Ron Sexsmith at 京都磔磔(2002年1月18日)
 

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京都の寒空に響き渡る
優しく美しいメロディー...

 

 昔の酒蔵を改装してできた老舗のライブハウス、磔磔。木造の建物の中に入ると、ほどよく古びたポスター達が出迎えてくれる。お世辞でも綺麗とは言えないが、柱にある汚れや傷が演奏される曲達に何とも言えない雰囲気をプラスする。観客の目線とさほど変わらない小さなステージ、椅子やテーブルを置いてしまうと狭くなるフロア、ステージのバックにある数個の穴の空いた障子、「Ron Sexsmith、Welcome to takutaku」と黒板に書かれた文字、なぜか客席の真ん中にそびえ立つ大きくて太い四角形の柱...どれもがメジャー、インディー、洋邦問わず数々の歴史を見守ってきた。...私はそんな磔磔で見るライブが好きだ。

 通常ならば、ステージの下手などから登場するのだが、磔磔は少し違う。2階に楽屋があるため、観客を掻き分けながらの登場となる。今回だってもちろんそう。たまたま私がいたところがステージ下手だったため、メンバーがぞろぞろと歩いてゆく_こんな光景は他じゃ見られない! 普通のライブハウスで見るよりも、Ron Sexsmithを身近に感じる。それは彼のホームパーティに招かれ、気軽に演奏してくれているかのようなムード。フジロック01'にも出演した彼をこんなに身近に感じる...それはこの会場でしかあり得ない。ピンと張り詰めたのではなく、少し背筋を伸ばしたくなるような程よい緊張感の中、ステージ上でセッティングするメンバーに連動して床がきしむ。観客は雑談を交えながら酒をあおり、今か今かとその時を待つ。...それは彼との至近距離がそんな錯覚を覚えさせただけだと、気づいたのは演奏が始まって間もなくだった。やっぱりRon Sexsmithは偉大なスターだった...。

 指弾きならではの直接的で強弱のある、優しい人間っぽいメロディーが会場に響き渡る...なんて心地いいんだろう。チェロや鉄琴、ピアノなど必要最低限の音のみを用い演奏される旋律は、まるでサボテンに赤い花が咲くかのように、暖かくほがらか。彼の息使いや"th"を発音する時の唇を少し摩擦させたかのような音...最新アルバム"Blue Boy"を中心により湿った暖かいものを注ぎ込んでいく。木々の合間から吹く冷たく無気質な風が足元をさらっているのに、胸の真ん中だけがポワァ〜ンと暖かい。その温もりは、どんどん私の中で繁殖を始める。それは私だけでなく、会場にいたスタッフを含めた全ての人が感じたのではないだろうか。P>  ワビサビの効いた京都とカントリーやフォークテイストを含んだロックナンバー。一見合わないように思うが、どちらも自然や歴史を大切にしながら、斬新なアイデアを取り入れていれようとする...どちらも「進化系」なのだ。

 近年のライブで見られるよなモッシュもダイブもない。観客の視線と耳だけがステージに注がれる。その心地よい緊迫感とメロディーの美しさは、会場の外にまで響き渡っていただろう。綺麗で切なくて儚い...Ron Sexsmithの宝物たちが寒空に響き渡っているのかと思うと、少しだけ涙がこぼれた。

なお、写真は1/13の東京公演のものを使っています。

report by shoko and photo by hanasan


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