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この日のライブは思いっきり予想を裏切られた。ベルセバと言えば取材嫌いで有名だし、演奏に関してはかなり完璧主義だというようなことも聞いていた。だから、今日のライブは、きっと「ベルセバの張り詰めた演奏とそれを見守る観客達」という構図で進むのだろうな、と勝手に予想していたのだ。 ところがどういうことか。一番気難しそうなスチュアート・マードックが「考える人」のポーズで押し黙っていたのは一曲目のインストナンバー『kokiriko melody』のみ。その後は、いきなりダンスを始めるわ、観客と気さくに会話を楽しむわ、笑顔でギターをジャカジャカ弾くわで、何だか一番楽しそう。むちむちイザベルも顔は少し俯き加減でも、自分がパーカッションを担当するときは腰でしっかりリズムを取っていて密かにノリノリ。他のメンバーは演奏中でもそうでなくても笑顔を振りまき、とてもピースフル。張り詰めた雰囲気なんて微塵も無く、かなりリラックスしたムードが会場全体に満ち溢れている。おまけにスチュアートとスティーヴィーは結構歌をトチるし、トチっても「てへへっ」と笑うだけで曲は進んでいくし、完璧主義という噂は何処へやら、といった感じだった。 しかし、そこで弛緩した雰囲気をつくらないのはさすがベルセバ。確かに演奏はリラックスしているのだけれど、ただの馴れ合いには陥らない。常にオーディエンスとの関係を視野に入れている感じ。そこらへんが、ただの素人臭いインディー的なノリのバンド達とは違うなと感じた。 実は私のベルセバ歴は浅い。私が彼らの魅力に初めて気付いたのは、テレビで『リーガルマン』のPVを見たとき。でも、それ以来、後追いで一生懸命聴いてきた。だから、今日は記念すべき私とベルセバの出会いの曲である『リーガルマン』をやって欲しいと思っていたら、本編の最後でやってくれたので本当に嬉しかった。しかも、オーディエンスを6人もステージに上げて、ゴリラの着ぐるみまで登場するパーティー仕様(?)。感動して涙が…、なんてことはもちろんなかったけど(ゴリラが暴れまわるステージ見てもね)、本編のラストにピッタリの盛り上がりで大満足。特に青いベルセバTシャツを着た少年の頑張りは良かった! そして、今日のライブには昨日にはない「おまけ」があったのだ。それはアンコール。最初はみんな横一列に並んでお辞儀をするだけの予定だったようだけれど、ふいにスチュアートがピアノの前に座り、一曲やろうぜ、といった感じでメンバーに呼びかけたのだ。もちろんオーディエンスは大喜び。しかもプレイされたのは、なんとスライ&ザ・ファミリーストーンの『エブリデイ・ピープル』。かなり意外な選曲だったけれど、この日は他にもゾンビーズの『タイム・オブ・ザ・シーズン』や、フーの『ザ・キッズ・アー・オールライト』(さわりだけ)をカバーしていたりと、彼等の純粋な音楽ファンとしての一面も垣間見せていたので、納得と言えば納得。曲が終わると再びオーディエンスから大歓声、メンバーはそれに笑顔で手を振って答えながらステージを後にしていった。 今日のライブでは、彼らの驚くほどまっすぐな音楽への愛情と信頼を感じることができた。思わず、「音楽っていいよね。」と、あらためて口にしたくなるような、始めて音楽の魅力にとりつかれたときのことを思い出してしまうような、そんなライブだった。 ああ、昨日も行っとけばよかったな。? report by dak and photo by mari. |