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新宿リキッドルームの階段をひとつひとつ登っていく。7階まで上がるのは結構きつい。息も絶え絶えにロビーに着くと凄い混雑である。外国人や女の人も多い。友人に会い、ロビーで話しているうちにフロアの方から歓声が上がったので急いで会場の中へ行く。このツアーではライヴが始まる前にEvil VinceというDJがサポートで回していて、自分が中に入ったときはちょうどDJが終わって、客席をカメラで撮りながらベンたちが登場したところだった。DJがどういう曲を回していたのか聴いておけばよかった。 ベンはワイゼンボーンをひざの上に乗せてスライダーバーを使って弾きまくる。他にもエレクトリック・ギターやアコースティックギターをとっかえひっかえして多彩に攻める。そして、ギターに劣らず、ベンの声も良い。彼の歌を聴いているとソウルを手で触れることのできる実感あるモノとして、聴き手に届けられているのだ。バックの演奏陣も素晴らしく、ベースはファンキーで手数の多いベースラインで低音を支え、ドラムは迫力あり、パーカッションはいろんな打楽器を繰り出して楽しませる。特に四角形の原色に彩られた箱を叩くプレイは金属的な音がして興味深い。 フロアを埋めたお客さんはイントロで歓声が上がり、ソロで拍手というように反応もよく素晴らしい盛り上がりだった。ベンたちも頭から「Glory & Consequence」、ジミ・ヘンドリックスのカヴァー「Manic Depression」でたたみ掛け、中盤にマーヴィン・ゲイの「Sexual Healing」、MCで「カーティス・メイフィールドに捧げる」と言ってから演奏された「The Woman in You」、「Remember」からメドレーで演奏されたスティーヴィー・ワンダーの「Superstition」とブラック・ミュージックの先達への敬意も忘れないセットであった。 全体的な印象は鋭いリフと迫力のあるプレイ、ギターのフレットにスライダーバー叩きつける早弾きソロを思わせるプレイは、ほとんどハードロックでないかと思ってしまう。ベン・ハーパーをハードロックというのも違和感ある人がいるかもしれないけど、いわゆる様式美を大切にする「ハードロック」でなく、音楽への衝動を抱えた人が渾身のプレイをするとどうしても鋭さと迫力を生んでしまうという意味でのハードロックである。 アンコールの一回目はベンのみがアコースティックギターを抱えながら登場する。これが本編と打って変わって、ギター1本でじっくりと本当に大切なものを扱うように歌う。3曲歌った後、再びアンコールが沸き起こる。ベンはダブルネックギターを持ち、バックバンドも登場しロックンロールぽいナンバー。そしてラストはワイゼンボーンに変え、「Faded」(多分。セットリストにも載ってないんでうろ覚えです)から、ついに来た!「Whole Lotta Love」!このレッド・ツェッペリンのカヴァーで、自分の漠然とした印象の「ハードロックだなあ」が確信に変わった。 オフィシャルサイトのセットリストを見ると「Kashmir」「Nobody's Fault But Mine」など結構レッド・ツェッペリンの曲をカヴァーしているのだ。なんか嬉しくなってしまうな。フロアも大盛り上がりだった。ロックが細かくジャンル分けされる前の状況を、今、ここに見せてやろうとする姿勢が圧倒的なソウルを感じさせるライヴであった。
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Glory & Consequence アンコールは記載なし。 Reported by Nobuyuki Ikeda. |