ALEC EMPIRE at Fuji Rock Festival '01(2001年7月28/29日)
 

 

 

 

 

 

 

 

 

Alec Empire

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アレック、かっけええええ!!!!

 

 ロック界に限らずかもしれないが、「王子」と呼ばれる人は沢山いるものである。時には「ええっ、この人のこと王子ってよんじゃっていいの??」という人や今は面影もない(悲)かつて「王子」と呼ばれた人...あげたらキリがない。

 同じ王子でも「男気!」な、ATARIの中心人物でもあるALEC EMPIRE王子。この人もな〜〜んだか知らないけど「王子」「皇子」「皇帝」「総帥」「師匠」とか訳のわからん枕詞が必ずついている人である。まぁ名前が「エンパイア」だからね、「エンパイア」。う〜〜ん凄い名前。

 フジで初のソロお披露目ステージはNINのチャーリー・クロウサー、ATRでのノイズの片腕ニック・エンドー、メルツバウの秋田昌美を従えて、である。サポート陣のなんと贅沢なこと。これだけでもとっても美味しいメンツであるが、そんなモンがなくてもフジ出演のニュースだけで涙が出る程嬉しかった人は沢山いただろう。

 ATRが事実上の活動休止状態。「絶好調だ! 4月には完成する!」と豪語していたにもかかわらず結局10月までリリースが延びたソロアルバム...と、皆おあずけを食わされたままだから。しかし、ここで一抹の不安。噂によると4月の時点で4〜5曲程度しか完成していなかったらしい...フジには間に合うのだろうか...。まぁ、この人は今までATRのサイドワーク(?)的なソロアルバムをいくつかリリースしているので大丈夫だと思うけど。

 フジ2日目のホワイトステージ、モグワイの美しいノイズで夕暮れからとっぷりと日が暮れた頃、会場はかなり混み合った状態に。この中の半分くらいはトリのニューオーダー目当ての人もいると思われる。その人達にアレックの音楽ってどんな風にうつるんだろう.. .などと思っているとスタッフにまぎれて自ら機材のチェックをするチャーリーを発見。なんて働き者なんだ...さすがトレント・レズナーの右腕。

 さて、ほぼ時間どおりにアレック、颯爽と登場。黒の革パンに黒のランニング、いつもの黒尽くめ。そして、目に気合いが入ってます、兄貴。目、かなりイってます。いきなり炸裂するズンドコビートにあわせてアレック絶叫!!! アンタ、そんなに叫んだら喉から出血しますわよ、と御忠告さしあげたくなるシャウト炸裂!! しょっぱなから場内ヒートアップ! そこにステージ前方に仕掛けられた花火がドンッ! 更に盛り上がるオーディエンス。 いや〜〜アレック師匠健在な姿をまざまざと見せつけてくれます。相変わらずリズムはズドドドドド、ツインドラムなのに二人とも同じリズム叩いてるよう〜。しかし、そのズドドドドドな中にATRよりも、よりメロディアスな曲が目立つ。ATRは先にコンセプト...というかあるイデオロギーのもとに成り立っているバンドだから、アレックの個人的な感情や趣向といったものはかなり抑えられていたのだろう。こういってはヘンだが、しがらみのないステージでアレックは楽しそうに絶叫していたように見えた。

 さて、アレックの出演は当初この日だけだったが、最後にステージから「明日、ゼイゼイ、グリーンステージで、ゼイゼイ、3時半からやるから!ゼイゼイ」とアレックが言った途端どよめきがおこる。やた〜〜〜!!!! もう1回見れる!!嬉しい!!! なんだかとっても嬉しい!! この日のステージ、とりたてて何かビジュアルにうったえる仕掛けがあったわけでも、音楽的に何か目新しいものを見せてくれたわけではない。曲調がちょっとメロディアス、リズミックになったものの相変わらずのズンドコ、ズドドドドビートに絶叫。かえってATRよりも衝撃度としては低いようにさえ思わせる。

 しかしアレックの存在にはそんなことはどうでもイイと思わせるパワーが溢れている。ズドドドドドリズムにあわせて繰り広げられる彼の絶叫はノイズと融合すると、まるで機材まで一緒に悲鳴をあげているように聞こえる。機械に有機的な何かがあるように思わせる、彼の声にはそんな妙な生々しさがある。この声+強い意志のもとに放たれるメッセージを乗せた曲が私達の目を釘付けにさせ、気持ちを昂揚させるのだ。

 明日もう一度それを体験できるなんて、ああ、贅沢。

 翌最終日のグリーンステージ。オーディエンスの数はちょっと寂しいものの、皇子の出番をまだかと待つ人達でステージ前モッシュピットは徐々にうめ尽くされていく。昨日と同じように、機材のチェックにチャーリが自らステージでお仕事。エエ人や。今日は頑張って最前列に陣取る。うーん、でもグリーンは大きくてステージが遠いなあ... と少し体力も弱まっているところへアレック登場!飛び起きる。昨日の革パンは一緒だけれども、ランニングは少し形のかわったものへ。といっても黒づくめなのは変わり無し。そして絶叫!! ノイズ!! リズムがズドドドドドドドドドドドド!! 次々と送り込まれてくるダイヴァーの嵐。皆タテノリ、ジャンプマラソン状態。

