BEN FOLDS at 大阪厚生年金大ホール(2001年11月16日)
 そ〜りゃな〜いさ、急に。一人になりたいなんてさ――

 ベン・フォールズ・ファイヴの来日ライヴと言えば、いつもこの“SONG FOR THE DUMPED”の日本語ヴァージョン、“金返せ”で大盛り上がりだったが、バンドは解散。ベン・フォールズはソロとなり、まさしく歌を地で行くはめになった。ソロ・アルバムでは、やっぱりこの人はどう転んでもいい曲を作るなと感心させられたが、あの ♪金を返せ、金を返せ♪ の大合唱はもう聞けないんだろうか。昨夏のサマーソニック出演以来となる彼との再会。ちょっと複雑な想いでの開演待ちだ。

 何かの番組テーマみたいなオーケストレーションのオープニングに乗って登場したベンをさっそく総立ちでお迎え。“NOT THE SAME” からスタートだ。ステージ左手のグランドピアノに向かい、半分腰浮き状態でぶっ叩くピアノは「元祖ピアノ・パンク」の彼ならでは。さらにノリのいい“ZAK & SARA”に会場一体の手拍子で沸いた後、何度も次の曲に向かおうと弾きかけてはまた喋る彼に笑いが起こる。「誰かこいつにSHUT UP!って言ってやってよ」と自分でツッコミ入れる彼に客席から「シャラ〜ップ」。“HIRO'S SONG”は51歳の親父ヒロが娘と同い年の秘書とつきあって云々なんて話の歌だが、物語ソングの巧さが光るアルバムの中でも一番の私お気に入り。「老けこみたくないんだ、弾けさせてくれよ」なんてフレーズが我ながらちょっと身にしみるが、35歳の彼にしても案外本音かな。

 と、アルバムからの曲をテンポよく披露していく彼のピアノマンぶりも、バックの連中とのハーモニーも上々だ。だが、何てったって“金返せ”でピアノの上に仁王立ちしてきたベンちゃんである。このままおとなしく終わるとは思えない。案の定、肩掛けキーボードに替えてステージ前へ出たかと思うと、一転して“MAKE ME MOMMY” というハードな新曲で弾けまくり。客席とのコーラス掛け合いもバッチリ決まったのに続いては、何と「ムカツクゼ、マジキレソウ、ファック!」と日本語ラップをかまして“ROCKIN' THE SUBURBS”で炸裂だ。赤いキャップ姿で、怒りで切れまくったかのようにステージを去る姿は、まるでリンプのフレッド。

 アンコールではファンからのリクエストも入れて懐かしのBF5大会に。でも久しぶりにやるのでいったん歌詞を確かめに袖に引っ込んだりする一幕も。そしてやはり極めつけは“金返せ”。皆が歌う様子を彼もとても楽しそうに見ている。ああ、これからもこの曲はベンと日本のファンをつなぐ宝物なんだよな。ラストは何とギターのスヌーズがヴォーカルをつとめるレーナード・スキナードの “SWEET HOME ALABAMA”!思わぬカバーに笑いながらのエンディングとなった。

 バンドの解散からソロになった直後のアーティストとのご対面ライヴはいつも特別だ。またステージに戻ってくれた元気な姿を一刻も早く確かめたい想いと、どれほど素晴らしい音を聞かせてくれても、かつてのバンド・マジックには叶わないのではないかという恐れとが交錯して何とも言えない気持ちになる。だけどもう心配ご無用。ベン・フォールズは自身のピアノマンとしての素晴らしさも、ベン・フォールズ・ファイヴというバンドの残した財産もその両肩にしっかり背負ってまた歌い始めた。その姿を確かめられた今こそ心をこめて言おう。「ベンちゃん、おかえりなさい!」

--- SET LIST ---

1.NOT THE SAME
2.ZAK & SARA
3.FIRED
4.ANNIE WAITS
5.STILL FIGHTING IT
6.HIRO'S SONG
7.LOSING LISA
8.THE ASCENT OF STAN
9.FRED JONES PART 2
10.GONE
11.MAKE ME MOMMY
12.ROCKIN' THE SUBURBS

--- ENCORE ---

13.VIDEO
14.BEST IMITATION
15.EVAPORATED
16.PHILOSOPHY
17.金返せ
18.SWEET HOME ALABAMA (BY LYNYRD SKYNYRD)

Reported by Ikuyo Kotani

おまけ:ここ(http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Special/BenFolds/)でベン本人の声で各曲についての解説付きでソロ・アルバム『ROCKIN' THE SUBURBS』の試聴が出来ます。


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