ティントレーロス in 高田馬場(11th Dec. '01)

アルゼンチン・ロックをのぞき見る


 行ったことのないライヴハウスを一人で訪ねるとしたらどうしたらいいだろうか?

 高田馬場の早稲田口を降りた時に、ネットで目的のライヴハウスの地図を思い出しながら歩き始めたけど、目印とか、住所を控えていくのを忘れたことに気がついた。適当にぶらつけば、じきに見つかるだろうと思っていたけど、なかなか見つからない。とりあえず、ライヴハウス関係に強い師匠にメールを送るが、電波の状態が悪いのかなかなか返事が来ない。

 とにかく調べようと職業別電話帳であるタウンページのライヴハウスのページをめくる。以前、ミッシェルガン・エレファントのライヴをサンフランシスコとデンバーで観たときには、ホテルの電話帳を使って彼らが行うライヴハウスの住所を調べたのだった。

 ところが、目的のライヴハウスが見つからない。というかライヴハウスの名前がうろ覚えなのだし、それらしい店もない。

ティントレーロス  今度は中古レコード屋に行ってフライヤーとか置いてないかな、と探してみる。しかし、その時に気がついた。なんでこんな初歩のことに気がつかなかったんだろう。アホでないのか?おれは。そのまま中古レコード店を出てコンビニに直行する。雑誌コーナーで「ぴあ」を探して住所を特定。さらにコンビニで売っている地図でおおよその場所をつかむ。で、その場所に行ってみると、さっきぶらついていたところじゃないか。自分が見落としていたところだったとは。

 というわけで、無事に目的地に着いたけれども、その時すでにPOT SHOTが終わっていた。次に登場したのはアルゼンチン人のバンド、ティントレーロス、ってドラム以外はめちゃくちゃ日本人顔じゃん。それもそのはず、ギターとベースの二人は日系人。親の世代が日本からアルゼンチンに移民したのである。

 彼らの音はレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンからの影響を素直に出ている感じである。十分ヘヴィだし元気な音だ。特にドラムとベースの迫力があるのがいい。3peaceの原がヴォーカルで参加して3peaceの「俺」や何故だか3peaceのマネージャー上杉氏をギターに迎えて演奏したりなかなかフレンドリーなライヴだった。ティントレーロスの3人は、その次の3peaceのライヴでは最前列で暴れまくっていた。3peaceも笑顔があふれるいいライヴをしたと思う。ここに中国のTHIN MANがいたら本当に面白いことになっていたのだなあ、と思ったのだけど、残念ながら彼らはビザ発給の問題で日本に来ることは出来なかった。

 そんなわけで、打ち上げの席でティントレーロスのメンバーにインタビューをしてみた。答えてくれたのはリーダーのデチ・チネンさんとサポートのギタリスト、ニコ・タカラさんである。ティントレーロスとはスペイン語で洗濯屋(?)の意味らしい。

 ヘヴィ・メタルなギターを聴かせてくれたニコは好きなアーティストの問いに「ビートルズ、ヴァン・ヘイレン、マイケル・シェンカー、フガジ、フー・ファイターズ、ウイーザー、ジミ・ヘンドリックス」。レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンは?と聞くと、それも好きだと答えてくれた。ギターを始めたのは15歳くらいとのこと。

 リーダーのデチはリーダーだけにいろいろ積極的に発言するほう。バンドは普段、200人〜250人くらいのクラブで演奏しているとのこと。一番多くの観客の前でやったのはパンテラのサポートのときで12,000人。向こうのフェスティバルにも出ているし、マリリンマンソンのサポートをしたこともあるらしい。5、6年前にビデオクリップの面白さでラテンMTVのチャートに出たこともある。ラテンMTVは全世界のスペイン語圏人口を考えれば、その視聴者はアメリカの視聴者を上回るらしい。ところがそれは一時的なことで、今は香水を運ぶドライバーの仕事をしながらバンド活動を続けているとのこと。凄いじゃないか。そういう人が彼らから見て地球の裏側に当たる日本に仕事を休んでまで来てくれるというのは、結構大変なことと想像する。

