button Ian Brown at 新宿リキッドルーム(4th Dec. '01)

イアーーーンッ! 初・体・験!!


 

 

 

Ian Brown 

 

 

Ian Brown 

 

 

Ian Brown 

 

 

Ian Brown 

 

--setlist-- (原文のまま)

Bubbles
Stardust
Whispers
Gravy train
Soldiers
Corpses
Set my baby free
northern lights
Shadow of a saint
Fountain
Dolphins
Golden gaze
Forever and a day
F.E.A.R.
My star
 「Unfinished Monkey Business」の強烈なジャケット、そしてどこかで見た猿人フェイスが頭にこびりついてる。それしかない、イアンの印象。エレベーターを待つ人の列に一緒に並んで、前の日本人の男の子を見ても、振り返って後ろの外人さんを見ても、みんながイアンに見えるぅ... やっぱりライブに行くからには少しくらい曲に馴染んでおかないと、なんて仕事しながら借りた「Music Of The Spheres」を聴いたけど、途中で睡魔に襲われて、挙句の果てに知らない内に全曲終わってた。うぅ、やっぱり私はブリット・ポップが苦手なのかも。不安を抱えつつ、リキッドの扉を開くと、ゆったりしたBGMが流れる中、そこはまるでイギリスのパブのよう(私の前にいた外人がビール片手にブリティッシュ・イングリッシュを話していたってだけ)。

「レディース・アンド・ジェントルマン! やってまいりました、イアン・ブラウンです!」こんな日本語の紹介で、拍手に迎えられてイアン登場。「もしもし」... え?私の聞き間違い?いや、確かにイアン「もしもし」って言ってような。あはは、もしもしって、電話じゃないんだから... そして「イチ、ニー、サン、シー」の掛け声で始まった「Bubbles」。小刻みに体を動かすイアン。それに合わせて、まるでムーミン谷の白いニョロニョロのように観客が体を揺らす。曲はニュー・アルバムからの「Stardust」「Whispers」へと続く。曲の合間には観客から「イアーン!」の声。しまいには、本人が「イアーン、イアーン」なんて言う。なーにー? この人、妙にカワイイじゃないっ。実物は思っていたほど猿人でもなく、華奢で、小さくリズムを取る姿やキング・コングのようなマッチョのポーズは、まるでオモチャみたい。ブルース・リーが好きだって何かで読んだけど、構えのポーズはそれだったのね。

 日ごろアグレッシブなライブばかり行く私には、何をとっても新鮮だった。曲もそう、イアンの小刻みダンスもそう、蛍光色に光るギターでさえも。ただ、私の思っているブリット・ポップへの印象はここでも変わらなかった。オアシスやトラヴィス、コールドプレイを聴いて抱いた、寒い曇り空のイメージ。すごく繊細で、儚くて、果てしなく寂しさと寒さが感じられる。だけど、一貫して思うのは、メロディがすごく柔らかい。ヴォーカルの声がどれも楽器が奏でる音のように思える。それはイアンも同じだった。消えてしまいそうなくらい細い体から発せられる声、柔らかいメロディには包容力がある。今までのライブでは、曲のパワーでエネルギーを発散させて楽しんでいたけど、ここでは違う。曲が薄いヴェールになってどんどん私を包み込んでくる。暖かい、なんだか。なんだろう、イアンの魅力って。

 ごめんね、イアン。私はあなたがストーン・ローゼズだったことも、その時の曲も、今のあなたも知らない。イントロが流れるたびに起こる喚声やみんなの歓喜も、あのゆったり穏やかな曲の中踊り狂う人も、私にはそれがただ不思議な世界にしか思えなかった。

 そして、迎えたアンコールの「F.E.A.R.」「My star」。天涯孤独みたいで、むしょうに悲しくなって、でもただステージ上で歌うイアンを呆然と見つめてた。そこから立ち去らずずっと聴き入っていたのは、そこに愛を感じたからかもしれない。なんだろう、イアンから発せられる愛が、声と音に乗せてリキッドを包んでいるように思える。あー、この人には色んな愛があるんだろうな、なんて思わせる。日常生活の中で、愛だとか平穏だとかいう事を真剣に考えることなんてないけれど。

 アンコールで一輪のバラを貰ったイアンは、それを首のパーカーに挟んだまま歌い続ける。あのバラがあんなに彼に似合うなんてね。「My star」では、楽器の演奏が終わっても、アカペラで歌い、メンバーが観客バックに写真撮影してる前でも続き、歌いながら自分も写真撮影に加わったりしてる。このまま、イアンの歌声がずっと永遠に続くようなかんじ。キュートさ、繊細さ、儚さ、ちょっとした男らしさ、愛情。捉えどころがない、イアン・ブラウン。頭にこびりついた強烈な猿人フェイスは、優しい歌声とキュートなイアンに塗り替えられた。この日は、苦手だと思い込んでいたブリット・ポップへの固定観念を打破し、新たな音楽に一歩踏み出した記念すべき日となった。ありがとね、イアン。


report by ali and photos by mari
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