button The cooper temple clause at Shinjuku Liquid Room(27th March '02)

 

 

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なお、写真は26日分を使用しています。

 

狂気の固まり

 

 これはもう、[狂気の固まり]と呼ぶ他ないだろう。こんなライヴ、やろうと思ってできるものじゃない。自然な形で心の奥から吐き出されるフラストレーション。それが原動力となってライヴを作りあげてるんだろう。だってこの緊張感...。

 人々の間では彼らの昨年のFuji Rockでのステージの評価は低かった。事実、その要因は機材のトラブルであったり、彼らの体調、それに暗闇のないステージという普段の彼らのライヴでは起こりえないものが一気にこの異国の地で発生してしまった、という感じだったからだ。だからこそ、今回の彼らのツアーに期待していた人も多かったことだろう。アルバムを聴いて再認識した人も多いだろう。この日のライヴは、そんなリスナーの期待をも彼らが空中になげたタンバリンのように高く飛ばし、そして見事にぶちまけてしまうような感じだっただろう。いい意味で予想を反する、ある意味予想不可能な、まさにどぎもを抜かれるようなライヴだった。

 私は彼らのライヴを見るのは5、6回目だが、初めて彼らのライヴを目撃した人はまぎれもなくその非現実的な目の前の光景に目をうたがっただろう。彼らのライヴを数回体験したことのある私でさえ、口をポカンをあけながらステージのどこを見たらいいのかわからなくなるぐらい、そのひとりひとりの壊れように目をきょろきょろさせていた。なぜなら彼らの[フラストレーション]というものが、いい意味で以前よりも拡大していて、それが大爆発を起こしているように感じたからだ。私は少し不安を抱えていた。彼らはここのところツアー、レコーディング、ヴィデオ撮りの繰り返しで、彼らの最大のはけ口であるライヴそのものが彼らにとってのフラストレーションの一部になってはいないだろうか、ということ。だが、彼らにとってのライヴとは本当の意味でのストレス発散であり、最大の表現の場なんだな、と再確認した。にしても、あの壊し方、壊れ方、きれ方はすごすぎる。

 まずヴォーカルのBen。1曲目か2曲目で一つ目のタンバリンをおじゃんにしてしまい、ある曲の時ではドラムの横のアンプに登り、また別のタンバリンを叩き付け、ぶっ壊す。タンバリンがなかったらマイクスタンドを床に叩き付ける。ビールの缶をタンバリンでぶっつぶす。もう見ててこわいくらいに無機質な破壊を繰り返すのだ。それでもBenは曲と曲の間にはカンペを見ながら得意(?)の日本語を披露したりする。イギリスのライヴではほとんど客とのこういったコミュニケーションをとらない彼だが、日本では笑顔を見せたり、客の言葉に反応していたりしていた。余裕があるのだろうか。

 その反対に始終張り詰めた空気の中にいたのはベースのDidz。彼はいつもはもっと余裕があるように見えるのだが、今回は初めから最後までいつものクレイジネスに一層輪をかけたきれ方でステージを暴れまくっていた。ベースは仁王立ちで弾き、[踊り]とは呼べない暴れ方を披露し、時には床に寝転がりながら客を凝視している。そしてWay Out Westでは向かって左側のスピーカーの上に立ちベースを演奏。ステージの上に戻ってきたと思ったらタンバリンをベースにこすりつけている。まったくわけがわからない。本当に彼の行動は予想がつかなすぎて、クレイジーすぎて、向こうからの大量の狂気にこっちは笑うしかないし、時には一緒に叫ぶしかない。本気のクレイジネスなのだ。

 きっと彼らのライヴという観念には、決まった形やルール、そして正解というものが存在しないんだと思う。とにかくどれだけ外にだせたか、狂気を送りだせたか、壊れたか、それだけだろう。もし機材がトラブったとしてもそれを別のフラストレーションに変えて発散すれはいい。表現すればいい。そして客に今まで見たことないものを見せる。体験したことないものを体験させる。

 一時間ちょっとのライヴだっただろうか。とにかくあっという間だった。もう6人の動きを見るだけで忙しかったし、その本気なクレイジーぶりに驚くしかなかったし、そんなこんなで忙しくしているうちにあっという間にこの日のライヴは走り去ってしまった。これはくせになるぞ。このバンドのライヴは本当に、絶対に中毒になる。体験すればわかります。

report by eri and photo by mari.


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Marimi "mari" Horimoto. They may not be reproduced in any form whatsoever.

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