The 3Peace at 十三ファンダンゴ(2002年1月24日)
明日へ!

 正直、ちょっと「あれ?」と思った。

 この日もTHE BEATLSの"All You Need Is Love"のファンファーレをバックに、ファンダンゴの階段から梶さん、かおりさん、そして原さんが駆け足で降りてきたんやけど、ステージに駆け上がるその背中に、なにか照れというか、ふだんとは違う緊張のようなものを感じたからだ。

 なんか"コミュニティ"とも言えそうな、熱心な顔馴染みの大阪のファンがステージ前に集結していたからか、THE 3PEACEと同じFRF'99に出演したネコグルマのステージに、ギターを抱えて共演した原さんはこの日2度目の登場だったせいか、あるいは前日の名古屋から夜の間に車で移動した疲労があるのか、いつも通りの早口の「こんばんは。THE 3PEACEで、ゴザイマス」という第一声も、どこかもどかしい。 なんかまるで両親や親戚の前で演奏するみたいやなぁ。

 そしてそのままオープニング・チューンの"光の彼方へ"。

 ギターの、染みひとつない純白のボディに貼られた『WAR IS OVER』と書かれたステッカーを、原さんがしきりに指し示している。もうひとつのステッカーには『PEACE』のロゴ。日頃のニュースを目にすれば、その気持ちは誰でも同じ。でもどこかで空回りしているのか、やはり演奏が噛み合っていないように聞こえる。こんなこと初めて見るなぁ、と戸惑っているとそこで、まさに"気は優しくて力持ち"な梶さんがそんな空気を吹き飛ばし、本調子じゃないメンバーとステージを注視する観客を鼓舞するように、ウワァーっと立ち上がってのドラミングを見せる。『まさかの友は真の友』なんかそんな諺をつい連想してしまった。ホント、心強い。この辺りのタフさは、やっぱり海外に飛び出して、なにも知らないオーディエンスを目の前に、ツアーしてまわって身に付けられたものなんかな。

(後でかおりさんに聞くと、
「なんかチューニングがあってなくて、めっちゃ気持ち悪かった!」
 それで演奏しながら合わせ直してたらしい。なるほど)

 そんなこんなで(?)原さんのソロ・ライミンで始まる2曲目"Go! Go! Freedom"では一転して、THE 3PEACEの真骨頂、ダイナミズムとスピード感溢れる、バシッと気合いの入ったタイトな音を聞かせてくれる。なんとも言えない心になる。最高。ピース...。あかん、そんな言葉しか思い浮かばへんわ。リフでアクションをキメるかおりさんの姿は、ふだんの、気さくで茶目っ気たっぷりでちょっと天然な(失礼)魅力的な女性とはかけ離れた、ロック・イコンを思わすのに充分だし、梶さんのドラムを叩く姿は、ストイックなんやけど岡本太郎タイプの絵描き、かな? 原さんのほうも片足を蹴り上げてみせたり、腰をフリフリクネクネしてふだんのペースを取り戻したかのように見える。

 と思ったら、「えー、去年の7月に『RADICAL LOVE RHYME』って傑作の売れないアルバムを出したんですけど、次はそのアルバムから、"昨日から今日、そして明日へ"をやります」と苦笑いしながらMCすると、後ろの梶さんから「(次の曲は)"Love Songs"やで」と突っ込みが入る。やっぱりちょっとお疲れみたい。

 "I Fought The Law"のような親しみ易さと、これ以上にないくらい、飾らなくて素直な(そしてテンポよく韻を踏んだ)詩がとても気に入っている愛の歌の次は、アルバムではケルティックなストリングスに導かれた"昨日から今日、そして明日へ"。ギター、ベース、ドラムス、必要最小限の構成のはずなのに、ぼくの耳にはそのストリングスのフレーズまでもが届いてしまう。真剣にさりげにSEを鳴らしてるんじゃないかと、ライヴで聞く度に疑っているんやけれど...。「〜結局きみと一緒にいたい、きみを信じて生きていきたい」「〜俺たちこのまま歩いていこう、昨日から今日、そして明日へ」 そんな言葉が心に強く残るのは、ぼくもそれなりに人生みたいなものを経験してきているから、そう思う。 3つのピースな音の共鳴が、音を越えて伝わるものを届けてくれる。

 "Satisfaction"ばりの肉感的な音と特有のドライヴ感を聞かせてくれる"星のない空の下で"の次は、アンセム"新しい世界"。

「Yo! Yo! Yo! Yo! Yo! Yo! Yo! Yo! Revolution!! 」

 原さんとかおりさんが飛び跳ねる。フロアも飛び跳ねる。後ろのカウンターのほうまで。梶さんが立ち上がる。

「凍りついた河を溶かせ、そして流れを変えてしまえ」

 この日の"新しい世界"は、今まで見てきたなかで最高だったと思う。なんとか形容する言葉を今こうやって思い出そうとしてるんやけど。その場にいるときに、そんなよけいな考えは頭にこれっぽっちもないんやから、見つかるわけがない。もはや言葉なんてなにも思い浮かなばない。

 ただひとつ、この日のライヴを見終えて思ったのは(って、いつも同じなんやけど)、そりゃアルゼンチンやイタリアまで追っかけたくなるわな、ということだ。この年末年始と、わずか1ヶ月の間に3度このバンドのライヴを見たのだけれど、もう充分という気がしない。この日のアンコールは"終わらない旅の始まり"。それはTHE 3PEACEがまだ、終わらない旅の途中にいるからだと、そんな気がする。

 それになによりも楽しいしね。

*どうやら今のところ、最短でも4月まではスケジュールが確定していないらしいです。我慢の日々が続きそう。

report by kentaro.


無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Kentaro Kodama. They may not be reproduced in any form whatsoever.
To The Top.