Wrench at Shinsaibashi Quattro(2nd March '02)
Wrench Wrench Wrench Wrench Wrench Wrench Wrench

 

踊りまくれ

 

 床が波打つようにゆれる。客席の揺れにあわせて私の体ごとカメラのファインダーがゆれる。ステージ上を激しく動くWRENCHのメンバーを目で追うだけで精一杯。心斎橋クアトロが異空間に変わっていく中で、私だけ現実に取り残され足下の揺れに四苦八苦している。

 東京からの道のりをずっと、WRENCHの最新アルバム『CIRCULATION』を繰り返し聴いてきた。リピートを繰り返す程に1曲1曲ごとの格好良さに気づかされる。高揚感に満ち溢れているこのアルバムを聴いているとジェットコースターが頂点へと昇りつめていく時のような、ドキドキとワクワクが止まらない感じになる。

 その先の頂点に達した瞬間に頭がからっぽになって叫びながら落下していくときの、あのジェットコースターの快感と同じように(ジェットコースター好きならわかってくれるかな?)頭がからっぽになって踊りまくってしまうWRENCHのライブを想像して胸が踊るのである。

 WRENCHのライブで踊らされてしまうのは、プリミティブな衝動に近いと思う。音/リズムによって鼓動を呼び起こし、大地を踏みしめて天に向かって飛び上がり、繰り返し、飛びはねる。神のいる天と魑魅魍魎のいる地を往復するうちに我を忘れて、魂(のようなもの?)を解き放たれる。太古の人間の踊りについてそんな説を聞いた事があるのだが、WRENCHのライブで踊っている時は、まさに「踊り」の源泉をたどるような感覚がある。

 プリミティブと言えば、WRENCHのVoのSHIGEちゃんの風貌とパフォーマンスはシャーマンのようであり、実際、「時空自在」や「超越空間」などの言葉を使った歌詞などで伝わる彼の世界観はシャーマニズムに通じる。一方で、WRENCHは、かって聴いたことのない斬新な曲を次々と生み出す。WRENCHのサウンドを表す際に「進化」という言葉が多用されている。WRENCHはその時点で最高に格好良い曲を作った上にさらにまた格好良い曲を作ってしまう。常に最高地点を保ちながら自分達を自分達で越えていくあり様はまさに「進化している」と言うのが適している。

「進化」を英訳すると「evolution」なのだが、むしろ、WRENCHについては「evolution」の持つ意味をすべて当てはめても良い気がする。

evolution=「発展」「進化」、(光や熱の)「発生」「放出」、(ダンスなどの)「旋回」

 ただ、こうやって意味づけしたところで、「意味求めるほどに説明はいらない意味」(from "Chill Chill me Chill ")なわけで、実際にWRENCHを体感してみないと、そのevolutionはわからないかもしれない。「体感こそリアルな情報さ」(from "無条件")と歌っている彼らのLIVEでは高揚感やGrooveといった体感で伝わるものが爆発しそうなほどに放出される。

 高揚感で高まったテンションで飛び跳ねる人々のその興奮が足下の揺れを通じて感じる。 WRENCHがクアトロという空間ごと異空間へと変えていく様子をカメラにおさめようと揺れに抵抗して足を踏ん張っているのは心身ともにしんどい。写真を撮ることもレポートを書くことも、いつものように頭を空っぽにして踊っていては不可能なのはわかっている。 だからとは言え、WRENCHのライブで踊りまくらずに過ごしてそのライブの格好良さを語る自信は私にはない。脳の支配から解き放たれて踊る事こそがWRENCHのライブを体感する術ならば、脳の支配をふりはらい床の振動が伝わるこの揺れる体に委ねて、ただただシャッターを押すしかない。

 終演後の会場は、紅潮した顔の人々が汗だくになりながらも楽しそうに着替えたり水分を補給していたりしていた。そんな光景を見ると、やっぱり、私も思う存分踊りまくりたかったなぁ...と羨ましく思ったりした。でも、踊らない時の体感と踊った時の体感に、違いはあっても差はないのだ。私自身の体感は私自分にしかわからないものだから。
 結局、この写真も文章も、心斎橋クアトロでの私の体感を表したものでしかない。 WRENCHに興味があったら是非、LIVEを体感しに行ってみて欲しい。WRENCHの今回のツアーの最終日は、3/14の渋谷AX。その会場のどこかで私は踊りまくってると思う。

report and photo by saya38.


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