Bell & Sebastian @ 赤坂ブリッツ(14th Nov. '01)
ベルセバって誰? (レポートではありません。個人的感想文です)











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ベース担当"ベル君"とコントラバス担当"セバスチャンさん"の夫婦重低音デュオ! って、ベタベタな嘘はベタ&ベタすちゃん。
で、いったい誰なん? ベル&セバスチャン? ベルセバ、ベルセバと皆は呼ぶ?もともと、俺は海外バンドの名前を省略するのが嫌いや。"レッチリ"? "マイブラ"? "スマパン"? "キムタク"? なんやねん、そりゃあ?! 新種のVirusの名前か?!
雑談.1
僕の中で「ジミヘン」だけは市民権を得てるんで許すとしよう。これは「お〜い! ジミヘ〜ン!」っと呼べば本人も「へ〜い! ジョ〜〜!」っと言って振り向くはずだ。
雑談2
雑談ついでに"クリムゾン"、"ツェッペリン"っと一単語を無くして呼ぶのも日本だけらしい。あ〜ぁ。本人達がせっかく考えに考えたバンド名なんやから、略したら失礼やろ!? バンド名考えるだけでメンバー同士喧嘩して結成の前に解散してるバンドだってあるかもしらんし、ってくらいバンド名付けるんは大変なことやろうし。それも遠く離れた外国で勝手に名前変えられてると知るとバンドの本人達も複雑な気分やろうに...
さて、ベル&セバスチャンとは...誰でしょう? 知りません。どの人が"ベル君"で、どの人が"セバスチャンちゃん"?
ベル&セバスチャン初来日公演、東京初日11月14日の赤坂Blitzでのライブ。会場に入ってまだ空っぽのステージを見てる段階でも今日の主役の正体はわからない。唯一の事前準備は友人から2〜3日前に借りた「黄色い写真のCD」1枚... タイトルなんて覚えちゃいない。確かそのCDにメンバーらしき人達が写った写真があった。「これってメンバー?!」 年代不明な衣装を着た男女7〜8人の人達とゴリラが一頭写ってる。こいつら何者や? 歳いくつや? で、ゴリラ? まったく意味不明/年代不明な写真。それにCDの音を聴くうえでの感想は「この音出すのに、なぜこんなにメンバーの数が必要やねん?」ってこと。この単調な音やったら、大道芸人でいるやないですか? 一人で同時にいろんな楽器演奏する(足踏みして背中に背負ったタイコ叩いて、ギターを弾いて、ハーモニカを吹く)やつ。多分そんな人が2人くらいいたら出来そうな音。それなのにこの人数は必要か?!
まぁまぁ、写真で見る限り、かなり"歳を食った風"な人達なので「年期の入ってる分、良いツボをついてくれそうだな」というだけの期待にまかせて会場へ。ということで、「なんでこんなにメンバー数が必要なのか?」これだけを確かめる為にライブに行ったといっても... 過言かな? でも、まぁそんな具合で大きな期待はなかったわけです。会場はSoldOutの満員状態。Blitz満員のライブなんて久しぶりやなぁ。それも未知のバンドがこんなに人気があるとなるとよけい不思議に感じる。
¥7時15分頃、客電が落ち、とうとう未知バンドとの遭遇。大きな期待は持っていなかったとは言うものの、そんな小さい期待でさえ、メンバーがステージに上がって来た時にまず一発目の裏切りが... ステージに登場してきたのはチャラチャラしたお嬢チャン&兄ちゃん達。はっきり言ってどこにでもいそうな普通の人達。もっとはっきり言えば、俺の最も苦手なタイプ。特にフロントの男二人が気に入らない。男なら男らしくせえ! それに、そんな2人に心ときめかしたように見惚れるファンも気色が悪い。もしかしてメンバーの顔写真が印刷されたウチワでも持ってるんちゃうか?!
