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出番を前に、この日の対バンの演奏をファンダンゴの階段から眺めていたB.のかおりさんに、仙台、札幌、名古屋と続いたツアー前半戦の感触を尋ねると、いつもライヴのときに見せてくれる溌溂とした表情で、そう断言してくれた。 その上の段でスティックを手に、座ってステージを見ていたDr.の梶原さんに、今日は阪神に負けないくらい頑張ってください、と声をかけると、嬉しそうな笑顔で頷いてくれた。そしてそのさらに上にはG./Vo.の原さんの姿も。去年の年末から今年にかけてファンダンゴでのライヴが増えているからか、まるでホームステージに戻ってきたかのように、とてもリラックスしているようだ。 「今日も、なんかいいねん! ファンダンゴはいつも」 階段からぐるりとフロ アを見渡して言ったかおりさんの、なにげない一言が、なにか予言めいて聞こえた。 オープニングを告げるいつもの"All You Need Is Love"のファンファーレが、かお りさんの一言を暗黙のうちに裏付けているように感じた。そして、先月発売になっ たmaxi singleのカップリング曲、"蒼ざめた犯罪者"から吐き出される、コアなギター とベースの混沌としたリフとシュアなリズム。そんな強烈なTHE 3PEACEの音を包む暖 かななにかが、すでに1曲目から、歌詞や音を越えたところで漂っていた。 キャッチーな旋律とロールしながらドライヴしていく、ラヴ&ピースなTHE 3PEACE 節であふれた"Go! Go! Freedom"に"Love Songs"。いつもの、3つのピースな高密度のエネルギー体がステージ上で転がっている、という印象よりも、むしろ今日は地に足 のついたというか、肩の力の抜けた、ダウン・トゥ・アースな演奏で包んでくれる。 リズムって変わりました? なんか間というか、タメみたいなものを今日はすごい 感じたんですけど。 「そう? べつに意識してはやってへんよぉ。自然とそうなってる、ウン」 ライ ヴを終えたかおりさんが、機材を片付けながら答えてくれた。 「今日はなんかまったりとした感じで」 原さんは開口一番、ぼくが尋ねる前にそう言った。ほんと、そうですよね、梶さんのオカズが少ないんかと思いましたよ。そう言うと「いやいや」と苦笑してたけれど。 原さんはこの日、"Go! Go! Freedom"のサビを「〜春の日の夜」と変えて歌っていたけど、ちょうど春の夜の爽やかな(どこか夏の匂いを運んでくれる)風のように、歌詞や音や空気が、たおやかに、ほんとうに自然にスゥーっと体に浸透していくその感覚は、去年のフジロックのHOTHOUSE FLOWERSのステージとどこか似ている。 そしてあのときと同じように、なにか自然に、目尻と胸の真ん中に熱いものを感じたのは、"昨日から今日、そして明日へ"が歌われたとき。思わずフロアの端にいたマネージャーのなるみさんに、「最高ですね」と伝えに行ってしまう。このところの、溜りに溜った疲れとストレス(それにとりとめのない焦燥感)が、笑顔と充実に変わる瞬間だ。たぶんぼくだけじゃなく、みんなも。フロアに笑顔があふれていたから。 Newシングル"星のない空の下で"(Thanx クレジット、サンクスです)を余裕な感じで披露した後、いつもは決意表明のように聞こえるアンセム"新しい世界"も、やっぱりこの日は確信に満ちた勝利宣言に思えてしまう。新しい世界をきみと作りたい、と。日頃の愚痴や、覆い隠したクサクサしたネガティヴな気持ちが、いっぺんに吹き飛んでしまった。 今日はよかったなぁ。いや、今日も、なんですけど。ライヴの後、原さんに、かおりさんに、なるみさんに、億劫もなくそう口走ってしまった。このツアーのために作られた、3人の骸骨がデザインされたTシャツを「200年後の3ピースです」と言って笑いを誘っていたかおりさんの言葉を、半ば真に受けてしまうくらいに。 あと200年続けてください。そう言うと原さんは「じゃあ頑張ります」と笑っていたけれど。 ---setlist---
1. 蒼ざめた犯罪者 *5月に入ってツアー後半戦は九州各地、そして東京と続きます。詳しくは公式ホームページでご確認を。そのオフィシャルHP上でかおりさんは、仙台、札幌、名古屋、大阪のツアー前半戦を「今までの日本のツアーじゃ、今回が一番かも」と総括していた。みなさんもどうか体験してみて、そして感じてください。見逃さない方がいいです。ほんまに。 report by kentaro and photo by hanasan |