Smashing Mag/SPIRITUALIZED at 心斎橋クアトロ（2002年1月11日）

**SPIRITUALIZED at 心斎橋クアトロ（2002年1月11日）**
緊密度いっぱいの宇宙体験　前作「宇宙遊泳」のツアー後、他のメンバーを全員解雇。最新作「レット・イット・カム・ダウン」ではさらに壮大なサウンドを生み出す為にオーケストラや聖歌隊など延べ100人を操った男。ジェイソン・ピアーズとの初対面ライヴは、いつものクアトロなのに初めてづくしの一夜となった。まず入場してびっくりしたのはステージ。いつも暴れているフロアの半分まで拡張され、その上はすでに楽器群が占拠。この上にまだあと何人乗るんだっけ？　定刻を5分ほど過ぎて暗くなると、ステージにはピンクのライトだけが浮かぶ。宇宙チックなシンセサイザー音が延々流れる中、それに重なるように客席後方からトランペットが。やがて勢揃いしたメンバーは、最前にギター2人とベースそしてジェイソンの4人が並び、その後ろにバーカッション、ドラム、キーボードの3人。さらに奥の壁際にスモークで顔も満足に見えないブラス隊の5人を加えた総勢12名。　だが、ジェイソン側だと喜んだのもつかの間、彼のマイクだけは正面ではなく左手に向けられていて、彼も客を見ずに真横を向いて歌い始めた。右端の客には完全に背中を向けたかっこうになる。メンバーそれぞれが足元のエフェクターを踏み、オープニングからまるでモグワイがエンディングでやっていたような轟音の放出は"COP SHOOT COP"だ。壁際のブラス隊がさらに混沌を脹らませるが、その音の一つ一つは驚くほどクリア。しかし、せっかくジェイソンに一番近い所にいるのに、これでは背中と横顔チラリしか見えやしない。最前柵前で潰されそうになるのは珍しくないが、フロントマンの顔が見えないライヴなんて初めてだ。　絶対にふりむいてくれない彼に、もう今夜はこの音の中で目を閉じているだけにしようかとも思ったが、続く"ELECTRICITY"のノイジーなギターが思いきり突っ走り、思わず体がうねる。ああ、この音はそんな夢うつつどころじゃないぞ。モッシュこそ起きないが、皆も思い思いに揺れている。"BORN NEVER ASKED"から"ELECTRIC MAINLINE"では、繰り返されるフレーズと共にさらに重量音が加速。ひたすらに登りつめていく音の洪水の中にいると、目も耳もしっかり見開いているのに、一瞬どこかへ連れて行かれそうになる。エロティックなまでの轟音遊泳。ギターを持ち替えたりする間も常に冒頭に流れていたシンセ音がつないでいて、その音流は決して途切れない。イントロにひときわ歓声が上がったのは、SPACEMEN 3時代の"WALKING WITH JESUS"。ハープも熱演のカッコいいナンバーだ。これまで彼の音楽背景などあまり気にかけずにいたが、この曲に限らず、生で聴くジェイソンのヴォーカルはどこかやるせなくて、大好きなエコバニのイアン・マッカロクが重なって仕方がなかった。　そして延々刻まれるピアノのリズムに乗って歌われる21世紀のゴスペル"WON'T GET TO HEAVEN"はまさしく生のゴスペル隊と共に聴きたかった1曲だ。I'm hopin', prayin' Lord I'm sayin'...　私も精一杯の祈りを込めて叫び続ける。――ねえ、お願い！　今度来る時はもっとデカイところでビョークも負けそうなオーケストラとＵ2がやってたみたいな教会のゴスペル隊を連れて、思いきりやってよ――。　本編ラスト"DON'T JUST DO SOMTHING"が終わるとすでに2時間15分。一言も喋らずに、正味これだけの時間曲をやり続けてもダレないなんて、やはりジェイソン宇宙の緊密度は圧巻だ。アンコールは、再びSPACEMEN 3時代の"TAKE ME TO THE OTHER SIDE"に続いて、ティンパニがひときわ力強くダダダ、ダダダと響き、とどめの"COME TOGETHER"へ。ブラスもここぞとばかりに大爆発。聖歌隊がいないのも、ショウの間じゅうジェイソンに片想いなのも忘れそうな大迫力でのエンディングとなった。　終演後はチケット半券での抽選会があり、「1名を楽屋へご招待の上、ジェイソンからの特別プレゼントも有り」のアナウンスに場内騒然。もちろんクアトロでこんな事は初めてだし、ましてや一言もしゃべらなかったジェイソンが？という驚き。で、結局はずれていつものようにセット・リスト取りに居残ると、何とさっきまでジェイソンの足元に貼り付けてあった最後の1枚をゲット。2時間半の片想いの末にようやく一度だけふりむいてもらえたような気分で帰途につく。　だが、それでもまだ私の想いは膨らみ続けるのだ。そう、もっともっと壮大な彼のゴスペルをフジの夜空で思う存分聴ける日までね。 -setlist--（原文のまま） 1.COP SHOOT COP 2.ELECTRICITY 3.SHINE A LIGHT 4.BORN NEVER ASKED 5.ELECTRIC MAINLINE 6.OUT OF SIGHT 7.ON FIRE 8.WALKING WITH JESUS 9.NO GOD ONLY RELIGION 10.LET IT FLOW 11.THE STRAIGHT & THE NARROW 12.TAKE YOUR TIME 13.THINK I'M IN LOVE 14.WON'T GET TO HEAVEN 15.DONT JUST DO SOMTHING ---encore--- 16.TAKE ME TO THE OTHER SIDE 17.COME TOGETHER report by ikuyo.