「えっ?! あれがメンバーなん?! なんやねん! 若造やん! それも俺の苦手なイギリス風気弱系の兄ちゃんたちや! もっと年期の入ったオヤジどもやと思ってたのにぃ。こんなチャラチャラした若造達に何が出来るっちゅうねん?! クソっ! 期待した俺がアホやった...」っと既に期待外れと決めつけた。
1曲目が始まった。笑った。バイオリンなどを持ったまま何も演奏せずに立ったままのメンバーが4〜5人いる。それに音量が小さい。「なんやこりゃ? 練習風景観に来たんとちゃうで!」テンポが遅い。メンバーの動きがダルそう。この調子で2時間演奏したとしてメンバー全員の消費カロリーを合計しても、Iggy Pop1人が1曲に消費するカロリー数に満たないだろうっというくらいのリラックス。あっという間に2曲目に。
やっと後方のメンバーが動いた。そしてフロントの男も踊り出した。それも男らしくないフニャフニャした踊り方。Iggyの5秒にも及ばない。あ〜気色が悪い。また笑いそうになった... いや、正確に言えば"笑おう"と思ったはず、だが"驚いた"。なぜなら"気持ち良い"から... えっ? 何か期待もしていなかった快感が... いろんな音が聞こえてくる。良い具合に緊張感のまったくない音。"聞こえて来る音に身を任せる"ってこのことを言うんかなぁ? それでいて音の一つ一つをジックリ聴くもんやから集中力はすごい。しまいにはいろんな音が気になって、どの音に集中していいのか困ってしまう。頭が混乱してきそうでもあるが、その反面リラックスしたままでもある。感情のバランスが無くなってきた。音が小さいと思っていたが、丁度良いのかも。ただいつも観ている他のライブがうるさすぎるのか...?
普段自分の耳に快適な音量っていったいどれくらいの音量なんやろう? これか? あれか? 聴覚のバランスもおかしくなってきた。リズムのスピードも同じように、速くもなく、遅くもなく... そんなふうにボォーっと聴いていると、いろんな種類の音がジワジワと襲ってくる(勝手に耳に入り込んでくる)。その中でも特にギターの地味で微妙に使われるエフェクト、微妙過ぎ!もっとはっきり使え! 微妙さが気持ち良すぎじゃ!
普段余りしない行動なんやけど、音を聴く為に目を閉じることにした。眠ってはいなかったはずなのに、今思い出そうとしてもその間何を考えていたのか思い出せない。勝手に耳に入ってくる音を自然に任せて聴いていただけだったと思う。何分の間、何曲の間、目を閉じていたのかも覚えていない。フッと目を開けると、ステージ上の人数が減っている。他のメンバーはというと、アグラをかいてギターを弾いたり、また他のメンバーはリズムに乗って動くわけでもなく、ステージ後方の暗闇に溶け込んでるかのようにただ単に座り込んでタバコを吸ってるだけのメンバーも。
演奏は時間に任せて自然に進んで行く。なんやろうこの感じ? なんとも心地良い時間の経過。押し進められる時間ではなく、自然と風に吹かれるかのように進んで行く時間。大袈裟に言ってるわけではなく、絶対あの時間あの会場内だけは、時間の経過が外の世界より3倍遅く進んでいたかのよう。"かのよう"ではなく絶対遅くなっていた"はず"。会場の外の世界では3秒進んでいる間、Blitzの中だけは1秒しか進んでいなかったはず。
次第に体は音だけでなく空間に身を任せるようになってきた。ここでキーワードが一つ思いつく。"バランス"ということ。バンドが奏でるその空間全てにおいて"バランス"が絶妙だ。音は古いんだか、新しいんだか...? そもそも音量は充分なのか、小さいのか...? リズムも速いのか、遅いのか...? アメリカっぽいのか、イギリスっぽいのか...? 60年代っぽいのか、80年代っぽいのか、未来なのか、過去なのか...? そもそも、バンドメンバー自身は、真面目にやっているのか、冗談でやっているのか...? メンバーのしぐさにしろ、ハプニングにしろ、どこまでが演出で、どこまでがアドリブなのか? 全てアドリブといっても素晴らしい! 全て狙った打ち合わせどおりの演出と考えても素晴らしい! 全てにおいて境界線が曖昧で、またその曖昧さが怪しくて、不思議で、観客から見れば楽しいんだが、逆にバンド側からは遊ばれている/だまされているような...
