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1.wheres the love
1.is this bliss |
天国のメロディ
今日のクアトロ本当に凄い客の入りだった。ステージ前のいわゆる「本気フロア」 (勝手に命名、大会場のアリーナに当たる)は客電が落ちる前から既に入り込む余地がない程の混みようだったし、その周りを取り囲む「まったりスペース」(要するバーの部分)も、もはや「まったり」とは言えないほどの数の客で埋まっていた。そう言えば、会場の下にはクアトロには珍しくダフ屋が出ていたっけ。まだデビューアルバムを出したばかりで、音楽雑誌にも過剰な取り上げられ方をされているわけでもないのに、バンドの等身大の魅力だけで早くもクアトロを軽く埋めてしまっているのだ。これは期待が高まる! そんな風に興奮していたのが開演前。そして、その興奮に彼らが早速応えてくれたのが開演直後だった。 一曲目の"WHERES THE LOVE"のイントロ、ここで私はもうすっかり引きこまれてしまったのだ。クアトロサイズのハコでは収まりきらないくらいのメジャー感とスケールの大きさをビシビシ感じる。多分クアトロで見れるのはこれが最初で最後だろう、ラッキーだな、と即座に思った。 彼らの魅力は奇抜さとか目新しさでは、おそらくない。いい意味での王道感、そして安定したメロディーの美しさだ。"OUTSIDE"も、"TIL THE END"も、"LATELY"も、みんな耳に残ったし、安心して聴いていられる。新人バンドは危なっかしさが魅力のことが多いが、彼らはステージングも堂々としていて、既に中堅バンドみたいな落ち着きさえも感じられた。 そして、そんな安定したステージの中で一番観客を沸かせたのは、以外にもゲイリーのちょっとベタなMCだった。"OUT OF REACH"の後、リラックスして観客と言葉を交わしていた彼が突然始めた日本語のMC、「キミタチハ……ボクタチノ、テンゴクデス」。なんてことない、日本のファンのためにちょっと頑張ってくれた普通のMCだ。しかし、これが受けた。私も手を叩いて喜んでしまった。それまで「アリガトウ」「THANK YOU」といった飾り気のないMCばかりだったし、このまま淡々とステージは進んでいくのだろうな、という空気が会場全体に流れ始めたところだったので、 まさに絶妙のタイミングだったのだ。確か、アンコールでもちょっと日本語でMCをしていたけれど、きっとこれが受けたのでバックステージでまたスタッフから教わったのだろう。 そして、会場がまだ「テンゴクMC」でざわめいているなか始まったのは"SAY SOMETHING"。イギリスのバンドらしい湿り気のある曲が多い中、雲の切れ間から光が差してくるような印象を与えるこの曲は新鮮で一段と際立って聴こえた。「キミタチコソ……ボクタチノ、テンゴクデス」と言い返したくなった、思わず。 本編最後の曲と紹介されて始まったのは"STILL TONIGHT"。ライブの最後を締めくくるのにふさわしいゆったりした綺麗な曲だ。じっくりと美メロに酔いしれていると、「テンゴク、テンゴク…」と、さっきのMCがまだ頭から離れていかない。バンド名をもじったわけじゃないよな、ヘブンではないんだし。もしかして、テンゴクと言ったのではないのかな。いや、そんなことどうでもいいじゃないか。目の前の綺麗な曲を素直に聴いていよう。そう思ったとき、この美しいメロディーは安息地のメロディーというより、天国のメロディーと言った方がしっくりくる、となんとなく感じた。そして、ならテンゴクでいいや、と私は勝手に納得してしまった。 アンコールは"IS THIS BLISS"、そしてシングルの"LET IT LIVE"。そう言え ば、この"LET IT LIVE"という曲は、某大型輸入CDショップの試聴コーナーで私が初めて聴いたヘイブンの曲、そう、言わば出会いの曲だ。しかし、そう言えばというくらいなので、この時点で彼らのことは全然ノーマーク。普通だなあ、というのが私の彼らに対する第一印象だった。しかし、この日はとても力強い曲として"LET IT LIVE"は私の耳に迫ってきた。なぜだかはわからない。彼らが成長したからかもしれないし、私が単にその時点で彼らの魅力を理解できなかっただけかもしれない。しかし、とにかく言えるのは、彼らの魅力を見逃さなくてよかった、ということ。だから今の時点で見逃している人、もう普通のUKギターバンドは飽きたとか言わないで、素直にチェックした方がいい、本当にもったいないから。
report by dak and photo by saya38. *写真は29日公演のものを使用しています。 |