The 3 Peace at 大阪BIG CAT(2002年1月6日)
 

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"音"を越えて伝わるもの

 

「音楽っていったいなんやろう?」

 と、いきなりBANDA BASSOTTIのDisc Reviewの続きのようで申し訳ないのだけれど、ふだん、例えば休みの日に、CDを取っ替えひっ替えてはそれこそ一日中聴き入って過ごすときには不思議と意識しないのだけれど、ときどき、というかごく稀に、本当に素晴らしいライヴを見たりそういう場に居合わせたとき、胸の真ん中に熱いものを感じたり、涙腺が緩められたあとで少し冷静になったときに、ふとそう疑問に思う。

 2001年は、なにかしら音楽を聴き続けてきた自分の人生の中で、もっとも多くそういった場に遭遇できた一年だった。FUJI ROCKでのHOTHOUSE FLOWERSやFERMIN MUGURUZA DUB MANIFEST、朝霧でのOZOMATLI、そしてまだ実際には見てはいないのだけれど、ひょんなきっかけでライヴ・アルバムを聴くことになったBANDA BASSOTTIやTARAF DE HAIDOUKS。どれもSmashing Magに関わっていなければその存在を知らないままだったろうし、知っていてもその場に居合わすことはなかったと思う。

 とくにバスクやイタリアのバンドなんて、非英語圏の文化が黙殺されがちなマスメディアで、これほど密に取り上げられることなんて皆無だろう(ルーマニアのジプシー・バンドTARAF DE HAIDOUKSは、NHKやNews 23で特集されていたが、映画というコマーシャルな部分がなければ、やはり同じだったと思う。でもぼくが最初にTARAF DE HAIDOUKSを知ったのは-彼らのライヴの素晴らしさを見聞きしたのはSmashing Magでだった)。

 THE 3PEACEを知ったのも、やはりインターネットというオルタナティヴなメディアでだった。 そして素晴らしいライヴが作り出す、あの独特の"場"を求めて自ずと足を運ぶようになった。THE 3PEACEのライヴを見るとき、"三位一体"という言葉が本当によく似合うと思う。その名の通りギターとベースとドラムで構成されるスリーピース・バンド。でもそこには、例えばジャズのピアノ・トリオのように、主役と脇役という配役はなく、例えば鬼気迫る3人のガチンコ勝負、といったものとも違った何かがある。文字どおり、ステージ上の3つのピースな力が溶け合って、溢れ出した情熱やエナジーが弾けて、飛び跳ねているのが目に見えるし、いつも、手を伸ばせばそれを掴めるのじゃないかとさえ思う。

 「なんかディナーショウみたいで」 思わずVo/G.の原さんが苦笑してしまう。『南吠える!』と題された四日連続のイヴェントの三日目、この日のBIG CATはフロアの最前列からテーブルと椅子が並べられた、ちょっと意外なシチュエーションで、THE 3PEACEが登場したのは二番目。正直言ってどれほどの人がTHE 3PEACEを知っていたのかわからないけれど、前回のファンダンゴで目にした顔も何人もいたりする。バンドとしてはやり辛いシチュエーションだったかもしれないけれど、そんなことで3人のテンションは落ちたりしない、たぶんTHE 3PEACEのライヴを一度でも体験すれば、だれもがそんな信頼をよせるだろう。どうしようもなくワクワクするし、体は揺れ、リズムをとり、1曲1曲終わるたびにこっちもピースサインを高々と上げて応じたくなる。それにかおりさんの溌溂とした表情や動きを見ると、やっぱり自然と笑顔にさせられる。

 心の底からポジティヴな気持ちでいっぱいになる。

 情報は伝染する。一様な価値観を伝えるマスメディアが、そんなメタウィルスを媒介する巨大な伝染経路だとすると、ウィルスに対する抗体を持つために必要なのは、自分自身の選択になる。テレビや雑誌とは違った側面からも物事を見るようにする。日常で当たり前のように触れている価値観に疑問符をつけてみる。ちょうどこの日ライヴを見終えて、仲間たちとの食事の席でアナログとデジタルといった話題が出たのだけれど、CDがカットしている人間の可聴域以下と言われる、60Hzだか70Hzだかより下の音も実は意識して耳を傾ければ、かすかにだが「サーッ」というホワイトノイズとして聞こえる。聞こえなくても確実に振動として鼓膜には伝わっているわけだから、それがレコードを聴いたときに感じる音の暖かみだったりする。だが最近のミニコンポのスピーカーは周波数特性が80Hz以上のものがほとんどで(もちろんコストダウンのため)、そんなこともなんだか騙されているような気になるのはぼくだけだろうか。

 "音楽"の正体も、そんなサブソニックな"ゆらぎ"のようなものなのかもしれない。"音"を越えて伝わるもの。それが胸の真ん中を熱くしたり、ほんとうにピースな笑顔を浮かべさせたり、涙腺を緩めたりするのかもしれない。マスメディアというフィルターにカットされたそんな"ゆらぎ"を、人の感受性に訴えかける一番根っこの部分を、零すことなくたくさん伝えたい、Smashing Magはそんな媒体なのだと思う。

 そしてTHE 3PEACEは間違いなくその"ゆらぎ"を伝えてくれるバンドだ。効用は、心の底から感じるポジティヴな気持ちと、とろけるようなピースな笑顔。そして、それが正しいことだと確信づけてくれるポリシーも。古臭い言い方をすれば、日常に前向きな力を注いでくれるカンフル剤そのものだ。そしてライヴの度に、そんなバンドが同じ国でこんな身近な所に存在していることに幸運に思う。実際、冷静になっていつも思うのだけれど、そんなに高くないアドミッションで、小さなライヴハウスで間近にこれほどのバンドが見れるのは、凄いことだと思う(同時に異常にも思える)。

  だからもっともっと多くの人がTHE 3PEACEを体験して、香取慎吾風に3本指のピースサインを出して(これは"ホメオパシー"?)、その"ゆらぎ"を感じれば、みんながポジティヴになって、このどこかおかしい状況も少しはマシになるんじゃないかと期待してしまう。少なくとも、AMD(中距離弾道ミサイル制限条約)を一方的に離脱し、2002年を戦争の年と言ってソマリアやイラクに爆弾を落とそうとふっかけてるどこかの国のネガティヴな大統領のようにはならずにすむ。「スリーピース!」

スリーピースの次回公演は仙台JUNK BOZ(1/13)。その後、名古屋アポロシアター(1/23)、西荻窪ターニング(1/29)へと続きます。彼らに関する情報はhttp://www.the3peace.comででご確認を。

report by kentaro and photo by hanasan


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