buttonOzomatli at Shinsaibashi Quattro(17th March '02)

細胞と宇宙がこのリズムを知っている

Ozomatli
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01. Dos Cosas Ciertas
02. O Le Le
03. 1234
04. Pa Lante
05. Eva
06. Timido
07. Vocal Artillery
08. Rachmon...
09. Cumbia De Los Muertos
10. DJ Snowby's Solo
11. Lo Que Dice
12. Chango
13. Jiro's Tabla Solo
14. Super Bowl Sundae
15. Guerillero
16. Saturday Night
17. Como Ves
18. Ranch
「(星条旗の)青と赤と白よりよっぽどいいよ」

 去年の10月の日曜日、爽やかに晴れ渡った朝霧高原のステージ脇で、ベース奏者でリーダーのWil-Dogは、富士山を眩しそうに見上げながらそう言ってくれた。前日の晩のステージで、《Give Peace a Chance》と記した黄色いリボンをメンバーが着けてくれたことに、お礼を言ったときだ。

「アメリカの今の状況は狂ってる」

 もちろん9月11日以降を指してのことだ。それから彼は自嘲気味に大声で叫んだ。

「Yankee, go home!」

 Wil-Dog自身白人なのだが、OZOMATLIのメンバーはそのケイオティックな音楽性と同じように、白人、黒人、ヒスパニック、そして日系とバラエティーに富んでいる。LAで、労働闘争的にある建物を不法占拠して居座り、そこでジャム・セッションを繰り返したのがOZOMATLIのルーツだという。取り巻く現状を打開するため、そして自分たちのアイデンティティーを築くために、人種やジャンルに関係なく、ひたすら音楽に打ち込んでいたのだろう、とそんな想像をしてしまう。

 その辺りの経緯やメンタリティは、UKエイジアンのコミュニティから始まったASIAN DUB FUNDATIONや、バスク解放運動と密接に繋がったFERUMIN MUGURUSA DUB MANIFEST、それにイタリアのプロレタリア・パンク・バンド、BANDA BASSOTIによく似ているのだが、そこは西海岸の気性というか、シリアスな怒りや政治性よりも「毎晩がパーティー!」ってノリだったんだろうなあ。 人生はハードさ、でも楽しまなくてどうするんだよ? そうさらりと、でもありったけの力で語りかけられているような気になるのだ。

 そんなOZOMATLIのギグにはいつも、なんだかファミリー・パーティーといったリラックスした雰囲気と、『チームとして一致団結して』最高の結果を目指す、といったようなスポーティな情熱に溢れていて、まるで『ハメルーンの笛吹き』のように、ぼくたちオーディエンスをそのカオティックな渦のなかに巻き込む。

 この日のクアトロでのギグでも、開演30分前だというのにメンバーが普通にフロアを、そして同じパルコの地下にあるVirgin Megastoreをウロウロしている(笑)。OZO初体験だった知人が "Embrace The Chaos" のジャケットを指差し、「さっき、この人そこ通っていったよぉ」と目を丸くしている。「彼がギターのRaulで、(Virginの赤い袋片手に)あそこに来たのがWil-DogとUlises、ステージにいるのがSheffで」と教えると、彼女はジャケットとサインペンを手に走り回る。ギグが始まるまでには、ジャケットにはほぼ全員のサインが書かれていた(笑)。  7時を10分ほど過ぎて客電が落ち、暗転に紛れて、マーチング・ドラムにサックスにトロンボーンにホイッスルにその他の鳴り物を手にした、さっきまでフロアをウロウロしていたOZOMATLIの面々が、ロビーとフロアを分けるドアの前に集まり、まずは輪になって手をかざし合う。「ワン、ツー、スリー、フォー!」 全員でかけ声をかけた後、始まったぁ! 怒濤のサンバのような、ありったけのリズム。そこから先はねぇ、もう「あー、楽しいー!」しか言いようないんですがね‥‥。とにかく体験して、そうすればわかるから、と。うん、絶対。

 オーディエンスを引き連れたOZOMATLIの面々は、太鼓やパーカッションを打ち鳴らしホーンを吹き吹きフロアに移動。そしてお約束、カリビアンな旋律の"OZOMATLIのテーマ"(?)で「オゾマ〜リ! オゾマ〜リ!」の大合唱。メンバーがステージに上がりひとしきり『アンプラグド』で演奏した後、「What's up, Osaka !! 」の雄叫びとともに "Dos Cosas Ciertas" 。Asdruの乾いたヴォーカルで始まった情熱たっぷりのダンサブルなラテン・ナンバーが、間奏で生音ドラムン・ベースの怒濤のビートに乗ったKanetic Sourceのラップに変わるのも、アルバム以上に違和感なく、ラテン、ロック、ジャズ、ヒップホップ、ファンクがオーガニックに融合した、音のカオスに包まれる。

 この旋律は、このリズムは、人種も民族も超えたところ、意識のどこかで、いやぼくらの細胞が知っていて、細胞の一つ一つが踊り出しているみたいだ。極彩色の曼陀羅のような音のシャワーが降り注ぐなか、そんなことを、ふと感じた。

 次のジャジーでアーシーなブラスとリズムに導かれた "O Le Le" では、ゆったりとしたダウンビートな演奏が、 アフロ・ヘアの Kanetic Sourceが「オーサカ、ジャパン!」と堰を切ったようにライムし始めると、一転、ギル=スコット・ヘロンを彷佛とさせるような強烈なジャズ・ファンク・チューンになり、そこに「オォ〜レレ〜、オ〜ラ〜」と哀愁のコーラス、Asdruのスキャットが絡みつく。「Everybody,clap'ya hands ! 」とKaneticが煽って、オーディエンスの手拍子まで、まるでパーカッションの一部にしてしまう。

