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じんちょうげの香りと…
Jimmy Eat Worldってバンドのサウンドは、癒しに近いものがあると思っていた。スノーボード映画のサントラで、Foo FightersやEVE 6、SUM 41やAndrew WK、Handsomedevilといった面々が、こぞってポップな曲を寄せている中で、Jimmy Eat Worldは落ち着いたスロー・テンポの曲を聞かせている。"Hear You Me"、これが初めて聴いた彼らの曲だった。その後聴いた来日記念盤『Good To Go EP』でも同じく。ずいぶんと大人しい人たちだ。そして、私の彼らに対する先入観は、穏やかなサウンドを奏で、肩の力を抜いてくれるようなサウンド。または深い眠りへと誘うサウンド。というわけで、今回癒されに行く。この感覚でリキッドへと向かった。勝手に作り上げた先入観でごめんなさい。 思いのほか、リキッドは溢れんばかりの人でパンパン状態だった。大袈裟だけど、入りこむ隙もないほど、といったくらいギッシリ。なんとか人の頭に邪魔されず、背伸びもせずステージが見渡せる所まで到達。本日の立ち位置確保。セット・チェンジの合間というのは、本当に退屈。この日BGMでかかっていたのが、WeezerやAndrew WKの"Party Hard"、そしてなぜだか音量がでかくなったThe Strokesの"Last Nite"。こう知っている曲がかかると、そんなに退屈な気分にもならない。Weezer!そう、私は誰かとJimmy Eat Worldが被っていたんだけど、そうだ、Weezerだ。 「今日前行って飛ぶの?」「いやー、始まって気分が高ぶらないとわからないよ。」と隣の男の子の会話。え?飛ぶ?飛ぶってダイヴ?いや、まさか…。 1曲目"A Praise Chorus"が始まった瞬間、会場の温度が一気に上昇。そして私は圧倒。清々しいロック・ナンバーが続く。違う、私が知ってる(と思い込んでいた)Jimmy Eat Worldじゃない。こんなロックでポップな曲をやる人たちだったなんて!そんな爽快な曲に乗せて、会場の内のオーディエンスも激しくもなく、かといって立ち尽くしているわけでもなく、丁度いい程度に体を揺らしてる。気持ちいいほどの軽快なサウンド。 見ると、ダイブをしている人がいる。それもあまりにゆっくりと流されている。なんでもダイヴするんだな、最近の人たちは。体の大きな外人さんが何度もダイヴを繰り返す。ゆっくりと前方へと流され、でも上にいる彼は上機嫌。会場内、空調を切っているのか、人の多さでか、非常に熱い。熱くて動いていない私も汗が流れ、クラクラしてくる。 キーボードに女性がいる。あれが、レイチェル?彼女の涼しげなヴォーカルとジミーのふんわりしたヴォーカルがハモる。春が近づいてきて、毎年同じ花の香りが近所を歩いているとしてきて、ふと懐かしい思いに浸る時がある。そんな春が近づいた頃を思い出させる、懐かしい花々の香りを漂わせるような、優しい透明感のある曲の数々が続く。それが、まさに私が癒しと表したJimmy Eat Worldの世界。 "Softer"では、エモ・バンド特有の、繊細さとメロディアスな温かさが場内にフワーっと広がる。アンコールは"The Middle"。そしてかっこいいと人気の曲"Sweetness"で締めくくる。全体的にウットリと、そして軽く涙腺を緩ませる、優しくて包容力があり、かつ熱さの伝わるライブだった。 私の先入観はあながち間違いでもなかったようだ。ジミーのヴォーカルは、どの曲でもふんわりしていて、気持ちがいい。じんちょうげの花の香りが漂ってきた時に、ホーッと肩の力が抜けて穏やかな気分になるように、Jimmy Eat Worldの曲も、清々しく軽い気分にさせてくれた。一足早い春の訪れのようだった。
--- set list---
PRAISE --- encore ---
MIDDLE
report by ali and photo by hanasan
*なお、写真は25日のものを使用しています。 |