Brahman @ Akasaka Blitz(24th Feb '02)
1時間30分の愉楽
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アンコールが終わって、メンバーが去り、ステージのスクリーンに今回のツアーの様子を収めたビデオが映される。そして映画のエンドロールのようにこのツアーの日時と場所がテロップで流れていく。そのBGMとしてスペイン・バスク出身のアライツ・エタ・マイデルのさわやかで明るい歌声が会場に響くと目頭が熱くなってきた。多くのお客さんはフロアに残り、立ちすくんでスクリーンを見つめている。あのライヴのあとなので、なかなか体が動かないのだ。こんな壮絶なライヴを観たことあるだろうか。
赤坂ブリッツの外はまだ寒いけど、中に入ると例によってフロアが白く見えるくらいTシャツにタオルのお客さんが大勢いる。ずっとインドというか、中近東ぽいアンビエントなSEが流れて19時を30分くらい回ってようやく会場が暗くなり、いつものオープニングSEであるブルガリア民謡の「お母さん、お願い」にフロアのお客さんは凄まじい「ウォォォーッ」という唸り声で応える。そして、ギターのKOHKI、ベースのMAKOTO、ドラムのRONZIが登場する。KOHKIがギターを弾き始める。最初はスパニッシュみたいだなと思いだんだん中近東ぽくなって、そして聞き覚えのあるフレーズへ。「あっ!」と気づいた瞬間、RONZIのドラムが力強く鳴り響く。"TONG FARR"だ。「最近ライヴで聴いてないなあ」と思っていた曲がいきなり1曲目だ。TOSHI-LOWも登場してフロア前方はすでにぐちゃぐちゃ。この曲は、どうしても巨大な石仏を連想してしまう。いきなりブラフマンの世界に連れて行かれる。間髪入れずに2曲目は"BASIS"。このつながりは非常に格好よかった。4曲目の"GOIN' DOWN"のキレとスピードも凄い。
この日はツアーの最終だけに、メンバーも持てる力を全部音楽にぶつけていた。TOSHI-LOWの飛びまくり、投げまくり、走り回りという暴れっぷりも凄かったけど、MAKOTOもベースを弾きながらの暴れ方は凄かった。RONZIのドラムは限界まで振り切れてしまうんではないかと思うくらい迫力あったし、KOHKIのギターは鋭い。去年の8月以来のブラフマンのライヴだけど、おれが目を離した隙に何が彼らをここまで変えたのか?このツアーの最中に、スペインのバスク地方でライヴをやったとか、今度イタリアでツアーをするとか、積極的に世界に触れていくことで一回り大きくなったのかもしれない。
"時の鐘""ARRIVAL TIME""ANSWER FOR"の光と影、静と動があるドラマティックな曲は、やっぱりライヴで体験してこそ味わいが深くなるし、"BEYOND THE MOUNTAIN"の津軽三味線を思わせるリフも何度聴いてもいい。"NEW SENTIMENT"、"DEEP""SEE OFF"のキメでみんなが合唱するの曲もバンドとフロアの息がピッタリだった。こういうブラフマンならではの曲を聴いていると、バンドのバラエティ豊かなところはシルクロードを通ってヨーロッパからペルシャからインドから中国から財宝が集められた正倉院みたいだと思えてくるし、彼らの根っこにあるハードコアパンクの荒々しさは万葉集でいう「ますらおぶり」である。そういう意味ではとても日本的なバンドだと思う。
ステージ上の4人はもはや怪物のように暴れまくり、それに呼応してフロアは「モッシュ」や「ダイヴ」とそれ自体が新種の生物のようにうねうねとうごめいている。それでいて曲が終わると、お客さんは静まり返り、立ちすくんで次の曲を待つという異様な間があった。こんな緊張感はそんなに出会えるものではない。そして2年くらい前に初めてブラフマンを観たときの「こんな凄いバンドが日本にいたのか!」という衝撃がよみがえってきた。
ラストは"ROOT'S OF TREE"。割と穏やかな曲を最後に持って来て、大きいものでステージを、フロアを包むような感じ。こんな壮絶なライヴを締めくくるにふさわしい曲だった。
---setlist---
TONG FARR
BASIS
SHADOW PLAY
GOIN' DOWN
Z
THAT'S ALL
NO SHORTER
GREAT HELP
NEW SENTIMENT
BED SPACE REQUIEM
時の鐘
DEEP
LAST WAR
SWAY
CHERRIES
NO LIGHT
BOX
BEYOND
SEE OFF
ARRIVAL TIME
---encore1---
PLASTIC SMILE
ANSWER FOR
FOR ONE'S LIFE
---encore2---
ROOT'S OF TREE
(実はアンコールには"ARTMAN"も予定に入っていました...)
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report by nob and photos by saya38
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