|
音楽の革命だ!
この日のチケットはソールド・アウト。場内ビッシリと人で埋め尽くされている。ライブが始まるまで体を丸めて体力温存している男の子、BrahmanのDVDで見たライブが良かったから貸そうかと薦める女の子、彼氏に抱きつきイチャイチャしている彼女、友達同士ではしゃいですでに興奮状態の男の子たち。誰も彼もが落ち着かない雰囲気だった。 そして、暗転と共に登場の音楽。メンバーがステージに姿を見せた瞬間の光景に私は圧倒された。それは、革命かデモが起こったような光景。人々が拳を突き上げ、ウォーという叫び声がZeppを埋め尽くす。その拳の向く先にはTOSHI-LOWが立ち、まるでみんなのエネルギーをすべて吸収しているような様子。"Plastic Smile"で始まる。一気にダイブの渋滞ができ、ダイブの上にダイブが重なっているような、凄まじい状態。普段私もそういうもみくちゃ状態で頭上を人が通過するようなライブに行き慣れてはいるけれど、客観的に見ると、身の毛もよだつ。どうか、誰もケガをしていませんように。 Brahmanの曲を一切知らない私でも、観客の反応でそれが人気の曲、盛り上がる曲というのが容易にわかる。気持ちいいほどの会場の一体感。特に私の琴線に触れた曲、"Basis"と"Answer For〜"。彼らの曲は出だしがゆっくりしたものが多い。だから、知らない私は気を許す。でも突然激しく変貌。ふと、目を疑うような光景が目に飛び込む。人が宙に舞う?誰かの肩に乗っかったまま、そのまま飛んでダイブ。おー、恐ろしい。でも思うのは、体で音楽を受け止めているというか、その場だけでじっとしているのがもどかしくて、飛び出したくなっちゃうくらい、勢いがある彼らの曲。そんなパワフルな音。気持ちが一気に駆け上がる。そして場内の一体感が、本当に気持ちいい。 会場にいるみんなも大暴れだけど、負けじとステージ上のメンバーも荒れ狂う。TOSHI-LOWの力強いパフォーマンスに打たれるものがある。ものすごいエネルギーを感じる。伝わるものがある。何を言っているのか歌詞がさっぱり聞き取れないんだけど、何か伝わってくるものがある。だから、頑なに閉じていた私の邦楽断絶の重い扉が、いとも簡単に開かれてしまったわけだ。とにかく曲が気にいった。気がついた時には"Arrival Time"が終わり、彼らはステージから姿を消していた。鳴り止まないアンコールを促す喚声。まだ聴きたい。私だってまだ聴きたい。再びステージに戻ってきて、アンコール3曲が終わったところで、初めてMCらしいものを聞く。「ありがとう」、たったその一言が熱い。多くを語らず。そしてラストの曲"For One’s Life"。これも私の胸にズッシリきた曲。すべての曲が、激しく勢いのあるものなのに、泣けるメロディにノック・アウト。 実は去年のフジロックで彼らのライブを見たことがあった。ただ名前を知ってるってだけで見た。恐らくその日は調子が悪かったんだろう。ヒドイと言ってしまうと、その場で盛り上がっていたファンの人たちには本当に申し訳ないけど、私にとっては初めて見る彼らのライブが、かなり印象の悪いものとなってしまった。そしてその後も強烈にその印象は私の中に残った。ライブの状態に落差がある彼ららしいけれど、あの日が不出来だとすれば、今回のは上出来と私は思う。例え古くからのファンが、80%の出来と評価したとしても、私にとっては100%、それ以上のライブだったように思う。 そして私は、興奮して熱くなった気持ちのまま、Zepp東京を後にした。次の日に「Brahmanすごいんだよ、良かったんだよ」と熱弁を振るう私に、友達はかなり意外といった表情をしていた。聴かず嫌いというのは、損である。私の中で小さな革命が起きたんだ。
---set list---
1.PLASTIC SMILE
---encore---
A-1.NUKEY report by ali and photo by hanasan |