Money Mark at Shisaibashi Quattro(29th January '02)
 

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西海岸の奇才が伝えた西海岸の空気

 

 それにしても実に久しぶりのクアトロである。高校生の頃にあしげく通った場所で、BRAND NEW HEAVIESや『Joyful Noise Unto The Creator』のときのGALLIANO(DJがジャイルス・ピーターソンとUFOだった)、CORDUROYとMOTHER ERTHが共演したり、SPECIALSとTHE BEATのジョイント再結成ライヴなんてのもあったなあ。SHACKやPRIMAL SCREAMもここで見たっけ? そういえば、oasisの初来日のときも確かクアトロだった(これは見てないのだが)。

 大学に入ってから来た記憶がないので(忘れているのかもしれないけど.. 最近多い)、ひょっとしてそれ以来かもしれない。と、エントランスで配ばられていたミラレパ基金のフライヤーを片手に、バー・カウンターでドリンクをオーダーしながら、ちょっと自分でも驚いてしまった。それから周囲を改めて見渡す。やっぱりここの雰囲気はいい。ライブハウスというよりもバーかワイン・セラーといった趣があって、たとえ今日のようにフロアが少しまばらでも、その後ろに並んだストゥールに腰を落ち着けて、開演まで(そして望むなら開演中も)ゆっくりと過ごせる。実際にそうなのだろうけれど、お目当てのアーティストが本当に好きな人たちが集まった、そんな雰囲気を醸し出してくれる小屋だ。

 当然この日も、そんな雰囲気がみんなの期待になってひしひしと伝わってくる。マニー・マークって、言わずと知れたBEASTIE BOYSのツアー・メンバーで、これまでソロ・アルバムを数枚ドロップしているのだが、結構謎のイメージだったりする。ぼくのなかのマーク西田のイメージを整理すると、日系で、BEASTIESのもろオルタナ・ジャズ・ファンクの曲でキーボードを弾きまくっていて、『Intergalactic Tour』のときは、ステージのキーボード・セットでそれこそハツカネズミのようにグルグルグルグルとひたすら走り回っていた。そしてヴィンテージ楽器のコレクター。

 この日のステージの上手には、Rhodes ステージ・ピアノとオルガン(KORG CX-3)がL字型にセットされ、そして2段目にそれぞれデジタル・シンセ。定番の70's仕様で 納得といえば納得、もっとヴィンテージ・シンセが積み重ねられてマニアぶりを発揮するのかと思えばそうでもなくて、実戦仕様。シンプルといえばシンプル。それよりも、いちばん中央に立てられたマイク・スタンドと、そのすぐ脇のコンガが気になる。「???」 ヴォーカリストがいるのか、それともパーカッショニストが歌うのか。中央にはギターも立て掛けられていて、謎が深まるばかり。そしてキーボード・セットの陰に隠れてわからなかったのだが、なんとドラム・セットの隣にもう一つドラム・セットが(!)。うーん、どんなことになるのやら。

 7時を少し回ったところでKid Koalaの登場。即興スクラッチを交えたアブストラクト・ヒップホップで始まり、お約束のBEASTIESネタ("So What You Want?")にエレクトロ的な流れからTEARS FOR FEARS "Shout"まで飛び出して、これには思わず声を上げてしまったのだが、喜んでいたのはぼく一人。あかん、年バレるなあ...。

 30分ほどたった頃、Kid Koalaのアブストラクトなビートに乗って、ロン毛黒髪グラサンに茶系のきれいめルズなシャツ姿のマニー・マークが登場。小さなオモチャのようなPAアンプを片手にしている。そして、おもむろにコンガを逆さまにして椅子の上に立てたかと思うと、その先端にPAアンプを置いて、ブーム・スタンドのマイクをアンプのスピーカー部にあてると、今度はアンプに直に入っているマイクをスピーカーに向けて、ビートに合わせてそれを近づけたり遠ざけたり、「ヒュルヒュル」とハウリング・ノイズで"戯れ"だす。やっぱり奇才タイプやなぁ、この人。そんな抽象的な演奏がしばらく続くなか、そぞろと他のメンバーも登場し、各々のポジションにつく。ツインドラムにベース、そしてサックスとトランペットのホーン・セクションが堰を切ったかのようにエネルギッシュに演奏を始めると、それまでチラチラと薪の火のようにゆらめいていたビートとハウリング・ノイズが、一気に突風に煽られた猛火に変貌したかのよう。この前衛的な匂いのプンプンする演奏に、すっかり酔いしれてしまった。

 それから2、3曲はフュージョン・テイストの色濃い、Rhodesの涼やかでどこか哀愁みのある音色を堪能できる、(オープニングよりは)落ち着いた演奏が続く。と思ったら今度はキーボードを離れてマイク・スタンドの前に仁王立ち、ギターを担いで70's テイスト全開のロック・チューン。コンガでKid Koalaのスクラッチが奏でるトランペットと共演したかと思えば、突然風船を脹らまして(本物の)トランペットの口にあて、風船を萎ませながら「ブゥブゥ」と演奏(?)したり。再びRhodesに向かって、西海岸のAORシンガーばりの渋い歌声でバラードを歌い上げたかと思えば、マウス・コントローラーをくわえてキーボードの音色にアタックと変調をつけながら熱い演奏を披露し、そのまま椅子に立ち上がって右手を振りながら「hべぼぶ〜びて、ば〜るぼ〜おおう」とSUKIYAKI SONGを歌ったり。チカーノ風のちょっぴりラテンな、でもヘヴィなツインドラムと熱いオルガンは相変わらずの演奏を聞かせてくれたり。

 まるで自分のコレクションのなかから、好きなレコードをあれやこれやと引っ掻きまわしているよう。どこまでもゴーイング・マイ・ウェイなステージだった。いい意味で、たぶんそれが西海岸のスタイルなのだろう。仕事を終えて、缶ビールを煽りながら自分の家のガレージや裏庭で、気の合う仲間と好きな音楽を奏でる。それがそのままバンドになり、ライヴをし、アルバムを出し。黒人も白人もヒスパニックも日系も中国系も、いろんなバックボーンを持つ者がそれぞれの要素を持ち込んで、クールな音楽を作り上げる。そんな空気を感じた1時間半だった。

 来月にやって来るOZOMATLIといいトミー・ゲレロのJET BLACK CRAYONといい、なんか西海岸ってええ感じやなぁ。GRAND ROYALの倒産もなんのその。で、そんななかで もひときわ唯我独尊なマニー・マークは、アンコールでドラム・ソロまで披露した。

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