もうここまで来ると「まるで、〜〜〜(他のバンド)風な音」や「〜〜〜(昔のバンド)の21世紀版だ」などと他のバンドに似比べての説明なんて無意味なことに思えてくる。今ここにある音を聴いてるだけで幸せ。クソッ! 言ってしまった『幸せ』って言葉。悔しいなぁ。あんなチャラチャラした若造達にこんな幸福感もらったなんて。
でも、それは本当で、あの空間を一言で表現するとなると『幸せ』という言葉以外思いつかない。もし本当に『天国』があって、それが今のような音と時間経過のスピードという快適な空間があるんなら、俺は今すぐにでも天国に行きたい。
余談になるが、今日のライブは完売と聞いていたとおり、確かに人がいっぱい。そこでSmashさんに質問「あれ、収容可能人数以上に客入れてたでしょ?」って聞きたくなるほど、バレバレにいっぱいすぎる観客の数。しかし! あんなに快適な空気で涼しく過ごしやすい満員Blitzは初めて見た。本当に快適な空間だった。僕が2Fにいたからという理由ではない。実際演奏途中で僕は2Fでゆったりと観るのも良いが、ステージを見下ろす感覚に不自然を感じ、そしてステージと同じ高さの目線で観たいと思い1Fに下りたのだが、その快適さは変わらなかった。その"同じ視線"というのも良い気持ちで実際このバンドと観客の距離感のなさ(距離感というより"友達がちょっと大きいステージで演奏してます"みたいな雰囲気)はここ数年で観た他のライブの中でもまれに見るものだった。
そして最後も素晴らしい光景を見た。ライブが終わり、客席も明るくなり、SEの音楽も流れ始めた。しかしアンコールを求める拍手は続く。本当に続いた。多分10分くらいは続いたんではないだろうか。本当に皆もっと聴きたかったんだろう。それとも会場の外の"日常"に戻りたくなかったんだろう。
ほんと、数日前までほとんど知らないバンドだったのに(いまだによく知らない)、これはもう明日の公演も観たくなった。(天国に行きたい。)このレポート書くの遅れてでもいいから会場に向かおうと思っているほど。次は是非、野外で寝転んだまま5時間くらいかけて観たいものだ。それがだめなら、50人くらいでいっぱいになる小さなコジャレタBarで30分ほどの演奏時間で観たい。次もまた観たい。でもそれまでバンドの経歴やらメンバーなんて調べなくてもいい。前述で「どれか昔のバンドと比べるのはナンセンスだ」と自分で言っておきながら、これを言うのは矛盾するかもしれないが、ベル&セバスチャンのユルユル感覚は強いて言えば"Velvet Underground"を思い出す。きっとこのバンド-ベル&セバスチャンもVelvetsのようにビッグな伝説バンドになるだろう、それも解散してから20年後くらいに... Velvet Undergroudが結局"最も有名な{元無名バンド}"だったように... 本人達もそれでいいんだと思いながら今を楽しんでいるだけなのかもしれない。
ライブの途中から時間のことを忘れたい気分になって、その日は家に着くまであえて時計を見ないことにして(駅の時計も見ないように目をそらした)家に帰った。会場から4〜50分で帰れるはずの家に着いた時にやっと時計を見ると、まだ10時だった。7時15分頃から始まったライブはまるで3時間くらいあったように思えたのに、計算が合わない...時間の感覚が狂ったまま眠りについた。
次の朝、起きて気がついた。「あっ、メンバーの人数、数えるの忘れてた! あぁ〜! それにいったい、どの人が"ベル君"で、どの人が"セバスチャンちゃん"やったんやろう?」
まっそんな事どうでもええわ。メンバーの名前なんて別に知らなくてもいい。レポート最後に恒例のセットリストも今回は記載しません。ライブ後ボォーっとしてて、レポート用にセットリストをもらってくるのを忘れたってこともありますが、このライブ全体の流れが一つの構成だと考えれば、まったく曲名も曲数もメンバー人数も担当楽器も、気にするのが無意味なことに思えたから。
