button Haven at Shibuya Quattro (28th April '02)

 

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*写真は29日公演のものを使用しています。

 

ため息のでる美しさ

 

 はぁ。今日はライブを観ながら、何度ため息をついたことだろう。そのじんわりと染み渡る目の前の美しい光景の中に、もし少しでも、迷いとか、雑念とか、あるいは失望感とか、そういう、生きていると多かれ少なかれ普通に内に秘めているだろう感情が匂うことがあったならば、きっと、ため息をつく程それらを美しいと感じることはなかっただろう。とても、真っ白だった。こちらが考えていた以上に、あまりにピュアなバンドだった。だから嫌みなくそこに在るものを美しいと感じたし、彼らは確かにhaven(安息の地)を音楽で創り出していた。

 昨年末、今までのイギリスでの発売EPを集めた日本編集盤『Let It Live』が発売されて、耳の早い人には既に注目の的だったという彼らだが、私が出逢ったのは今年発売された1stアルバム『BETWEEN THE SENSES』 が出た頃だった。1曲目の"Beautiful Thing" をストアプレイで聴いた時、うひゃっ! 誰誰?これ!?と、まるで恋が始まる瞬間みたいにドキドキドキドキした。甘酸っぱさの中に、柔らかさと不安定さといたずらな笑顔が同居していて、 何かを期待させるような、でも触ったら折れちゃいそうな、恥ずかしい言い方だけど、ほんと、そんなカンジ。その後彼らの写真を見て、おお。こんな綺麗な顔の人たちなのか。音にピッタリすぎてちょっと怖い。と思わずほくそ笑んでしまったのだが、初来日であるこの日の超満員の会場にも、やはり若い女の子の姿が多く、彼らがステージに登場しただけでさっそくあちこちから「かわい〜!」という声が上がっていた。4人とも顔がイイなんてなんかズルイ。特にヴォーカルのゲイリーとギターのナットは人気を二分していて、途中客席から「I LOVE YOU!」と言われて照れくさそうにしていたのがかわいかった。しかし、もちろん顔だけでない、驚くほどまっさらで美しいショウが、静かに、ふんわりと、そこには存在していたのだった。

 ライブはアルバムの2曲目で印象的に鳴り響いている曲、"Where Is The Love"からほんわかとスタート。はぁ。1曲目からため息。こんなにもクリアな音だとは。いや、こりゃビビる。『I'll come and find you/Sit there painted so clear/ Drifting me a feeling that I love』 というフレーズが繰り返され、そこにギターの優美で流れる旋律が乗っていくという、ある意味とてもシンプルな構成なのに、ぐるっと輪を描くようにその場の空気がギュッと包まれて、思わず1曲目からポッと頬が熱くなってしまった。曲聴いて何赤くなってるんだ私ってば。

 続く"Outside"から"I Need Someone"ぐらいまではほんの少しだけメンバー4人とも手探りな音の出し方だった気もしたのだが、"Till The End"から先は、本当にリラックスした、ナチュラルで凛々しくて、力強い演奏を聴かせてくれた。そこに何かきっかけがあったわけじゃなくて、自然とその空間に溶け込んでゆくリズムで演奏側の気持ちがフワッと広く深く軽くなっていったのが解る。もともとのメンバー間の信頼があって、気負いしないで馴染んでいって、それってすごくこのバンドらしいなと感じた。

"Lately""Out Of Reach"なんかはCDで聴いた時の、実は厚いけど何かもう1つ物足りないというか、もう2歩ぐらいジャンプしちゃってもよかったのでは!? というのが、ライブでは全く感じられなかったのが嬉しい。 havenといえば、ヴォーカルのゲイリーの、近年まれにみるまろやかなハイ・トーン・ヴォイス、ファルセット・ヴォイス、を使い分けた、まるで妖精が奏でるような細く繊細で艶やかな歌を特筆すべきだが、ライブで聴いた彼の声は、もう素晴らしく、たくましかった。 耳に残る残音の響きの美しさはきちんとそこに残しながらも、グイッと引っ張り上げる力の強さと表現力の幅広さを、その声に感じたのだった。もしCDを聴いて少しでもヤワな声に聴こえる曲があった人は、ライブで生の歌を聴いてちょっとビックリしたのではないだろうか。

(隣の人は「意外と男っぽいんだねー」と言っていた)

 そして紡ぎ出される、ナットとゲイリーの鳴りやまないギターの柔らかな旋律。 そこには物足りなさどころか、胸がギュウッと締めつけられる、新しい世界が拡がっていたのだ。はぁ。またため息。興奮しちゃう。こんな素敵な光景。なんというか、音をスルスルっと体内から出していくその佇まいや、その仕草や、その音の密の濃さが、非常に、美しいのだ。この4人は。

 客席から「日本はどう?楽しんでる?」と聞かれ「楽しんでるよ」とゲイリー。そしてひとつ深呼吸をしてから「君タチハ僕ノ天国ダゾ」などと片言の日本語で言う彼に、会場からは拍手と笑顔。

 そしてアルバムの中でも名曲と言っていい"Say Something"ではサビを皆で歌う歌う。歌っている内容はちょっぴり切ないのだが、いや、そんなことより、体が揺れまくるこのリフ。このイントロ。ゲイリーの声のいい所を随所に散りばめた、この、サビ〜ラストへの盛り上がり方。最高!! アルバムを聴いてからこんなに早く生でこの曲聴けるなんて、なんて幸せなんだろう。この場に居合わせた人たちは。

 そして、待ってました。出逢いの曲、"Beautiful Thing"へ。 ゲイリーのヴォーカルは更に月明かりに照らされたかのごとく青く静かに輝きを増し、ナットのギターは麗しく穏やかで凛として、ベースラインとドラムの鳴り方もCDの何倍もカッコよく、やばい。こんなイイなんて、ちょっと落ち着いていられないや。と思わずギュウギュウの会場を前へ前進してしまった。

 ナットはヴォーカルマイクを持たず、CDでついナットなのかと思っていたコーラスワークは、全編通してベースのイワンが全て担当していて、これまたとてもいい感じであった。

 ラスト"Still Tonight"では『Tonight〜Tonight Tonight〜♪』と繰り返される箇所をやはり会場の誰もが口ずさみ、名残り惜しげに彼らを見送ると、アンコールで"Let It Live"を聴かせてくれた。沸き起こる歓声。Let It Live。生きるんだ。そう歌うこの曲をラストに聴いたことで、ますます彼らに興味が沸いてきてしまった。短く簡潔な言葉、同じフレーズが1曲の中で繰り返されていく曲がほとんどの歌詞の中で、彼らは若者なりに直面している、生への疑問や希望や思考をきっちりと浮かび上がらせていく。寂しさを感じる曲もあれば、ぬくもりを感じる曲もある。すごく等身大な歌だと思う。

 havenが紹介される時、必ず元スミスのマネージャーであるジョー・モスが惚れ込み、ジョニー・マーがプロデュースを手掛け、1stアルバムが完成されたことが上げられるが、ライブを観て、そういう触れ込みがもしなかったとしても、音だけで充分勝負していける、息の長いバンドになっていくだろうと実感できた。そしてこんなにもピュアでさりげない心地よさを持つバンドには、本当に初めてといっていいくらい久しぶりに、出逢った気がした。

report by oyumi and photo by saya38.


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"saya38" Takahashi. They may not be reproduced in any form whatsoever.

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