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--風が吹いた!--
オーディエンスの期待感で窒息しそうな19:00すぎ、お決まりの"オイコール"にちょっと違和感を覚えるほどラフにメンバーが登場。最後にキャーと高音ノイズが響き渡るとボーカルのブランドンが現れた。白いシャツに黒いネクタイ姿、うひゃぁ〜やっぱりカッコイイ!
間近で見ると、均整のとれた身体とライトに映し出される顔が本当にキレイ。隣の男の子も「カッコよすぎ!」と何回も繰り返す。目の当たりにするまでは、フロントマンが男前すぎるとバンドを正当に評価する邪魔になるのでは? とも思っていたけど、間違っていた。"こんな男になりたい"という指針をしめすスタイルがあることはやはり、このバンドの魅力のひとつだと思う。
開始から、しっかりと厚い演奏力でグイグイとバンドの勢いに乗せられていった。私は車をもってないけど、3rd『Morming View』はドライブに似合うと思っている。アルバム全体に広がるオープンマインドな自然体の中にスコーンと抜けた疾走感が加わり、曲の心地よい流れに身を任すと最後には光る道筋が見えるような感覚につながる。音を聴くと、なんとなく壮大な風景が浮かび上がってくるんだよね。そして、その感覚はライブでも同じだった。演奏に導かれて高揚していく心と身体を、ブランドンの伸びる声がその次の高みへと運んで解放していく。少し冷たく、それでいて爽やかな風を感じているような気持ちよさと力強さがそこにはある。それは彼等を生んだカルフォルニアの空気がそうさせるものなのだろうか?
音に身を任せながら"アメリカって広いんだろうな"なんてフッと考えていたんだけど、大きな土地に多様な人種が共存する文化のクロスオーバーは、受け入れる側が心を開けば世界を身近させる。民俗楽器やリズムを取入れたりする単純なミクスチャーではない、ルーツも歴史も飛び越えた垣根のなさが、このバンドの大きさと気持ちよさを感じさせるのかもしれない。
私にとってのクライマックスは中盤のアコースティックセットだった。セット2曲目に演奏された"Drive"。マイクのギターで、ひとつひとつの言葉を噛みしめるように唄うブランドン。その透き通った声が身体を吹き抜けてサァーっと鳥肌が立つ。サビはみんなの大合唱「So whatever tomorrow bring,I'll be there」。彼等のメッセージは単純でわかりやすい。ともすればダサくなってしまうストレートなメッセージを素直にとらえ、明日への勇気へとできるのは、一貫した姿勢と美しいメロディがあるからかな。気持ちよすぎて、ちょっと泣きそうになった。
バンドのメンバーが戻った終盤は、キッズたち飛べ!とばかりにイキのいい曲で一気に爆走。ちょっとハイパーな"S.C.I.E.N.C.E"からの曲などを息をつかせずたたみかける。DJキルモアのスクラッチが小気味いいアクセントとなって飛び跳ねる私の足も軽い、軽い。そして彼等は、投げキッスと笑顔で消えていった。「see you soon」という言葉を残して...。
アンコールを求めるオーディエンスの声が響く。しかし、彼等は現れなかった。当然、アンコールがあるものの考えていた私たちに幾許かの消化不良が残る。(実際、セットリストには"Pardon Me"などの曲が予定されていたそうだ。)1時間弱のライブに「不完全燃焼」と感じたオーディエンスも多かったようにもみえた。この日、ブランドンは風邪をひいたかなにかで体調不良だったらしい。(後日予定されていた名古屋と川崎は中止となった。)確かに声の伸びが本調子でところもあったし、一部キーを下げて唄っていたようでもあった。けど、だからって満足できないライヴだったか?
いや、そんなことはない。深刻な体調不良をも感じさせず、まっすぐに向かってくる音を私は十分に堪能できた。その時の状態が映し出されるのがライヴというものだと思う。私が彼等のファンだから甘いのかもしれないけど、今の状態でベストを尽くす姿は心に響き、そして音楽となって感動させた。ただ、やはりアナウンスはするべき。あれだけの人たちが長い時間アンコールを期待して待っていたのだから。
また次に逢える日を、「see you soon」という言葉に期待して待っていたい。
reported by uramasa and photo by ikesan. |