同様に、改めて普段CDの音だけ聴いているだけではそのバンドの実際やりたいこと/狙いなどを知るうえであまり意味の無いことに思われた。そもそもCDだと聞き手が勝手にボリュームを変えれるんやから。1曲ごとが作品ではなく、あの音がライブで実際目の前で鳴り響いている数時間が1パックで1作品なんだろう。
※実はこのレポートを書くためにライブが終わってから、改めて感想を"考える"のがバカバカしく感じた。実はライブの真っ最中に考えてたことなんて「無」の状態で音に身を任せてただけであって、「夢」に近かったから。"感想の言葉"なんて、ライブが終わってからなんとか言葉で表現できるようにと無理やりに"考えてる"ことやから。
レポート番外編
『11月14日/ある女の子/カラオケショー@赤坂Blitz公演レポート』
そういえば、ベル&セバスチャンのステージでの"演出"と"ハプニング"のバランスの危うさ/怪しさの良い例に一つ面白いことがライブ中に起こった。フロントのメンバーの一人がMCとして「日本では皆カラオケをする習慣があるらしいね。誰かステージで僕達の曲カラオケで歌いたい人いる?」みたいな事をしゃべった。MCの英語を分かったとしても、そりゃ反応できないわなぁ。沈黙の客席。突然一人の女の子の声である曲名を叫ぶ声が響いた。誰もが「まさか...本当に唄わせるはずはないだろう?!」と思っただろう。それがなんと(一度はバンド側から「あぁ〜、ちょっとその曲はやめておこう。」なんても言われたが)本当にその彼女(2F席にいたのだが)をステージに呼んだのだ。また、2Fから彼女が下りてくる1分弱ほどの間、メンバーも客席も何も無かったかのように無言で待っている。その待っている間の時間の不思議なこと! そのぶん彼女が1Fの扉を大声で叫びながら飛びこんできたときの観客の盛り上がりと拍手での出迎えは素晴らしい光景だった。そして当然かのように演奏がスタートしたのだ。
なんとそのステージに上がったファンの女の子も怯むことなく、今日の主役であるバンドをバックに従わせて踊り始めるだけではなく本当にボーカルをとり始めた。それもちょっとした踊り&中指立てのポーズ付き。(多分曲の詩に合わせてたんだろうと思う。"Business World"にFuckみたいな意味だったと記憶する。)それどころか間奏のパートに入るとドラムの前に置きっぱなしになっていたタンバリンを勝手に持ち出し演奏にまで加わる始末。観客に手拍子を求める振付け(?)のタイミングもメンバーと完璧に同時タイミング。そして最後まで歌いきったのだった。その堂々とした態度は素晴らしい! よく唄いながら感動で泣かなかったねえ?
出来過ぎのハプニング!? 「いや、待てよ...いくらなんでも完璧過ぎるなぁ。俺は騙されないぞ。彼女は仕込まれたメンバーの一員だ、きっと」って思うくらいに完璧なパフォーマンス。俺は彼女にアンコールを望みたかったほど。もし俺が大手レコード会社の大社長だったら、彼女をデビューさせる! もちろんバックミュージシャンはベル&セバスチャンで。彼女のあの堂々とした態度にあの日Blitzにいた人々(男女問わず)は惚れこんだはず。だからこうして彼女だけの単独レポートを書きたいくらい。あのハプニングはもしかするとライブ中の1番の盛り上がりだったのかも。あまりに完璧過ぎで堂々とした彼女のパフォーマンスにバンドメンバー自身が微笑むというより驚きの表情を見せていたほどだった。
あっ、きっとその彼女がセバスチャンやったんかな? それともベルちゃん? きっとそうだ、彼女こそベル&セバスチャンのリーダーだったに違いない!
追記
結局、次の日もライブに行ってしまったとさ。で、ベルセバって誰やったん?
謎の解明
やっぱりゴリラはメンバーだった。
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report by nishoka and photos by mari
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