 オーディエンスの数は少なかったけれども、この日のライブは白眉であった。もう、もう、感想といえば「アレックかっけぇええええええ!!!! の一言。セットリストは前日とほぼ同じと思えるが、中でも秀逸だったのが、のびのびになっているアルバムに先駆けて発売されたEPの「New World Order」。とてもキャッチーでリズムとシャウトが耳に残る曲。ニュワードダー♪のフレーズがずっと残ってしまった人も多かっただろう。私はその後、家路につくまでずっと歌っていましたです。それにこの日のステージングが素晴らしかったのはアレックの曲の特徴としてアグレッシブなズンドコビートと絶叫から、ストンと無音のノイズレスな状態におとされる部分の落差が際立っていたから。それが純粋に音として、とても気持ちよかったのは私だけではないだろう。

 曲にあわせて腕をぶるんぶるん振るアレック。ふと気付くと... ワキがツルツル...... なんか綺麗... もしかしてムダ毛処理してるの? 皇子。なんで? でも、不思議じゃないかも。だってアレックって凄くナルっぽい。動きはクネクネし てるし。一緒に絶叫してた友達は一言「ガクトっぽい」ええっ?? それに、髪の乱れを気にしてなでつけたりして...。この人って、過激なメッセージやアグレッシブな曲にパーソナリティがかき消されてよく見えない、もしくは男気の塊の様な表現をされていることが多々ある。それって必ずしもハズレではないかもしれないけど、もっと繊細な人なのかもしれないな。自分が繊細だからこそ世の中の生きにくい部分に敏感に反応するのかもしれない... と拳を振りながら頭の片隅でそんなことを考えているとステージから「イヨッ!」とアレック師匠、飛び下りてくるではないですか。

 その途端、物凄い人がどっと後ろから押し寄せてくる。横から沢山の手がにゅっと延びてきて、もみくちゃ。呼吸困難。でも負けじと「ア゛レックゥ〜〜!!」と絶叫しながら手をのばす。一瞬セキュリティにさえぎられる、なんだよ、しかしそのセキュリティを押しとどめてマ〜イハンドを握るアレック!! ギャーーー!! 皇帝、私の手を掴んだまま柵によじのぼるではないですか!! その途端、更に後ろから物凄い勢いで押されてもみくちゃ状態。「この手は離さん!!」と頑張るつもりが、柵に登ろうとするアレックに顔面をひざ蹴りされてのけぞる私......ひどいわ...。それからは阿鼻叫喚、押し寄せる人の渦で木の葉の様に舞うワタシ... あまりの熱狂に自分の身体を支えることができずにアレックの右足に抱き着くような形でしがみつく。

 そんな極限状態なのに、人間とはヘンなことを考えてるもので
「このしがみつきかたって『貫一お宮、熱海の海岸』みたいでイヤだなあ」とか
「あ、この革パン、新しい革のにおいがする」とか
「足摺岬ってのもあったな」とか.........。
必死なハズなのに、なんで頭の中はくだらない事でいっぱいになってしまうの? ふと横を見ると友達も同じカオス状態の中アレックのもう片方の足にしがみついているではないか。しかも、その表情は喜びでキラキラ・ニヤニヤ!かなりの阿呆面...と いうか恍惚の表情をあられもなく晒している。もしかしたら私も頭でアホなこと考えながらニヤニヤしてたのかもしれない。いや、きっとしていたと思われる。セキュリティに不審な目で見られたし...。

 我らが総帥がステージから降りている間、チャーリーとエンドーちゃんはノイズの砂嵐をまきおこしている。頭の中が気持ちよく白くなっていく。アレックが柵を降りる、皆がまた必死で手をのばす、アレックは力強く握りかえしてくる。私も強く握りかえす。ついでにハートも鷲掴みされ(はぁと)。ライブ中にアーティストがステージから降りてくると、皆こうやって詰めかけてくるもんだけど、この日の皆の「熱」はハンパじゃなかった。それは、ただ「アーティストに触りたい」というよりもパワーを共有したい、そんな熱に感じた。私達がそう思うようにアレックもそう思っているのかもしれない。
「皆で仲良く手をつないで繋がろう」
なんて気持ち悪いこと言うつもりはないし、繋がりというよりも「エネルギーの交換」といったほうがしっくりくる。そんな風に思わされる程、この日のステージはアーティスト〜オーディエンス間の目に見えない壁のようなものが取り払われた気がした。

 再びステージで絶叫し拳をふりあげ、足をばたつかせ、ピョンピョン飛び跳ねるアレック、何やらさっきよりもアグレッシブになっているようだ。このバカでかい音、アグレッシブな生声、やはりこの人のステージには特別なオーラがある。ああ、もう、とにかくはやくアルバム完成させてまた目の前でパワー炸裂してほしいものだ。

 終了後、友達と「アレック、かっけええええ!!!!」を100連発しながら、ふと自分のTシャツを見ると胸のあたりに皇子の靴跡がくっきりと。ひ、ひどいわ......あ、でも、な、なんか嬉しいわ......。

Reported by Mimi.


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Nishioka
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