 「フジロックで見た人いますかー? 朝霧は?」とJiroさんの呼び掛けにフロアの半数以上が答えたのを見て、満足そうに「ヨーシ! この次の歌の名前は‥‥イチ、ニイ、サン、シーッ!!」 もちろんサビではみんなでイチ、ニイ、サン、シーッと声を上げて指をかざす。「次の曲はユニヴァーサル・ラヴについて、みんなお互いに愛しあうことについての歌だよ」とRaulが紹介してくれて、カラッとした陽気なウェストコースト・サルサ・ナンバーの "Pa Lante" 。そう、まさにOZOMATLIのサウンドは"The Music Of The Universe" 、大袈裟だけど、そう形容したくなる。そんな包容力に溢れている。Raulのトレス・ギターの熱い演奏がまた、そう物語っている気がした。

 「Hip Hop 好きな人は?」と始まった "Vocal Artillery"(歌声の大砲)では、フロアを "Left Side"、"Right Side"、そしてセンターの "Ozomatri Side"に分けて、Kanetic、Justin、Wil-Dogがお馴染みの《オゾ・ステップ》を踏みながら左右に中央にステージを動き、オーディエンスの「ホーオ!」という合の手を煽る。フロア全体を巻き込んだ演奏が熱狂の内に終わると、再びJiroさんがセンターのマイクを取った。

「次の曲は‥‥ニューヨーク、アフガニスタン、戦争で苦しんでいる人々のため‥‥オゾマトリは戦争を反対です! みなさんピースサインをあげろっ!! 」

 みんなが一斉に掲げたピースサインが、薄暗いフロアに灯ったキャンドルのともし火のように、ゆらゆらと明るく揺らめいているようだった。ほんとうに。そんな光景のなか、シンプルなサンプリング・ビートに、Ulisesのクラリネットが、深くて静かで官能的なアラビア音階のメロディを奏でる。単純だけど、ビートにニューヨークを、そしてUlisesのソロにはもちろんイスラムを連想してしまう。その2つが融合した音のどこにも違和感はなかった。演奏に合わせて、どこからともなく「オ〜ゾォ! オ〜ゾォ!」の声があがる。その声はすぐにフロア全体に響き渡った。Wil-DogがAsdruが、嬉しそうに何度も笑顔を見せた。

 コロンビアのリズム、クンビアのイントロダクションと「クンビャア〜、クンビャア〜」と囁くようなコーラスで始まる "Cumbia De Los Muertos" は、曲の半ばにきて、ジャム・バンド(と呼ばれることに彼らがどう思っているか知らないが)の真骨頂とでもいうように、ゆったりとしたレゲエのリズムに漂う、ダビーな各パートのソロへと展開するのだが、ベース・ソロのときは「Dog, Wil-Dog, Dog, Wil-Dog」と、ギター・ソロのときは「Pachco, Pacheco」とフロアから声があがる。そんな一体感は最後の最後まで、OZOMATLIの面々がオープニングと同じように、再び太鼓やホーンを手に手にステージを降りて、第九やオレ〜オレオレオレ〜、カラスの勝手でしょと、フロアの輪の中心で『祭り』を締めるまで、一度も途切れることなく続いた。

 だから、いつもなら客電が上がり、BGMが流れ出すとそそくさと帰るぼくを含めたオーディエンスが、OZOのメンバーが去った後も執拗にアンコールを求めて立ち去らないどころか、ずっと気勢を上げ続ける始末。「清掃しますので速やかにご退場願います」というアナウンスが流れて、やっと声は止んだのだが、それでもみんな、名残惜しそうにその場に佇んで、「楽しかったぁ」 「楽しかったねー」という言葉を交換している。だって仕方ないやん。それが『祭り』の後やから。すると、すっかり落ち着いたOZOMATLIの面々がフロアに出てきて、開演前と同じように、みんなと和やかに談笑していた。

 家に帰ると、テレビではイスラマバードの教会で起こった爆弾テロのニュースが流れていた。犠牲者のなかには5歳の少女がいた。落差が激しかった分、こんなに一人でいる夜が不安に思ったのも久しぶりだった。ぼくたちはまだ、この憎しみの連鎖のなかにいるんだろうか?

「愛するの反対は、憎しみじゃない。無関心だと思うんですよ」

 NGO《風の学校》の主催者で、パキスタンで、フィリピンで、そしてアフガニスタンで、井戸を掘って、干上がった地に水の恵みをもたらすことに半生を費やした故中田正一さんの言葉を、ふと思い出した。《Give Peace A Chance》の黄色いリボンは、なにを変えたんだろうか?  この日のピースサインは?

 それから、シンプルなビートとクラリネットの音色を思い出した。二つの対極の世界の狭間に、ぼくたちの日常があるような気がする。そして、憎しみや恨みの対極にこの日のOZOMATLIのような音楽があって、たぶん戦争やテロの対極の世界が、グラストンベリーやフジロックなのかもしれない。そんな気がする。いや、そう信じたい。

 細胞と宇宙がこのリズムを知っているのだ、と。だから音楽は強い力になるのだ、と。楽しさは確信なんだと。

 ピース。


   * Thanks to... Ms. Kotani.

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