Bell & Sebastian @ Akasaka Blitz (14th Nov. '01)
だまされるのもいい...








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ベル&セバスチャンは自分にとって「怖ぇ」バンドであった。皆さんも試すといい、特にSummer EPsあたりのシングルを車の中でかけながら人里離れた山の中を走っていると、背筋がゾーっとするような恐怖に襲われる体験を味わえる。実際、伊豆半島の山の中で聴くと、元々怪奇・心霊スポットが多い伊豆だけに怖さは倍増、早く人家の明かりのあるところへ出たいと必死に車を走らせた。この怖さというのは、これみよがしなおどろおどろしいホラー映画の恐怖ではなく、人間の孤独感をヒリヒリ感じさせる恐怖に近い。だからベルセバを和みや癒しとして聴くのは馴染めなかった。なんで、奥底にある恐怖を感じないの?
ベルセバが来日する、そして彼らのライヴはかなり良いらしいという話を聞くがライヴの感想に狂気のキョの字も出てこない。これは自分で行って確かめなくてはいけない、というわけで赤坂ブリッツに出かけて行った。ブリッツは超満員。始まる前は、昔の中南米の音楽がずっと流れていて「ベサメ・ムーチョ」とかかかる。10分くらい押してライヴが始まると、ステージには大勢のメンバーが現れる。
自分が抱いていたイメージはすぐに、ステージに上がり演奏を始めた彼らに裏切られた。「Le Pastie De La Bourgeoisie」から始まり、スチュワート・マードックは、にこやかで元気良く歌う。2曲目「There's Too Much Love」でステュワートは激しく踊り、マイクをブン回す。ロッド・ステュワートとかポール・ロジャースなんか=の70年代ロッカーのパロディみたいだ。CDで聴けた暗さや内省が明るくさわやかなものに改造され、今すぐにでも青空の下のピクニックへ行きたくなるような音楽になっている。
入れ替わり立ち替わり総勢13人の大所帯から出される音は細かなニュアンスまで聴こえてきて、彼らの世界が伝わってくる。外国人客から「音を大きくしてくれ!」みたいな声がかかったけど、この音量で聴き心地好く、満員の観客が聴き入るには調度いい大きさであった。
中心となるメンバーは複数の楽器を演奏出来て、例えば、スチュワートはギター、ベース、ピアノ。イザベルがチェロ、ベース、パーカッション、オルガン、リコーダーを演奏した。白いTシャツを着た若いときのジェフ・ベックにルックスが似ているボビー(?だと思う)がギターやベース、パーカッション。uramasaさん曰くイザベルがクリスティーナ・リッチに似ているならコーラスやヴァイオリン、フルート、ギターを担当したサラはドリュー・バリュモアにちょっと似ている。ピアノやオルガンを弾いたクリスは今年初めのティーンエイジ・ファンクラブのサポートとして来日している。髪型がえらい変わりようだった。こういう編成の自由さや他のバンドとの交流をみていると、ベル&セバスチャンが、決してうつむいてギターをかき鳴らす内省的なバンドではなく、グラスゴーのコミュニティを基盤とした開かれた音楽集団ではないだろうか。やっている音楽は違うけど、エイジアン・ダブ・ファウンデーションやオゾマトリみたいなコミュニティに根をはったバンドに近い成り立ちなのではないかと思う。決して部屋の中でウジウジしている人たちではない。そうなると、こんなに明るくて風通しがいいのが納得いく。
「Lazy Line Painter Jane」ではフロアから日本人の女の子を上げてコーラスをさせた。他のレポートにあるように、その女の子もノリノリで歌も結構ちゃんと歌えていたのだけど、それ以上にこの曲ってこんな楽しい歌だったっけ?という驚きもあった。それとCDではエンディングが最高に狂っていた「You Made Me Forget My Dreams」も完璧に美しく感動的なバラードとして演奏され、このあたりが自分としてはハイライトだった。
最後の「Legal Man」はで多くのメンバーによってパーカッションがうち鳴らされクライマックスへ。スティーブなんかは70年代のハードロックのギタリストのパロディのようにバリバリギターを弾くまくる。アンコールはないけども、感激したお客さんたちの拍手が客電がついてもしばらく続いた。ライヴが終わってスチュワートがロビーに出てきてサイン会になる。うーん、いい人だなあ。彼らを恐怖の対象としていたのは間違っていたのかも知れない。だけど、家に帰ってCDを聴きなおすとやっぱり美しくて素朴な音楽の裏に漂ってくる怖さを感じる。もしかして優秀な外科医が実は殺人鬼みたいなものかなあ。彼らにだまされているのかも。でも、こんなふうに気持ちよくだまされるのならそれでOKだ。
---SETLIST---
Le Pastie De La Bourgeoisie
There's Too Much Love
The Magic Of A Kind Word
If You're Feeling Sinister
Mayfly
Jonathan David
Black And White Unite
The Model
In A Nutshell
Lazy Line Painter Jane
Simple Things
The Boy With The Arab Strap
You Made Me Forget My Dreams
Family Tree
The State I Am In
Judy And The Dream Of Horses
The Wrong Girl
Women's Realm
Legal Man
*なお、写真は15日のものを使っています。
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report by nob and photos by mari
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nob's works
2001
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