあるころ、ROVOが登場する。2年連続フジロックに出場し、どちらも素晴らしい演奏でROVOは期待を裏切らない、そんな思いがあるので、気合いを入れて観ようと、体がROVOを迎え撃つ体制になる。そして実際、踊れるのに複雑なリズムを
叩き出すツインドラムの迫力、宙を舞うかのような勝井のヴァイオリン、初期ブライアン・イーノのような電子音をまき散らす益子、音をかき混ぜるようなギターを弾く
山本精一らの音が一体となると、耳だけでなく、全身で音楽を聴くような感覚になるのだ。以前のROVOは時間をかけてじっくりと頂点に持っていく感じだったけど、この日は、始めスローで途中からいきなりトップギアに入るような演奏だった。ステージ上で誰も一言も発しないけど、楽器がそれぞれ十分に歌っている、それがぶつかり合っているのだけど、それでいて力量のあるプレーヤー同士の一体感を味わえる。やはり最高。
ROVOが終わると、ドイツ人(?)のDJが回す。基本は四つ打ちのテクノでアンダーワールドの"キング・オブ・ザ・スネイク"など大ネタをかますかと思えば、ピチカート・ファイヴ"トゥイギー・トゥイギー"から、クラフトワーク"電卓"、CAN(ホルガー・シューカイがいたドイツのバンドですね)"I Want More And..."とつないでいって、そのDJの坊主頭をナデナデしたいくらい嬉しくなって、そのCANの曲で野球帽をかぶった老人、ホルガー・シューカイが登場。そのカジュアルなマッド・サイエンティストのような風貌は、おれのようなゲテモノ好きの血を騒がせる。
ステージには機材に囲まれた老人が一人で喜々として機材をいじり、たまにギターを取り出して弾くマネをしたり、ホルンを取り出して弱々しくプップップーと曲に合わせて吹く。音は、踊れるテクノ中心で、あらかじめ録音されている(CD-R?)。爺さんはそれに合わせて当てぶりをするのだ。爺さん自身がヴォーカルをとると、怪奇映画のナレーションみたいで、怪しさ倍増。時々、白いドレスを着たブロンド女性がお付きの男にエスコートされ、機材の脇に座って、フランス語や英語でヴォーカルを取る。もちろん、カラオケ状態で、録音された声とデュエットしたりする。
それにしても、この爺さんの活躍ぶりはどうだ。ぜひ名古屋のChikaさんにイラストにしてほしいくらい絵になる。CANがデビューした60年代末にはホルガー・シューカイをはじめ、メンバーは30代で、それぞれがクラシックやジャズでキャリアのあるミュージシャンだった。と言うことは、もちろん今の年齢は60を越える。こんな爺さんが新しいオモチャをいじるようにニコニコしながらテクノをやるのは凄い。まともに演奏していないとかの批判があるけど、それがどうした。爺さんが元気にステージに立ち、新しい(と思われる)音楽をやっている、とう事実に、人間の感性は年齢で計るだけでないのだ、と励まされる思いである。
そして、本編ラストに再び女の人が登場して、キラキラしたアレンジで「ニチヨウノアサー」と歌う。結構上手い日本語に聴き惚れていたけど、よく聴けばヴェルヴェット・アンダーグランドの"Sunday Moning"ではないか!"Sunday Moning"の日本語ヴァージョンなのである。ラストにこんな美しいものを持ってくるとは。そして娘と腕組んで老人ホームに帰るようにステージを去るホルガー・シューカイの姿はとても素敵だった。
アンコールの一回目は驚くほどの大音量でテクノ。爺さん、本当に嬉しそう。人を驚かすことが大好きな子供みたいだ。二回目は室内楽風の曲をいろいろエフェクターをいじって解体してしまう。でも、奇妙に美しい。三回目は高らかに管楽器が鳴り響きマーチ風のドラムの曲。爺さんはホルンを取り出して、それに合わせて吹く。笑顔で去っていくホルガー・シューカイの老人力をまざまざと見せつけられたステージであった。
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report by nob and photos by nishioka
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mag files :
この老人力を見よ! (02/04/29 @ Aoyama CAY) : review by nob, photo by nishioka
photo report (02/04/29 @ Aoyama CAY) : photo by nishioka
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