ティントレーロス  そんな彼らは何を歌っているのだろうか?「怒り、人種差別について。でも、今では愛や友情のポジティヴなメッセージを歌っている」。じゃあ、今日のステージではどの曲を歌った?という問いには「昔の曲も今の曲もまとめてBEST OF ティントレーロスだよ」と答えてくれた。

 アルゼンチンで知られている日本人のミュージシャンは「坂本龍一、チボ・マット、ラウドネス、イエロー・マシンガン、バッファロー・ドーター」。喜多郎は「眠くなる」、ピチカート・ファイヴは「嫌い。あれはファッションピープルの歌だ」(ちなみに筆者は大好き)。ただ、これは坂本龍一とか喜多郎はともかく、イエローマシンガンあたりはアルゼンチンの音楽ファンの間では、ということかも知れない。フジロックに出たいかという問いには、力強く「YES」。

 日本のイメージはというとフジヤマ・ゲイシャ・カラテという典型的なのがやはりあるらしい。あとはサッカーの中田とかは有名とのこと(もしかしたら、これは聞き 間違いでアルゼンチンのリーグのボカにいる「高原」と言ったかもしれない。とはえ言え、イタリアで活躍している日本人のニュースは、アルゼンチン出身の選手の活躍と共にアルゼンチンにも伝わっているかもしれないけど)。実際の日本に来ての印象は日本の音楽のレヴェルが高い、やる方も観客もレヴェルが高いこと驚いている様子。

 影響を受けたアーティストは?「ヘルメット、バイオハザード、フガジ、デフトーンズ、フー・ファイターズ、ウイーザー」とのこと。「スラッシュメタルの影響は?」には「少しだけだよ」。これはさっきのニコが挙げた好きなアーティストにも重なっているところがあり、地球の反対側にある国同士で同じようなものを聴いているんだなという連帯感というか仲間意識を感じる。彼らが挙げたアーティストがもっとメジャーなものだったりしたら(まあ、フーファイやウイーザーは十分メジャーという意見もあるだろうけど)、世界の文化も画一的なものになってしまった、ということになるのだろうけど、こういうオルタナティヴなアーティストを通じての裏のグローバルネットワークというか、同世代感覚を発見して嬉しい気がする。そんなアーティストの曲はアルゼンチンで手に入るのだろうか?「CDは売っているけど、値段が高い。USドルで22ドルもする」(これはアルゼンチンの物価水準として高いということなんだろう)。なので彼らは違法コピーやMP3のダウンロードで音源を手に入れているとのことだ。もちろん、違法コピーについていろいろ意見あるだろうとは思うけど、彼らの曲が遠く離れた人にとっても切実に必要とされているということは、著作権侵害もあるだろうけど、むしろ喜ばしいこと「も」あるのではないだろうか。

ティントレーロス それではアルゼンチン社会に対しての不満は?「政府が混乱していて計画を立てて行動することが出来ない」とのこと。逆にいいところは?即座に「女性」。いろんな人種と混血しているので良いとこ取りなんだそうだ。

 アルゼンチンというとタンゴというイメージがあるけど、ラテンの音楽は古くて深い。それに比べたらタンゴというのは新しい音楽でしかない。1万8000年前から文明があってピラミッドや遺跡を残しているが、西洋が入ってきたのはたかだか600年前。アルゼンチンの民謡はフォルクローレで、タンゴとかよりも、もっと深いものがある、とのこと。うーん。なるほど。日本の裏側から来たバンドは同世代感覚もあり、かつ深くて、血のルーツは共通しているものがある、というなかなか興味深いものがあった。

 英語はほんの少し、スペイン語はさっぱり分からない自分にとって彼らの発言を100%再現できたかというのは自信ないし、この他にも彼らのルーツである沖縄の話をしたりしていたけど、自分の語学力では聞き取ることは出来ませんでした。だけど、これを読んで何か感じることがあれば、彼らのサイト(http://www.tintoreros.com.ar/を見てほしい。また、何かの機会(それこそフジロックで)会うことができたらいいなあと思う。

 通訳は、花房さん、野口さん、西岡君。スペイン語は小宮山さん。ありがとうございました。

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