The Music at Shibuya Quattro (25th April '02)







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高音と陶酔とミラー・ボール
ここはどこ?いつものクアトロのはずなんだけど、何か雰囲気が違う。入り口の扉は大きく開かれていて、その先は薄暗くて白く煙ってる。っていうか、煙い。モヤモヤ煙の霧の中に一歩足を踏み入れると、まるで別世界。未知の世界。音も素性も名前すらも知らなかったバンド、The Music。そのライヴだからこそ、別世界感がより一層強まる。こういうのって、孤独感もひとしお。なんたって、クアトロは予想以上の人で、みんなはもちろん彼らを知って来てるわけだし、私が知らないって事をみんながわかっているわけでもないんだけど、なんだかポツン…ってかんじになる。暗転してもなかなかステージ上に姿を見せない。やっと表れた時の観客の喚声には、圧倒。これは、知る人ぞ知る!っていう、もしや、すごいバンドなの?
犬…。ステージに現れたフワフワの柔らかそうなカーリー・ヘアのヴォーカルを見るや否や思った感想。ガラガラ声を抜き取ったスティーヴン・タイラー…。次にヴォーカルの声を聴いて思った感想。オゥ、ロックンロール…。曲を聴いて思った感想。本当に何も知らないって怖い。こんな感想しか浮かばないんだから…。
なぜだか、The Cooper Temple Clauseとダブる。同じUKロックだからか、なぜか同じような雰囲気があるように思える。きっと両者のファンからしてみたら、全然違うよって感じなんだろうけど、UKロックに疎い私は、どうも3月に見たクーパーのステージと重なって見える。明るい調子の多いUSロックに馴染みの深い私からしてみると、UKロックのサウンドは、冬の曇り空の下を彷彿させるものが多く、The Musicやクーパーもその通りのイメージのサウンド。決して晴れ間や太陽の匂いを感じ取ることができない。その少しダークさを感じさせるサウンドの中のメロディは、一様に切なさが滲み出てる。冬の寒い日に、厚手のコートに身を包み、ポケットに手を突っ込んで、寒風が突き刺さる中身をかがめている時に、ふと一抹の寂しさをいつも覚える、その時と同じ感覚がUKロックのサウンドにある。The Musicもしかり。
ヴォーカルの、伸びのある少し高音の歌声。それがどの曲でも伸びる。"Truth"のようなもろにロック調の曲や、"People"の時の「The People」の歌詞の繰り返し部分で、天に突き刺さるようなヴォーカルがこのバンドの大きな特徴だろうと思う。それは、"Human"や"Too High"などのバラード、アコギでしんみりとした"Alone"では、そのヴォーカルはとても繊細なものに聞こえる。そうだ、あれだ、クリスタル・キングの”大都会”で、「あーぁー、果てしない、夢を追い続け〜」のあの高音で歌っていた人を彷彿させる。ちょっと例えが古すぎ?でも、あそこまで声が伸びたら、気持ちいいだろうな、と思わせる声。
このバンド、演奏に忠実というか、真面目な感じがする。それは、"New Instrumental"や"Walls Get Smaller"のインストでの、ただひたすら演奏に打ち込んでいる、無駄のないプレイで思う。悲壮感漂うギターの旋律が鳴り響き、薄暗い照明の中、踊る人々の影、回るミラー・ボール。そこは一瞬アンダーグラウンドのクラブと化したようだった。そのグルーヴ感と陶酔マジックに私は圧倒されっぱなしだった。
まだ10代の若さで完璧に人々を陶酔させるライヴと音楽の完成度。本国イギリスで大絶賛のThe Music。その音にピンとこない私は、よっぽどひねくれ者なのか、はたまた音楽的センスがないのか。他のUKバンドも、かなりの時間をかけて私は好きになっていった。なので、今回のThe Musicのライヴも忘れないでおこう。でも、今でもまだあのライヴの光景と彼らの打ち出すメロディが脳裏にしっかり焼きついているって事は…。私にも多少なりとも響いたものがあったんだ、と今実感する。
----setlist-----
Dance
Jag Tune
Truth Is No Words
Human
New Instrumental
The People
Turn Out The Lights
Alone
Take The Long Road And Walk It
Disco
----encore-----
Life
Walls Get Smaller
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report by ali and photo by hanasan |
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