Bell & Sebastian at 赤坂ブリッツ(2001年11月15日)

 

Bell & Sebastian

 

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この幸せを...

 

 この幸せをどう人に伝えられるだろう。Bell & Sebastianのこの日のライブの最初から最後まで幸せに包まれた空間が赤坂ブリッツの中にあった。こんなに終始幸せを感じられるライブは今まであったかな。はじめてかな。この日、2階席のステージの真横から見下ろすように見ていた僕は、少しでも客席に照明があたるたびに下にいるみんなの顔を見てしまう。そこにいる人みんながうれしそうに、そして幸せそうに微笑んでいた。中にはあまりの気持ちよさに寝てしまっている人やほっぺにハンカチを当てて泣いている女の子もいた。なんなんだろう、この優しさの洪水のような音楽は。この幸せをこの場に来れなかった人にどう伝えよう。

 一曲目は比較的暗めで静かな曲で始まった。「ココリコメロディー」。その場にいるみんなが唾を飲み込むような、そんな緊張感とともにステージ上の12人を見守っていた。バンドの方からも同じような緊張感をこの時は感じた。言葉の通じない目の前にいる大勢の人と音楽だけで同じ空間を共有できるか、と。その緊張感をほぐすかのように2曲目の「Sleep The Clock Around」が静かに始まる。この曲はこれから先の不安を全てかき消して、期待だけをいっそう膨らませるような曲。素朴で静かな曲。でもその素朴さの中にも幸せが数え切れないくらい散りばめられたような曲。この時に感じた幸せをどう表現しようか。

 例えば...Bell & Sebastianはイギリスのスコットランドにあるグラスゴーという町で結成された。そのイギリスにはFun Fairというものがある。いわゆる移動遊園地。これが何ヶ月かに一回、住んでいる町にやってくる。イギリスの子供たちはこのFun Fairが町にやってくるのが楽しみで楽しみで仕方がないく、もちろんそれは大人も同じ。この昔ながらの今にも壊れそうな遊園地の乗り物に一回50ペンス〜1ポンド(100円〜200円)で乗れてしまう。そのFan Fairに行くたびに思うのは、音楽や人の笑い声なんかで騒々しいはずなのに、なぜか全く音のない世界に入ったような錯覚に陥ってしまう。もっと大げさに言えば全てがスローモーションに。そして唯一目に入ってくるのはそこにいる人達の笑顔。

 この日Bell & Sebastianの音楽を初めて聴いたけど、全ての曲が暖かくてやさしい曲だった。このBell & Sebastianが生まれたイギリスは本当に毎日曇ってばかりの国。でも一年に2週間くらいは必ず雲一つなく暖かい夏がやってくる。そんな時は全てのことをそっちのけで人々は外に出て公園なんかで日光浴を楽しむ。中には仕事まで休みを取って公園で水着になって寝そべっている人も。公園に手作りのサンドイッチを持っていって友達とおしゃべりをしたりフリスビーをしたり。イギリスの夏は日が落ちるのが遅いからそんな光景が午後8時になっても見られる。Bell & Sebastianの音楽にはそんな短いけど、それだけ誰もが待ち望んでいるうれしくて暖かいイギリスの夏を感じる。

 イギリスって日本なんかに比べるととても裕福とは言えない地域が多い。でもイギリスに限らず世界中全ての地域で、お金や物がなくても自分のすぐそばに小さな幸せが数え切れないくらい転がっている。自分の住んでいる地域が「発展」していればしているほど、そんな小さな幸せになかなか気づけなくなってしまっているのかもしれない。素朴な幸せ。でもそれは心から暖かい幸せ。Bell & Sebastianのライブはそんなことを思い起こさせてくれた。

 今回のBell & Sebastianの初の日本ツアーに行けなかった人に、誰もが口をそろえて言っているライブ中に感じられた「幸せ」や「暖かさ」がうまく伝わったかな。そして僕がこのライブで感じた自分のすぐそばにたくさんの幸せや嬉しいこと、楽しいことが転がっているということも。

report by yohei and photo by mari.


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