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---Super Furry Animals---
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会場に着いたのが20:30ころ。もう佳境に入っているころだと思ったら、入り口に前座がくるりとかいてあるではないか! くるりは自分がライヴを観たいバンドのひとつなんだけど、その機会を逃しつづけているので前座も観たかったが、時間的にはスーパーファリー・アニマルズは始まったばかりである。このライヴ写真を撮ってくれた堀本さんが、今5曲目くらいだよというので、すぐフロアの中に入る。
![]() *(くるりは現在レコーディング中とのこと。ということで、『都内のライブ年内見納めか?!』といわれたのがこのライヴ)
で、皆さん寓話って知ってますか? 「イソップ物語」みたいに、アリとキリギリスの話をしているのだけど、実は「真面目にコツコツ働きなさい」という教訓を込められている、というような話である。この日のスーパー・ファリー・アニマルズのライヴを観て、寓話的な世界だな、と思った。
音楽的には小谷さんが書いているように「そのまま素直にやってればビーチ・ボーイズやXTC、あるいはティーンエイジ・ファンクラブに負けないハーモニーとメロディを持つ『極上』ポップ。なのにどこかで変な音を入れずにはおられない」もので、美しいアコースティックの曲や古典的と言えるくらいのロックンロール(でも、変な音入り)やサラウンドで会場の周りを音が駆け巡り、重低音が会場を揺さぶるテクノまでバラエティ豊かなんである。
そのさまざまな音にリンクしてステージの上にあった2つのスクリーンにはさまざまな映像が映し出された。これがまたバラエティ豊かでオリジナルらしき実写からニュースやドキュメンタリー映像、オリジナルのアニメやCGなど、さまざまなものが出てくる。ドキュメンタリー映像は核実験のものやレーニンやトロツキーの演説{そういう映像って本当に残っているのだろうか? もしかしたらそっくりサンに演じてもらっているのだろうか?)などがあったりする。一番自分がビックリしたのは、今まで世界各地で何人の人が大量虐殺に遭ったかという数字を延々と表示した後で、大きな文字で「GOD IS LOVE」が浮かび上がり、このバンドはクリスチャンのバンドだったっけかな? と思った次の瞬間、英語で「わたしが来たのは地上に平和をもたらすためだ、と思ってはならない。平和ではなく、剣をもたらすために来たのだ」(マタイによる福音書10章34節)というイエス・キリストの言葉が映し出された。クリスチャンは意図的に忘れていることだけども、この言葉は確かに聖書の言葉なのである。つまり、スーパー・ファリー・アニマルズからキリスト教への強烈な皮肉なのである。
聖書というのは厄介な書物で本の中は広くて、それだけでひとつの世界を作っているのだけど、細かいところを観ると実にいい加減でお互い矛盾してるところが数限りなくある。だからいろんな勝手な解釈をして、マザー・テレサみたいに貧しい人のために一生を捧げるような人も出てくるし、マーティン・ルーサー・キングJrのようにそこから非暴力を導き出す人もいるし、十字軍や宗教戦争や最近の例の事件に至るまでキリストの名を語りながら平気で人を殺す人も出てくる。そんでもって中世から現在まで学者がそんな本からガチガチの体系をつくりあげてしまったので「おれはアンチクライストだぁぁぁぁ!」と叫んでも、相手はなかなか動じない。
スーパー・ファリー・アニマルズは、ガチガチに作り上げたものを壊そうとしているのではないだろうか。それも正面からぶつからずに、ちょっとずつ、いろんな所に穴を開けて崩していく。いろんなサウンドスタイルに手を出すのも、「どこかで変な音を入れずにはおられない」のも、いろんなところに穴を開けたいからではないだろうか。だけど、それがみんなに届くにはやっぱり歌が大切だということも彼らは知っている。その「変な音」と「歌」が混ざったところにスーパー・ファリー・アニマルズの世界があって、その世界は多くのことを訴えかける。彼らはとても真摯なバンドだと思う。 Reported by Nobuyuki Ikeda.
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